第2話

 黒を基調とした広い店だった。薄暗い中に、高級そうなソファがいくつも置いてあって・・・何人もの女が座っているのが分かった。天井には今どき珍しいミラーボールがあって、回転しながら七色の光を店内に投げかけていた。


 店の奥から女がやってきて、私をソファの一つに座らせた。女も私の横に座る。女は眼だけを覆う仮面をつけていた。ミラーボールの七色の光が仮面の上で踊っている。私は仮面を見た。まるで人の顔のようだ。私は女に聞いた。


 「それは何の仮面?」


 女の眼が笑った。


 「あら? 聞かなかったの? 今日は魔女の日。だから、生贄の顔をはぎ取って、仮面にするのよ」


 悪い冗談だ。私は話題を変えた。


 「この店は・・・黒薔薇って言うのかい?」


 女が眼の前のグラスにウイスキーを注ぎながら答えた。


 「そう、黒薔薇。黒い薔薇はね、魔女の象徴なの。この店は、年に一回、今日だけ、こうして開けるのよ。魔女の集会のためにね」


 女からウイスキーの水割りを受け取りながら、私は店内を眺めた。


 「魔女ねぇ・・・それで、みんな魔女の格好をしてるのか・・・」


 ミラーボールの七色の光の点滅の中に・・・黒いローブに身を包んだり・・・頭に尖った帽子をかぶったり・・・髑髏が付いた長い杖やホウキを持ったり・・・様々な魔女の格好をした女たちが妖しくうごめいていた。

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