一目惚れに勝る魔法はありますか
描画限界距離
少女篇
序章:未だ微睡の中
とても長い間夢を見ている。
そこは素晴らしい国で、森を切り開いて作られたその国は緑の心地よさと清らかな水に溢れていて。必要な開拓以外はせず
でもそんな平和もある日突然終わりを告げた。
突如として途方もない力を持ち山の主と呼ばれ、国としても丁重に接してきた
そのような秀麗の化け物が故郷に魔法の雨を降らせている、なんの魔法なのか、詳しくは分からなかったが炎の魔法の類であることは分かる。
そしてそれがこの環境でいちばん不味い魔法であることも。
森の中にある国である為、建材はもちろん木が使われている。
冬の日ということも相まって放たれた炎の魔法の魔の手はすぐに広がった、私は恐ろしくってこの国では唯一と言っていいだろう石造りで自分の家である王城に駆け込んだ。
しばらく恐ろしさで走り続け、いつも父のいる執務室のドアを開ける。
そこには挑むことすら憚られる絶対的な強者の存在に歯噛みしている父がいた、それはそうだろう自分の大切な臣民とそこに居着いてくれていた多くの亜人種が死んでいく様をここの窓から観ているのだから。
それから、母が来たことで私が声を掛けずとも私と母の存在に気付いた父は何かを悩んでいた。外は煌々としていて空には獣が座っている、その光がこちらにまで登りつつあるそんな中で父は私をじっと見て
「本当なら一緒に逃げたいが、それは出来ない、ただお前のことを生かすための時間は稼ぐ。生きていればきっと俺達以外からの愛をもう一度知ることが出来るから」と。
急なことに戸惑ったがすぐに言葉が出そうになった。そんなことは望んでいないと、父と母の傍で暮らせたならそれでいいのにと、その言葉を国の最後を背負うように立つ父に掛けるほど私はワガママにはなれなかった。
そして母はその言葉を聞いた後に私に睡眠を促す魔法を掛ける、そして意識が無くなるその最中に。
「愛してるわ」
その後のことは確認しようもないが、きっと滅んだのであろうことは静寂がそっと教えてくれた
それから私は多分木の中であろう場所で幾千の日を過ごした、それでも私の生は途絶えることなく。きっと何らかの魔法で生きていけるであろうことを察してからはただひたすらにあの獣種を憎み、現実から逃避しては疲れて眠るを繰り返した。
それから数年?ずっと続く暗闇の中で私の目は進化したのだろう暗闇の中でもモノを捉えることができるようになっていた。やっぱりここは木の中であるらしいそれを確認した、ただそれだけ、そうして私はまた少し明るくなってきたこの木の中で思考を手放した。
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この木の壁が見えるようになってから何十年がたっただろうか、もう何を考えるにも限界だ。
私は何か悪いことをしただろうか、こんなに暗い木の中で過ごさなければならないほどの罪を。
国を滅ぼされ父も母も国民もいない、いまここで命を手放そうとしても私の意思を咎めるものすらいないのに。
そんなことを考えても、動かない身体と無駄に感じる時の流れを残酷にも享受するほかない。
この身体は未だ朽ちずに心臓の拍を伝えてくる、身体に虫どもが這うこの感覚ももはや忌避すべきものではなく、自身の存在を確かめる拠り所になっていた。
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まだ私は解放されない、なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ。
疑問には誰も答えない。遠い昔に生きていればきっと...なんて言ってかっこつけた馬鹿な男のせいでこんな目に合わされているのか、それとも私を生んだ馬鹿な女が原因か。なんだっていいからこの場所から私を解放して。
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もう今はただただ眠い...何を思っていたかも何を考えていたかも覚えてない...なぜこの心地いい暗闇から出たかったかも覚えてない。
なにをそんなに嫌がってたんだっけ、虫たちも最近は身体に上ってこなくなって睡眠がとても快適だ。
ただその代わりにたまーにすごく大きな音がすることがある、あの日のような、あの日?あの日ってなんだっけ。まぁいいや、おやすみなさい。
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