洗濯ばさみ
鮫鶲(サメビタキ)
第1話
その商人は宇宙の星々を巡って、気に入った品物を買取り、商売をすることを生業としていました。そして、太陽系を巡ったその時に見つけた品物のひとつが、洗濯ばさみなのでした。商人は洗濯ばさみを別の銀河系で売りに出し、いつしか大変評判の良いベストセラーの商品となったのです。
そんな話を聞いたライバルの商人が金儲けの為、同じように洗濯ばさみを売り始めたのです。同じ商品、ちょびっとだけ安い値段、しかし大量に。少しだけ違うのは、洗濯ばさみを売っていない銀河系の星々をリサーチしたことです。『洗濯ばさみが売っていない場所では必ず売れる』ライバルはそう考え、目論見の通り大金を手に入れたのでした。
ある日のこと、過去に洗濯ばさみを売ったお客さんから苦情の電話が入ってきたのです。
「あんたの売ってくれた商品な。使ったそばから消えてなくなってしまうんじゃ」
一体どういう事なのだろう。疑問に思いつつ、ライバルは急いでそのお客さんの元に向かうのでした。
その星は緑色の毒々しい色をしており、そこに暮らす人々はずんぐりむっくりしたカエルのようにでこぼこした皮膚を持つ地球人のような生き物なのでした。
「ほらね。使っても消えないでしょう? 」
「そら、今は晴れとるからな。じきに風と共に雨が来る。それまで待っとけ」
ライバルは問題がないことを説明をしましたが、お客さんは聞く耳を持ってくれません。しょうがないので、言う通りに雨が来るのを待つことにしたのです。
その日の夕刻、待ちに待った雨がやってきました。様子を見守っていたライバルはびっくり仰天。確かに洗濯ばさみが消えていたのです。
ライバルは内心、『しまったぞ……』と思いました。それもそのはず、この星の雨が持つ特性は特別強力な酸なのでした。吹き荒れた酸の嵐。プラスチックで出来た洗濯ばさみは、全て溶けてしまったのです。
洗濯ばさみ 鮫鶲(サメビタキ) @koya023
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます