第5話 カウンセリング

 みちこ先生は私にまた来ると言って、カウンセリングルームから車椅子を押されながら出ていった。

 私はみちこ先生が自分のことを覚えていてくれた事に嬉しさを感じたのと同時にどうしてあんなに心の強いみちこ先生がカウンセリングルームにやってきたのか不思議でならなかった。そして、みちこ先生がそれ以来私の元に姿を表すことはなかった。彼女は私に会った数日後に亡くなってしまったのだ。後から聞いた話だが、彼女は元々末期の癌に罹っており、私に会いに来た時にはすでに余命が残り少ない状態であったのだ。彼女は私が務める病院にちょうど入院しており、臨床心理士として働く私の顔を見に来るために看護師や医者に無理を言って私に会いに来てくれたのだ。そう、貴重な時間を使って。

 私はその出来事以来自分の仕事への考え方を改めた。そして、今でも前向きに仕事に取り組む努力を怠らないようにしている。みちこ先生から受けたカウンセリングが私にはどうやら効いたようだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カウンセリング Sugie Bunko @mintiti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ