第3話 埋もれた名作「家なき子」
出崎 統さんの監督作品の中でも、あまり有名ではないながら、ベルサイユのばらと同等かそれ以上と勝手に位置付けている作品「家なき子」
丁度似たような時期に「母を訪ねて三千里」が放送されており、どうも印象はことらの方が強いのですが、今思えば母を訪ねて三千里の方が子供向けで、家なき子は少し高学年向けだったように感じます。
もちろん、現在のスタジオジブリの主要メンバーと言える方々が携わっていた作品でもある「ハウス名作劇場」シリーズの、中核的作品でもある母を訪ねて三千里ですから、この作品も大人が見ても感動するレベルです。
それでも、幼いイタリアの少年マルコがアルゼンチンまで母親を探して一人旅する、今では考えられないような長旅ドラマの根底にあるのは「お母さん大好き」と言う家族愛です。
これも、子を持つ親をしては、麗しのテーマではありますが、この「家なき子」は、途中から母親探しと言う似たようなテーマにはなりますが、最後の最後、主人公レミの出す結論が、本当に・・・・シブいのです!
母親を見つけ出し、幸福と安定、そして一生困らないほどの富を得た主人公レミ。
それでも、困難と冒険と言う試練を経験したレミは、何か大切なものを忘れてしまったような気がして、思い悩むのです。
ここからはネタバレを含みます。
親友となったマチュア、彼と主人公レミは、本当に今まで何だったんだ、と言わんばかりに幸福な日々を送るのですが、あれほど欲しかった温かい部屋、ベッド、食事が手に入ったというのに、マチュアは楽しくないのです。
雪解けが進む山脈に、二人は出かけ、話をします。
このままで、本当にいいのかと。
その時、レミは亡き師匠であるセニョール・ビタリスの言葉を思い出し、結局二人は再び旅に出るのです。
男はいつか、一人で生きて行かなければならない。
あのラストは、未だ私にとって人生の指標と言えます。
この物語の第1話は、それはもう悲壮感溢れるものでした。
大好きだったお母さん、その夫はもう本当にダメ男で、拾って来たレミ少年を旅芸人に売り渡す、と言う場面。レミ少年が泣き叫びながら、セニョール・ビタリスに売られて行くあの絶望感。
なんなんだ、このアニメは、と当時は思いましたが、出崎さんの演出は本当にニクくて、これ、来週もうどうなってしまうんだろうって、思わずにはいられません。
こんなの今、子供向け番組で流したら、親たちは非難囂々でしょうが。
あんな幼い少年が、いきなり旅芸人として辛く厳しい旅を続けるお話しかと思いきや、その売られた相手のセニョール・ビタリスの懐深さに、レミ少年は彼を「師匠」と呼び、尊敬する対象となって行きます。
そこから先のお話しは、もうジェットコースターの如く波乱と事件の連続。
よくもまあ、これほどの事件が毎週毎週主人公の身に起こるものだと感心するほどに。
セニョール・ビタリスが逮捕され、旅芸人仲間の動物だちと少年一人で旅芸人を続け、実の母親に出会ったのに気付かす、家族に迎え入れてくれた親切な一家とも、ある事件をきっかけに四散し、親友のマチュアと共に荒れる海をイギリスまで渡り、そして本当の母親であるミリガン夫人と再会・・・・
もう、書いていて涙腺が崩壊しそうですよ。
これほどまでに名作でありながら、日本のアニメーション作品としては、当の日本人があまり知らないと言う埋もれたアニメと言えます。
ところが、そんな埋もれた作品にあって救いだと感じたのが、この物語には実写版がある、と言う点です。
何年前でしたでしょうか、ヨーロッパで家なき子が実写映画になった時、なんだか随分出崎作品の「家なき子」と似たシーンが多いな、と思っていたら、その監督自身が、出崎作品であるアニメ「家なき子」の大ファンで、いつか実写化したいと思っていたんだとか。
おお、ここにもいたか、同志よ! って感じで、本当に嬉しい事でした。
さて、この「家なき子」、これは邦題であって、原題は「サン・ファミーユ」と言うタイトルです。
そして、この作品、姉妹作品として「アン・ファミーユ」と言うもう一つの作品があります。
これも日本ではアニメ化されていて、私の人生観に大きく影響したほどの名作ですが、例によってあまり正当な評価をされているとは言い難いのです。
では、この作品の邦題を聞いて、解る人って、どれくらいいるんでしょうか?
その作品の邦題、と言うかアニメタイトルは「ペリーヌ物語」と言います。
次回は、このペリーヌについて書きたいと思います。
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