宴の残り火 1章ジャンヌ 第2話
強化
ジャンヌ達は部隊を連れて村に帰る。
兵達は最早ジャンヌを隊長と認め、「オルレアンの乙女」を畏敬の念をもって見ていた。
「ハカセ、レールガン欲しい。
それと、亜空間に入れておくから、原子炉も~」
「貴女の欲しいはレベルが違うわね。」
フィフスはため息をつく。
ジル・ド・レェは、聞いたことの無い単語が次々と出てくるので、訳が分からない。
「しばらく数年は、ここを拠点として動きましょう。
ここを最前線と設定すれば、少しずつ盛り返せるかもしれないし・・・
只、今回の事で彼らは本腰を上げるかも知れないから、警戒もしないと・・・
少しずつでも機動甲冑を増やしていきましょう。
ジャンヌが前線に出てくれたら、損耗は抑えることが出来るはずだから・・・
取り敢えず、実務的な事は私と、ジル・ド・レェでやりましょう。
いいわね、」
「ああ、それでいい。」
ジャンヌは、
「ハカセ、吸血鬼って不死身じゃないの?」
「言い伝えでは不死身なのもいるらしいけど、まだそんな個体にはであったことは無いわね。
まあ、出会いたくも無いけど・・・」
それからは、魔女達は目まぐるしく動き出す。
ジャンヌから引き出したデータを使いレールガンの作成、機動甲冑の改造、
大忙しだ。
ジル・ド・レェもこれまでは機動甲冑の数が少なかった為、突撃や牽制がメインだった戦術を見直して、集団行動や、フォーメーションを組む戦術が必要になり始める。
その為の訓練も・・
兵達の銃も、これまでは逃げながらの発砲だったのが、ジャンヌが遠距離から攻撃出来るので、長距離からの狙撃をメインに行う必要がある為、狙撃用の銃や個人携行型のミサイルなどが作られる。
吸血鬼は、相変わらず事前に連絡があり、戦力を小出しにしてまるで弄ぶかのように散発的に攻撃してくる。
そうしていつしかジャンヌはこの世界に来て15年が過ぎる。
「オルレアンの乙女」の名は各地に広がり、機動甲冑も1000体を超える。
整備を行う魔女も増え、大反抗作戦の準備も整ってくる。
そうした中、使い魔が知らせを届ける。
ここ、オルレアンに一週間後攻めてくると・・・
その数2万をもって・・・
決戦
どよめく兵達。
機動甲冑の騎士たちも驚きの目を向ける。
「恐らくは彼らにとっても相当数の兵力だろう。
だからこそこれを乗り切り、即こちらから打って出れば反撃も少なくなるだろう。」
ジル・ド・レェは、フィフス博士に意見する。
「だからこそ、この戦いは負けられない。」
魔女達は、
「ここが正念場。
全戦力をもって戦いましょう。」
ジャンヌが、
「皆さんは一旦引いてください。
私とジル・ド・レェは、ここで、応戦します。
その間に回り込んで反抗作戦をしてください。
この2万、2人で引き受けます。
魔女達は、
「どうやって?」
「イエローコーンを、戦術核を使います。」
「・・・言うと思ったわ。
反対です。
あなた達を失う方が損失が大きいの。
私がここで戦術核を使います。
あなた達は速やかに起爆後各方面より進軍なさい。
「でも・・・」
「反抗は許しません。
上位魔女としての命令です。
ジャンヌ、あなたに会えてよかった。
何時かルーシーや妹ナナ、そして姉さん、貴女のママに会えたらフィフスは悔いなく生きたと伝えて頂戴。」
魔女達に向かい、
「あなた達も、ありがとう。
後の事は任せます。」
別れ
一週間後、群れを成してやってくる吸血鬼・・・
2万と言っていたが、もっといる・・・
「3万でも4万でも、同じ事・・・」
近づいて来るも反撃は何もない。
自然と固まって行動するので、成功の確率は高い。
一人で机に座っているフィフス・・・
目前に迄やってきた・・・
「姉さん、貴女の中に戻る時が来たようです。
これで、あの子の事が伝わるでしょう。
姉さんに最後に聞いたことが、本当なら今頃はルーシーの中に居るのでしょう。
ジャンヌ、じゃあね。
あなたにも幸多からんことを・・・」
吸血鬼
ジャンヌ達は、夜なのに真昼が来たような光を感じる。
「これだけ離れているのに・・・一体・・・」
ジル・ド・レェは、呻く。
「私達の世界の最終兵器・・・核兵器・・・
これはまだ戦術クラス・・・戦略兵器ならば大陸を薙ぎ払う兵器・・・
さあ、ハカセの最後の願い・・・行くよジル・ド・レェ。」
「全軍打ち合わせ通りに、進軍開始!」
ジャンヌは一人で爆心地に向かう。
万が一にも討ち漏らしがあると困るからだ。
一人だけ再生しようとする個体がいる。
刀を持ち、近付く。
「よくもやってくれたな・・・」
「初めて喋る個体と出会った。
ねえ、あなた達は何故突然活動を起こしたの?
あなたが、黒幕?」
「いや、違う。
そもそもが私達は人間たちの争いに巻き込まれたようなものさ。
だからこそ、せめてもの償いに直前に警告していたのさ。」
「じゃあ黒幕の位置を教えなさい。
そこにいるのはあなた達の親玉なんでしょ?」
「いや、そこにいるのは人間と、私の妻の亡骸さ・・・
彼らは妻の遺体を使って吸血鬼を作ったのさ。
本当の意味での吸血鬼は、私だけ・・・
さあ、お前達は今ならばすべてを取り返すことが出来るだろう。
私を滅ぼすことは出来ないだろうが、妻の遺体は焼いてくれないか?
ジャンヌから星空が伸びる。
吸血鬼が星空に沈んでゆく。
「これは驚いた。
私の細胞が死滅していく・・・こんなことが・・・礼を言う。
ありがとう・・・」
・・・完全に沈んだ。
暫くそこで黙とうし、ジャンヌは動き出す。
二人分の願いを託されて・・・
「ジル・ド・レェ、聞こえる?」
「ジャンヌか?どうした?」
「奴らの本拠地が分かった。
合流して頂戴。
二人で叩きましょう。」
「了解した。」
最後の敵
合流し、星空を展開して2機はバーニアを時々吹かすと、星空の上を滑っていく。
吸血鬼が来る・・・
かなりの数だ。
「邪魔!」
ジャンヌの右眼から赤い線が伸びると、その先めがけ天空から光が伸び、吸血鬼を薙ぎ払う。
ジル・ド・レェが、近づく吸血鬼を数体光る槍で頭部を破壊する。
星空が広がり、無数のドローン軍団が吸血鬼を狙って掃射を始める。
ジャンヌも刀を抜き、吸血鬼を斬りながらミサイルを放つ。
前方に建物が見える。
再度天空から光が放たれ、建物が光の中で消し飛ぶ。
直径数百メートルの穴が開き、跡には何も残らない・・・
「目標破壊。
残敵掃討に移る。」
「了解した。」
その場にいた数千の吸血鬼を倒してジャンヌ達は兜を脱ぐ。
・・・夜明けだ・・・
ジル・ド・レェは各戦況を確認する。
「組織だった反撃はもう無さそうだ。
どうやら、終わったな・・・
明日からは、暫く散発的な戦いはあるだろうが戦争にはならないだろう。
ジャンヌよ、貴女がこの国を救ったのだ。」
「そう、終わったのね。」
終戦
それから、半年ほどで国にいた吸血鬼を駆逐し、終戦宣言が出される。
4人の残された魔女達は、機動甲冑の騎士たちを元に戻そうとするが、本国に阻まれ、投獄される。
騎士たちはそのまま騎士団に編入される。
そして、ジャンヌに教会から宗教裁判が行われるので出頭の命令が下される。
母イザベラが、ジャンヌは幼いころに神の声を聴いたという話を皆に言っていた事が、教会の耳に入っていた為だ。
ジャンヌは、投獄され1月後火あぶりの刑に処される事となった。
その前日、ジル・ド・レェはジャンヌと面会を求めるが、受け入れられず暴れ、牢に入れられる。
「ジャンヌ、聞こえるか?」
ジル・ド・レェは通信する。
「逃げるぞ、おい、ジャンヌ。」
「私は大丈夫、私が今逃げたら、家族が、兄弟が追われるから・・
でも、私の本当の妹「ルーシー」に会いたかったなあ。
ねえ、「ルーシー」に会ったら、伝えてね。
会いたかったよって、」
「断る、生きてお前が言うべき事だ。」
「困らせないでよ。
決心が鈍るじゃない。
ああ、生きたいな。
会いたいな、ママに、おねいちゃんに、ルーシーに・・・」
最後の夜が更けていく。
そして
翌日ジャンヌは教会前の形場に連れていかれる。
顔に涙の跡は残るが、凛とした表情だ。
縛られ、火を放たれる。
そして、ジャンヌは微笑んで呟いた。
「ルーシーに幸多からんことを・・・」
火勢が上がり炎に包まれる瞬間、ジャンヌは銀に輝き銀色の霧となる。
後には、銀色の輝く心臓が一つ・・
「奇跡だ、奇跡が起きた・・・」
人々がひれ伏す中、突然牢の壁が崩れ、ジル・ド・レェが飛び出す。
炎の中に飛び込みジャンヌの心臓を掴むと飛び出し、走り出す。
あっという間に姿が見えなくなる。
エピローグ
とある世界、ルーシーはぴくんと反応する。
「変な通信来た・・・座標・・・」
ハカセが、
「うーん、どこかの世界の位置座標かなー」
「いってみよ~!」
ルーシーが星空に包まれる・・・
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