第10話 『ホテル・カリフォルニア』のイントロ寄せで
さて、タイトルに具体的な曲名、しかも超有名曲を使っているのは、実際そういう内容も伴っていることも、ここで保証するけど、なにしろこれはWEB小説なのであって、閲覧数の競争もやっているわけで、で、いまさらなんだが、どう考えてもタイトルにそういう「有名」なものを含んでる話の方が閲覧数の伸びがみられる、ってのもあって、今回から意識してそれにしてみた、っていうところはある。ぶっちゃけある。が別段恥じるつもりはない。内容も伴っているし。
ということで、いま中2の時の話なんだが、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』が、FM東京の「ダイヤトーン・ポップスベストテン」でほぼずっとかかりっぱなしだったのは1977年中1の時の話なので、やっぱり今回の第10話のタイトルに持ってきたのはちょっと無理矢理感あるかもしれぬが、なにしろアイワ製の多重録音機能付きステレオラジカセの導入は中2の頃だったのであながち全部が全部無理筋ということでもない。
そう、その頃の歌本ギター弾き語り少年が多重録音機能付きラジカセ入手して、『ホテル・カリフォルニア』風、アコギ多重録音をやらないはずがないからだ。
中2時期はずっとバッタものガット・ギターしか持ってなくて多重録音してても、なにかショボい感じするなあ、ってのはあったがそれでもそこそこ勤しんだものである。というかこの作業やってたからこそ、ちゃんとしたスチール弦のやつ買わねばなあ、と強く思い始めて、中3の正月、年明け、町田の一番大きな踏切近くのスガナミ楽器にいって、それまで貯まりに貯まっていた「お年玉」全部を握りしめて5万6千円でモーリスのアコギを購入したんだが、それはそれとして、とにもかくにもアイワのラジカセは使い倒した。
残念ながらそのラジカセもその後の彷徨生活でどこに行ったかいまではもうわからないので、型番などは不明だが、とにかく70年代末にはどこででもよく見かけたようなやつ、としか言いようがない。が、なんにせよ、意外にもその多重録音機能でそれなりのものは録れた。
大体、ギター、カポなしのポジションの進行でベースとなる部分を録音し、次に3とか5とか7あたりのフレットにカポつけた進行でギター重ね録りして、その次にボーカルの低い方、最後にボーカルの高い方、って感じの4重録音みたいなの、をよくやってた。
つまりこの頃には、キー変わって、ポジション変わって、しかし進行は一緒、っていうのをどう理屈づけるか、ギターのカポタストの位置違えて左手でフレット抑える順番や場所をどう変えていくのか、とかそのあたりは完全にマスターしていたということだ。特段、「譜面」や「教本」なぞ買ってこなくても。
これやる場合に楽しいのはやはり『ホテル・カリフォルニア』のようなアルペジオなのである。実際本家本元も13回重ね録りってことらしいし。あのイントロ。
その時、間違いなく、この曲やった、と明白に覚えているのはアリスの『走っておいで恋人よ』である。ギター2本、声2声、そして声域も自分に合ってる、とくれば、まずはこれだな、って話。
世の中、『勝手にシンドバッド』の画期性に沸き立っているころ、アリスの、その頃でも旧曲に属するようなものを掘り返してきて一人でシコシコ録音していたわけだ。なにしろ自分の家の環境と所有楽器の状況かんがみて、いちばん丁度良いのが、こういう編成、そういうテンポのものだった、ということだ。
で、アルペジオもストロークも両方ある『明日への讃歌』も録った。それからいろいろとアリスだけでなくあれこれ試行していくうちに、「オリジナル」曲もなんとなく、作り始めたりした。
後年、就職して以降、かなり長い間「ピアノ弾き語り」自作自演のライブ活動をやるようになったが、その時演奏するような曲もちらほら既にこの中2時期から作っていた、ということである。がしかしこの中2時期は、作詞作曲に関してはそれほど熱は入れてなかったように思う。まずはいろいろ多重録音で遊ぶ方が楽しいってなると既存の曲をどんどん真似る方が早いわけだし。
その場合に「ピアノ部屋」までいってピアノ使うってのはやらなかったと思う。バランスとるのが難しかったし。やはりアコギ2度重ね録りってのが機動性その他もろもろ考え合わせてとにかく手っ取り早いし楽しいし、という流れ。
それと「生録」そのもの、一発録りでも、それはそれで楽しい、ってのもあるから、普通に「ギター弾き語り」でも録って遊んだ。『青い闇の警告』みたいにやってて楽しいってのを選んでそれはそれでいろいろあれこれ試行を重ねた。
なので以前の回で述べたTV音楽録音、大河ドラマ1977年の『花神』はおそらく父親所有のポータブルなマイク付きの語学学習用的カセットレコーダーで録音したと思うのだが、1978年『黄金の日々』はこのアイワのラジカセの生録機能で録ったはずである。
で、こういうことをやっていると、以前に書いた「さだまさしNHK506スタジオ怨念ライブ」のような、ライブ音源の方が、自分の自宅作業の多重録音の音源のテイストに近いっていうのもあって、徐々に「ライブ感」に寄って行ったって側面もある。自分の音楽活動全般の傾向として。で、行く行く「ジャズ」方面に走るわけだが、この多重録音遊び始めた頃にはまだ夢にも思っていない、というか、ジャズ全く視野に入ってない、っていう感じだった。「アドリブ」要素いれていこう、とか露ほどもなかったし。「ライブ」感はいいけど、アドリブ感まではまだ思考に入らず、みたいな。
でそのライブ感でいうと『ホテル・カリフォルニア』と同じ年、前年1977年の邦楽の年間チャート上位にライブ録音をシングル化した、さだまさし『雨やどり』が入ってたわけで、そのあたり中2なりに普通に流行に乗ったっていうようなミーハーな側面もあっただろうと思う。
いろいろ試行していくうちに、ちょっと前のヒット曲、この頃でいえば、かぐや姫とか、陽水、拓郎の初期の頃の曲とか、とにかくアコギでできるフォーキーな曲は手当たり次第にまずはやってみて、これは、と思ったら一発録りや多重録音して遊ぶ日々。
で、その間、ピアノはほったらかしで触らずじまいってわけでもなかったように思う。というかアコギでそのように決まった曲を決まりきったかたちでなぞる、という作業に集中していたぶん、ピアノでは逆に、なぞる、というより、大編成をピアノに移し替えて弾いてみる、っていうことをやり始めた。
その作業でよく覚えているのはまずアース・ウィンド&ファイヤー『宇宙のファンタジー』だ。これはイントロからフルコーラス、耳コピで歌は唄わず、インストの曲として真似した。丁度1978年の初夏あたりが日本の洋楽チャートの上位につけてた頃であり、「ダイヤトーン・ポップスベストテン」でかかっていたのをエアチェックしてたと思う。
なのでまあ大雑把に「邦楽」でギターと歌の修練をして、「洋楽」でピアノ
の修練をしてたって感じか。
ビリー・ジョエルの『ストレンジャー』なんかもピアノ曲として弾きなおす、みたいな。
さすがに、コードとかハーモニーとかまで即座にわかっても英語の歌詞まで聞き取ってすぐに真似するっていうそんな超人的能力はなかったので、洋楽に関しては「インスト」認識でピアノ曲として耳コピに励む、と。
で、これは後々ジャズ方面に走るときに役に立ったわけだ。その頃はまったく意識していなかったが。
さてこの洋楽コピーに関しては、意識高い人であれば、自分と同世代の人でも、歌詞全部ほんとに自分で辞書ひいて納得するまで意味把握して、発音記号も意識して、コピーする、っていうような人もたくさんいただろうし、そういう修練を経てプロになった人も多かろうし、なのだろうが、自分は何せ無精なのでそこまでは全然していなかった。
まず意味知るよりも、曲がいいと思えば何はともあれ辞書ひく前に楽器弾く、あるいは歌う、みたいな。意味わからなくても。
ビートルズは歌本もってたので、インストとしてでなく、歌詞も掲載されてたし、それ見て、意味や内容は後回しでどんどん「ピアノ弾き語り」で真似したんだが、洋楽の「歌も込み」でのピアノ弾き語りコピーはカーペンターズもやってたレオン・ラッセル「ア・ソング・フォー・ユー」がビートルズ以外では最初だった。
これも『青い闇の警告』の時と一緒で、「弾いて唄う」というこの実作業が楽しいっていうのが先に立っていた、のと、あと邦楽唄うときと違って英語だと意味はともかくとして「ファルセット」気味というか「裏声」気味でやっても恥ずかしくない、というかむしろ地声で頑張ろうとする方が変、ってところもあり、レオン・ラッセルバージョンだとどう考えても地声的にはキーが高過ぎるんだが、英語でもにょもにょやってると誤魔化し効く感じがして、それも楽しいと思ったわけだ。
これはもちろん、リリース時期から考えても、ベストテン番組ではなく、NHKFMか何かで初めて聴いて、あ、カーペンターズよりかっこいいじゃん!とその時思って、歌詞カードは親所有のカーペンターズベスト盤のものがあったので、それ見ながら、ラッセル風に寄せてやってみた、という流れだった。
とまあ、いろいろあれこれやりながら、音楽実技の試行を積み重ねていった中2時期なのでもあった。性欲ばかりで生きてはいなかったってことだ。
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