ひつじとライオン2~薔薇とライオン~《完結💗》

夢月みつき

本文「薔薇ってなに贈ればいんだよ?」

 登場人物紹介

 ライ

 ライオンの獣人男性、テュールの彼氏。

 ライ(AIイラスト)

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093092178421024


 テュール

 羊の獣人女性、ライの彼女。

 テュール(AIイラスト)

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093092178337745


 前作も良かったら、よろしくお願いします。

 お題「つま先」参加作品

「ひつじとライオン」

 https://kakuyomu.jp/works/16818093091609302593


 ♥♡∴─────────────────────────∴♥♡



「は~、青薔薇の貴公子様って素敵ね……」

 夜にテレビドラマを観ながら、画面に映る黒豹獣人俳優の配役、青薔薇の貴公子を見つめ、羊獣人のテュールは溜め息を漏らし、頬を染めて唐突にそうつぶやいた。


「ふ~ん、俺がいるのにそんなこと言うんだ?」


 ライオン獣人のライは一瞬、むすっとしたが「薔薇か……」と一言つぶやいて、その日は就寝に着いた。





 🐑

 🦁





 次の日の、仕事帰りにライはアーケード街のフラワーショップに立ち寄ってみた。

「何かお探しですか?」


 チワワ犬の獣人の女性店員がにこやかに声を掛ける。内心は動物の本能でライオン獣人のライが怖いはずだが、そこは店員と客と言うプロ意識で何とかカバーしているのだろう。


「うん、ここは薔薇ってどのくらい種類があるの?」

 

 ライは右手をあごに当てながら店員に聞く。

 店員は店の中の花を確認すると「そうですねぇ、こちらの薔薇は二種類ほどです」と赤い薔薇とピンク色の薔薇を見せてくれた。


「ふ~ん、で、青い薔薇って知ってる?」


「青い薔薇、ですか? 青い薔薇はとても栽培が難しく、幻とも言われています。完全に青色の薔薇はありませんね」


「そうなんだ? ありがとう。じゃ、この赤い薔薇の方をカスミソウとラッピングしてくれるかな」


「ありがとうございます」






 🦁






 ライは店員から、薔薇を購入して店を出てしばらくアーケード街を歩いた。

 ふと、見ると青果店の隣に店を開いている露店のアクセサリーショップを見つけた。


 銀細工やべっ甲細工等のブローチやネックレス、様々な種類のアクセサリーが並んでいる。

 ライがなんとなく、アクセサリーを見ているとチーターの獣人の店主がライに気が付いて声を掛けた。


「どなたかに贈り物ですか?」


「ああ、アクセサリー、色々あるみたいだけど。青い薔薇のってある?」


「青薔薇ですか、なるほど、そうですね」

 

 店主が商品を見渡して一つの髪飾りを見せて来た。


「ブルーローズの髪飾り、一点物になります」

 それは精巧に作られた色鮮やかな青い薔薇が付いた銀細工の美しい髪留めだった。

 ライは大層気に入って、思わずうなる。


「……なかなかいいね、これ。いくらなの」


「ありがとうございます。3580クランになります」



 本物の青薔薇は買えなかったが、露店に売っていた一点物のブルーローズの飾りが付いた銀細工の髪留めにしたライ。

 

 他にも見たかったが、テュールに頼まれていた牛乳と食パンをスーパーで買うと、花がしおれないうちに早めに帰ることにした。





 🐑

 🦁






「ただいま」


「おかえり、ライ。それなぁに」

 

 普段は、花なんて殆ど、買って来ないライの持っている赤い薔薇の花束にテュールは、少し驚きながら聞いた。


「お前、今日誕生日だったろう? 薔薇とそれから……こいつをお前に」

 ライは、手提げ鞄から水色のリボンが掛かった白の包装紙でラッピングされている小さな箱を取り出した。


「誕生日、覚えててくれたのね。ありがとう。凄くうれしいっ」

 

 テュールの瞳が涙でうるむ。テュールは薔薇を花瓶に生けて、彼からプレゼントを受け取った。


「開けていい?」


「ああ、どうぞ」


 テュールが包装紙を開いて、箱を開けると銀細工のブルーローズの飾りが付いた銀細工の髪飾りが現れた。


「わ~っ、素敵、すてき! なんて綺麗なの」

 

 彼女は喜んで自分の白い髪の毛に付けて見た。

 鏡で見てから、ライの方に振り返る。


「ね~え、可愛い?」


「ああ、可愛いよ」


「や~ん、嬉し~」





 テュールとライは食事をしてから、リビングでくつろいでいた。


「うふふ、可愛い」


 ブルーローズの髪飾りをライの赤髪に付けて来るテュールに彼は、苦笑いしてポンポンと彼女の頭を軽く叩く。


「なぁ、俺みたいな、肉食男にそういうことして楽しいわけ?」


「やだぁ~、ふざけてるだけじゃない、たまには付けても可愛いと思うよ?」

 


 くすくすと面白そうに笑う可愛いテュールの唇を彼は奪って、鳥のようについばみキスを繰り返す、そしてゆっくりと舌を入れて深く口づける。


「ん、ふ……んっ」

 

 恍惚こうこつの表情で、嬉しそうにそれに応えていた彼女だったが、しばらくすると息苦しくなって来たようで、頬を紅潮させライの服を掴んで引っ張って来た。

 それに気が付いたライは、名残惜しそうに唇を解放した。



「苦しかったよ。ライ」


「ごめん、ついな」と言いながら、彼はにやりと笑う。


「このくらいで怯んでたら、こっから先が出来ないんだけど? 解ってる」


「解ってるわよ、すけべライオンっ」


「いや、まだ理解してないでしょ。この天然純情羊姫さまは」

 


 さらに、テュールを皮肉ひにくってにやにやと笑いながら見ている。


「悔し~! ほっぺつねってやる」

 

 テュールが、頬を膨らませてライの頬をつねろうとすると、ライにつねろうとしている手首を掴まれた。


「なぁ、俺がどれだけ、お前に理性保つのに苦労しているか。一晩、寝ずにその体に解らせてやろうか」


「えっ、それって今よりも私を愛してくれるってこと? きゃ~っ! うれし~い、どうやって解らせてくれるのぉ~?」



 テュールは、瞳をキラキラと輝かせてライに抱き着いて来た。


「おいおい、全然、怖がんねえよ。このお姫様は」


 少し呆れたように苦笑して、左右に首を振るライにテュールは、ライの右手を握って熱っぽく見つめる。


「だって、ライのこと怖くないもん。大好きだから、私はね、ライになら食べられてもいいと思ってる。だから、食べたくなったら私を大切に残さず食べてね」


「――テュール」

 

 ライはテュールに寄り添い、首筋を甘噛みする。


いたっ、痛いよ。ライ」


「お前がそういうことを言うからだ」なぜか、ライは少し怒っているみたいだ。


「なんで? 私、悪いこと言ってないよ」



「俺が食ったら、お前がいなくなるじゃねぇか。馬鹿、そんなの耐えられねえから」


「だって、私を食べたいんじゃないの? 食べなくていいの」


「何度も、同じことを言わせるな」


「俺はお前を愛してる、それは今もこれからも変わらない。だから、俺はお前を喰うことはない。解ったか」



 ライの鋭くて優しい赤の瞳がテュールの瞳をみつめた。

「そっか、ありがとう。大好きよ! ライ」

 

 テュールは、頬を薔薇色に染めてキラキラ輝く笑顔で笑い掛けた。




 次の朝、

「私、青薔薇の貴公子じゃなくて、やっぱりライが好きっ」


「んっ、そうか、そうか! よしよし可愛い奴だ」

 

 テュールとライは、二人で仲良く映画館デートに出かけて行った。


 

 -終わり-




 最後までお読みいただきありがとうございました。

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ひつじとライオン2~薔薇とライオン~《完結💗》 夢月みつき @ca8000k

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