ティエビエン王国白の塔 ヘマの手記
中川光葉
前編
はじめに
私がこんな
それがこんなものを書いているのは、人生を変えるような出会いがあったからに他ならない。
彼を出迎える前に、己が半生を振り返って、己とは何者かと胸を張って答えられるようにしておきたい。と、いうのもあるけれど、彼が来るまで彼と私のことを想う以外は手につきそうにないから、己の意思を固めておきたいと思ったのが正直なところ。
それでこんなものを引っ張り出してきた。おばあ様が私にくれた贈り物の中で、一番役に立たないと思っていたもの。上等な革で装丁された手帳で、中は真っ白。何も書かれていない。お前が考えたことを書きなさい、と言われたけれど、当時の私には己が考えることよりおばあ様の言葉や書物の内容の方がずっと大事だった。それで机の引き出しの奥にしまい込んであったのだ。こんな時になって役に立つなんて、何だか不思議だわ。
何を書いていこうか。私の生い立ち、それから、彼とのこと。そんなところかしら。思いついたら足していけばいい。どうせ誰かに見せる予定もないのだしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます