字引神コトバタベル

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

奪われしものたちを、思い出す……

 ヘンテコな神がいた。


 ──コトバタベル。


 その名の通り、言葉を食べてしまう。


 それも、字引じびきの中の言葉を、である。


 そして困ったことに、字引から消えた言葉は……


 概念ごと、この世から消えてしまうのだ。



 📕📗📘



 @巨大書架。


 「あーウマウマ。言葉ウマウマ。今日はどんな言葉を食べちゃおうかなぁ」


 字引神じびきしんコトバタベルは、そう言いながらもすでに、メガネメガネいやそこにあるだろ!ギャグ的に、字引上の【 】すみかっこで囲われた言葉をペリペリと引き剥がしては、ポテチくらいの勢いでむさぼっている。


「んー、ぼくちん、GHQのマックのアーサーとかいうパイプふかした軍人から、普段遣いしない語彙や常用じゃない漢字なら、いくらでも食べていいよ、食べ放題オールユーキャンイートでどうぞって言われてるけど……」


 めっちゃ自習しやすそうな広さの木製テーブルの上。

 〈宗・神・主〉の三字が一つになった、愛と調和と感謝のような超常的パワーを醸し出す漢字が、転がっている。


「けど……この『平和』って言葉とか、『世界』って言葉とか、とーってもウマそうなんだよなぁ……」


 コトバタベル、それはいけない。

 地球が、終わってしまうぞ!


「でもGHQの言うことは絶対かぁ。高級官僚さえも、日米合同委員会では米太平洋艦隊の高級軍人の言いなりだもんなぁ……そういや『鳩ポッポ』とか揶揄やゆされてた本業学者の元総理は、切り込もうとしてたけど、潰されてたよなぁ……あ、『鳩』! これは別に、いいよね? 糞とか、困ってるでしょ? みんな。は……はた…はち…はつ…はて…はと、鳩! いただきまーす!」


 コトバタベルは、ビオフ◯ルミンを飲むくらいの軽い気持ちで、『鳩』の文字を飲み込んでしまった。


 鳩。


 🔥🕊️🔥


 平和の象徴が……


 🔥🍗🔥


 消えた。



 📕📗📘


 

「あーウマウマ。言葉ウマウマ。今日は何を食べようかなぁ」


 今日も字引神コトバタベルは、口の周りをたくさんの部首──「木へん」やら「にんべん」やら「さんずい」──でながら、字引から言葉をがし、らう。


「あ、これ! とってもいい匂いがする! 何だかちょっと大事そうな気がするけど、食べちゃおーっと!」


 コトバタベルの目が捉えているのは……


 人類の叡智、『科学』の文字。

 そうか、コトバタベルよ、それを食べるのだな……


「『科学』がなくなったら、世の中は、宗教やおまじないで溢れちゃう? あ、でも『科学』ってさぁ、特に西洋由来の科学について言うと、ほとんど宗教的ツールだって見方もできるよなぁ……よし、たーべちゃおーっと!」


 字引神は、字引のページをノールックで、『科学』を掌握せんと指を伸ばす。


 が、その時……


 どこからともなく吹いてきた、微々たる隙間風。


 🌪️📖🌪️


 風に、食いしん坊が先行している字引神は、気づかない。


 そして、

 ペラ、ペラリと、勝手に頁がめくられる。

 

 かがく……かさ……かた……かな……かま…かみ、神!


 コトバタベルは……


 『神』をつまんだ。


 そして……


 うっかり、食べてしまった。


 確実に、飲み込んだ!!!


「ん? なんだか、お腹がムズムズするような気g──」



 \ポッ♪/

  と音。



 消えた。


 字引神は消えた。


 そして、一見『無』に見える空間から……


 🌊🌊🌊

 言葉の大波。


 🕊️宗・神・主🕊️

 溢れる言葉たち。



(((((世界は、アルベキスガタへと、戻った)))))



   〈明るい未来へ〉

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