序章:夢の終わり、星の目覚め
木の中から出てきたヤツについて、まず最初に思ったのはすげぇ綺麗な顔のやつってことだ、俺の目は自慢ではないがそれなりに肥えていると思う。
目の前の
でもこいつは違う、正に傾国の美女という奴だろう。ただそれよりも気になるものがある。
なので少女のそれが見やすいように陽の当たる所に運んで行って。
「おい、この服はなんだ?魔法だとしても長い時間木の中に居た奴の服にしてはきれいすぎる。物質化して作り出したんならどれだけ汚れないように防汚魔法をつけても五百年も効果を上書きしてなけりゃ確実に汚れる、だから物質化はしていない。ただそれじゃ今度は着るどころか、維持するのにも魔力がかかりすぎるだろ。どうやってこんなもの作った?」
そう問うと樹木精霊は自慢げに語りだした
「いやー、あなたもご存じの通り、私たち
二度と使えないなんてもったいねぇ...んな画期的な魔法があるなら教えてもらおうと思ったのによ、きちんと洗濯はしろって爺さんうるせぇんだよな。
そんな考えをしていたらきっと顔に出てたんだろう。
「そんな顔されてましても...この魔法は私たち精霊種の成体が、その身を効果の付与された服に変えるっていう魔法なので、使えないって表現は間違いでしたね。よほど使いたいと思ってもらえる相手じゃないと使ってくれません。」
へぇ、そりゃ確かに一生をそいつと過ごすって、強い覚悟がないと無理だわな。
「あ、ちなみにその際意識は消失します。ありていに言えば死と引き換えです、さすがに私たちも寄り添うと決めた
「まぁ、そりゃ意識はねぇか。自慰や子作りの時までってのは苦だもんな...あ?でもそれは持ち主が脱げば解決じゃねぇか?」
「そこも詳しく説明してあげます、私たちのその魔法で作り出した服はアクセサリーなどに変化する能力が備わっています。脱ぐ、のではなく変化させることでしか肌を露出できませんので。それ以外では魔法自体を解除しなければ一生をその服で過ごすことになりますね」
「なかなか重い制約だなそりゃ、まぁ一生綺麗で傷がつかなくて風呂入るときはアクセにすりゃいいとかいう便利さなら納得か、しかもそこに魔法で能力強化もしてくれるならなおさら」
「そういえばあなたは意識があるものだと、最初の様子では勘違いしてましたね?馬鹿が多いあなた方の種族のことですから。もしや...と思って一応付け足しましたが正しかったですね」
「あ?喧嘩売ってんのか?」
「いえいえ、そんなわけないじゃないですか...ふっ」
「やっぱ喧嘩売ってるよなぁ!いいぜ買ってやるよ!」
そんな会話をしてると横から。
「おいこらやめんか、その子が起きた時怖がったらどうする」
あんなに困り果ててた爺さんが、こんな時に限って都合よく口を開きやがる。
「ちっ、ったよ爺さんに免じて仕方なく見逃してやる」
「ビビりましたね?なら最初から吠えないでくださいよ」
「あぁ?やっぱいまここで噛み殺してやろうか
「じゃからやめんか、会話は聞いておったけどお主はふとしたことで怒りやすすぎじゃ」
「はぁ...んで俺が煽られたのに、こんなこと言われなきゃなんねんだ...」
「まぁまぁいいじゃないですか...かわいいですよw」
「だぁ!我慢ならん!」
「あ、こらやめんか!」
なんやかんやあって
「そういえば、これだけ騒いでいるのにこの少女はさっきから目を覚まさんが...大丈夫かの?」
「あ、掛けられた魔法効果を解除するのを忘れてましたね、さっさと解除しちゃいましょう。ほら、そこのおバカな暴れん坊さん、早く魔力を貸してください」
いちいちムカつくやつだ...精霊種ってのはどいつもこいつもこんなのばっかだから関わりたくねぇんだ。そんなことを考えつつ肩に手を乗せ、しばらく解除の様子を見ていると。
「終わりましたよ、これできちんと目を覚ましてくれるはずです」
「ほう、先ほどの解呪といい見事じゃの。ところでこの服にはどんな効果がかけられていたんじゃ?」
「そうですね、この服は身体硬直と防汚魔法、それと耐久上昇に深層睡眠にあとは身体経過停止とかですね」
「なかなかてんこ盛りだな、さすがに精霊種の成体が元なだけある。んで目を覚まさなかったのは、眠りが深くなる魔法がかかってたからか。」
「ただ身体硬直と身体経過停止に関しては、かなりやりすぎではないかの?」
爺さんの質問にそれにはきちんと答えますよ、とばかりにため息をついて樹木精霊は語りだす。
「仕方なかったんですよ、まず動けないようにでもしないと自害してしまいます、それは契約に反するのでダメです。それと身体経過停止に関しては動かないことによる筋肉量の低下を防ぐためなのと、空腹対策に排泄物による不衛生への対策になります。目ぐらいなら開けたり動かすことはできますし、何より変化や進化を咎めてはいませんので、暗闇に目が慣れることで恐怖心も安らぐかなと。体が動かない恐怖にはまぁ...先の理由から耐えてもらうほかありませんでしたし」
恐怖心うんぬんの前に、大事なとこが抜けてる気がするのは俺だけか?と爺さんにアイコンタクトを送ってみる。
爺さんも考えていたのか、樹木精霊に聞いてみろアイコンタクトを返してきた。どうしてリスニングはできるのになんで喋れないんだよ...
「おい樹木精霊、恐怖とかなんとかいってるけどよ、人間はなんの対策も無しだと精神的な方面で五百年も持たないぞ。しかも十二歳のガキ、目の前で国が亡ぶのを見ているとかいうオマケ付きだ。そこんとこ、精霊種とは違いすぎて抜けてたのかもしれないけどよ」
「そうなのですか?気持ちの整理などが必要かと思いまして、意思への制限は書けなかったのですが」
「まぁ、仕方ないといえば仕方ないよな。それに関しちゃ、生命としての格の差からくるもんだ」
「えぇ、人がここまで弱いとは...その当時には考えが至らず...このせいで目を覚ましたとしても正常に暮らせなかった場合...」
その先を語らせないために俺は言葉を発した
「ついさっき言ったが、それは仕方ないんじゃないか?なぁ?爺さん」
「うむ...当時はただでさえ戦争中だったんじゃ...互いの弱点は知っていても、配慮すべき点にまで目が向くことはないじゃろうからな...じゃが、わしらにも助けると決めた以上責任がある。どんな状態でも面倒を見切ると誓おう」
爺さんも俺も、ここで仕方ないと割り切れるあたり相当頭がおかしいんだろうが。それでも面倒を見切ると言い切れる時点でまだこの爺さんは立派だな、俺だったら引き取ってからどっか連れてって楽にしてやろうとしか思わない。
ただ、そんな考えも、こんな重苦しい空気も。
このちいせぇガキが目覚めた時に悪い目覚めになっちまうなと話題をすり替える。
「そいや十二歳っていうけどよ、一番伸びる時期が過ぎたにしては、小さい方なんじゃねぇか?こいつぱっと見で百四十センチくらいだろ?」
「え、えぇ、そうですね、とはいえ十二歳なりたてくらいの時期だったはずですので、個人差の範疇だと思いますし封術がとけた今、しばらく時間は掛かるでしょうけど背が伸びてくるとは思います」
「そうかよ、ならいいんだ。折角救ったんだからな、すくすく育ってくれないと困る」
「あら、あなた方のように乱雑な種族の口から、そんな言葉がでるとは意外ですね」
こいつ俺らのことどう思ってるんだ?さっきあんなこと言ったけど、そりゃガキに対してすこし優しくする心くらい、どの種族も同様だと思うんだけどな。
そう反論してみることにする。
「まぁ俺らにだってガキに優しくする連中もいるさ、そんなかの一匹が俺ってだけだ」
「そうかの、普段は街に下りるたびに、子供たちが近寄ってくるからと嫌う。そんなお主がか?」
「んなことどうでもいいだろ、こいつが可哀そうすぎただけだよ、哀れみだ哀れみ」
「さっきと言ってることが違いますよ?」
「だってよ...」
街のガキどもは、俺の容姿の物珍しさに近寄ってくるから、うっかり尻尾がぶつからないか心配になるんだ。
そんなことを考えていると。
「痛い...痛い...」
って聞こえてきて、そっちをみると。
続けて「痛い...痛い...」って。
目を抑えながら泣いてる目を覚ましたガキがいた。
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序章第三話を読んでくれてありがとうございます!序章1・2で設定ミスや読み返しておや?と思ったところをちょいちょい修正していますのでよろしくお願いします!
ちなみにあらましに書いてある、とある塔についてしばらく出てこれなさそうなので軽く触れちゃいます!
ある塔っていうのは聖書に出てくるバベルの塔のことです、設定も大体はその通りなんですが。ただし大きく違うのは完成したというところ、本来は神様に怒られて壊された挙句、共通言語を失うんですが。この世界ではなんやかんやで完成してます。
ちなみに戦争の始まった理由がそこに直結してたりしますが...まぁここで全部書いちゃうと私が困ってしまうのでとりあえずはここまで。
以上しばらく出てこない要素補完のコーナーでした!
(次からきちんと主人公目線に戻るから安心してね!)
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