チラ裏エッセイ
篠浦 知螺
第1話 寒い日は、おでんが美味しい
冷え込みが厳しくなる冬、おでんが恋しくなる。
今夜の我が家は、おでんを囲んで酎ハイで一杯。
ただ今、ほろ酔い気分でキーボードを叩いている。
おでんと言えば、色々な具材が入っていて、子供のころからワクワクさせられた。
はんぺん、ちくわぶ、こんにゃく、大根、卵……数々具材はあれども、やっぱり練り物を忘れるわけにはいかない。
我が家のおでんの練り物は、板橋区蓮根にある『えびすや蒲鉾店』で購入してきたものだ。
以前は、練馬の北町商店街にあった『えびすや蒲鉾店』で購入していたのだが、残念ながら五年前に閉業してしまった。
蓮根の『えびすや蒲鉾店』は、先代の店主が北町のお店から暖簾分けしてもらって開業したらしい。
我が家からだと、自転車に乗って片道二十分ぐらいかかるのだが、それだけの労力を払う価値は十二分にある。
はっきり言って、スーパーで売られているような練り物とは全く別物で、おでんにした時の美味しさが段違いなのだ。
やはり専門店には敵わないと思うのだが、おでん種の専門店が少なくなってしまっている。
『東京おでんだね』というホームページによると、この五十年ほどの間で、東京のおでん種の専門店は七分の一まで数を減らしてしまっているそうだ。
かつては東京二十三区、全ての区におでん種の専門店があったそうだが、今では一軒も無い区が増えている。
以前暮らしていた東京豊島区東池袋にも、おでん種の専門店があったのだが、そこも閉業してしまった。
私の暮らす板橋区には、前述の『えびすや蒲鉾店』の他に、中板橋の『太洋かまぼこ店』、大谷口の『蒲吉商店』の三店舗が営業を続けている。
スーパーやコンビニに押されて、商店街そのものが寂れてしまっている昨今、おでん種の専門店を維持していくのは大変なのだろう。
せめて少しでも売上に貢献できるように、これからも自転車を漕いで通うとしよう。
おでん種の専門店と同様に数を減らしているのが豆腐屋だ。
そして、おでんの具材として忘れちゃいけないのが『がんもどき』だ。
ちなみに、我が家のおでんに入っているがんもどきは、板橋区常盤台にある『吉野家豆腐店』のがんもどきだ。
フワフワで、おでんの出汁が染み染みで、実に美味い!
これもスーパーで売られているがんもどきでは味わえない美味さなのだ。
自宅から、常盤台の『吉野家豆腐店』、蓮根の『えびすや蒲鉾店』を回って帰ってくると、自転車で五十分ほどかかる。
美味しいものを食べるには、相応の労力が必要なのだ。
でも、思い返してみると、私が子供の頃は近所の商店街に馴染の豆腐屋があり、おでん種の専門店もあった。
自転車どころか子供の足で歩いて回っても、二十分もかからなかった。
スーパーに行けば、何でも手に入る便利な世の中になったけれど、昔の方が豊かだったような気がするのは、私が年を取ったからだろうか……。
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