薔薇色のほっぺ

遠山ゆりえ

第1話

句会の仲間数人と、近所の薔薇園に吟行に行った時のことです。


無料開放された薔薇園は期待した以上の薔薇の数で、甘い香りにつつまれていました。


深紅やピンク、黄色やホワイト、2色の斑が入ったものなど珍しい色やかたち、チョコレートやオレンジのような香りがするものなど多彩な薔薇に夢うつつでした。


薔薇のアーチの中を散策していると、向こうから若いお母さんとお父さんと手をつないだ、2歳ぐらいの女の子が歩いて来ました。


その子は目の前の小ぶりな薄ピンクの薔薇を見て「このお花かわいいねぇ」と言い、立ち止まリました。


お父さんとお母さんも立ち止まり「ほんとだ!かわいいねぇ〜」とニコニコしながら眺めています。


女の子のほっぺは、その薔薇と同じような色に染まり、薔薇の妖精のようでした。あなたの方がかわいいよ、と思いました。


普通の、どちらかといえば地味な感じの家族でしたが5月の空の下、そこだけ明るい光が差し込んでいました。


お父さんもお母さんも、仕事や家事で大変な事もあるでしょう。女の子だってワガママを言う時があるでしょう。


でも今日はゆったりとした素敵なパラダイスです。薔薇園でプンプン怒っている人なんていません。


おそらく初めての薔薇園に来た女の子は、今日の幸せな記憶をしっかり覚えていることでしょう。


ここで一句


薔薇園に頬を染めたり聖家族


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

薔薇色のほっぺ 遠山ゆりえ @liliana401

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ