心音の余白

美澄雪音

第1篇 空虚な約束

遥かに眺むる人の営み

笑声、さざ波のごとく耳を過ぎ

我は静かにその外を歩む

ひとりを良しとしながら


ひとり、心地よきかな

風の音、友とすれば

世の喧騒など及ぶことなし

ただ静寂に身を委ねむ


されど、ある日

人の温もり胸に触れしとき

孤独の中に在りし我は

知らぬ涙を覚えぬ


「友」と思ひし人の影

近くにあれど、手は届かず

孤独の色は濃くなりて

初めて胸に痛みを覚ゆ


人の暖かさ、甘き香りは

心に影を落としけり

その影に揺らぐは我が心

孤独と交わるを恐るるように


ただひととき、誰かの特別に

なりたき思ひ胸に秘め

孤独の安らぎを求むれど

もはや昔には帰らざる


心の翳り、夜風に消ゆるとも

触るるたび形を変へ

明日の影は今より遠く

また新たな孤独を描く

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