第1話 異世界転生だと!?

「っ!!」

バッと布団から飛び起きる。

「またかぁ〜…」

ここ最近、来栖優斗くるすゆうとこと俺は毎晩の様に悪夢?のようなものを見ている。

「あ〜、朝から気分さいっあくだ……!」

ぐしゃりと前髪を握りつぶして、俺はベットに逆戻りする。

瞬間ジリリッ!!と目覚まし時計の音が鳴り、慌ててまた飛び起きるのだった。

「まずいまずい、このままじゃ遅刻だっ!!」

朝食をかっこみ、戸締り確認もそこそこに家を出る。

「お、遅刻かー?珍しいなー」

隣の家の2階から、幼馴染の早乙女さおとめあさひが顔を覗かせる。

「黙れサボり魔!!」

「ははは、ただの長期休暇だよ」

「なんでだよ!!」

そう、コイツは長期休暇だの宣って特に何も無いのにサボるのだ。因みに、給食にデザートがある日だけ必ず来るので不登校とは違う。

「ほらほら、後五分でチャイム鳴るぞー!」

「マジか終わった!!」

俺の家から学校まで十分弱……どう考えても間に合わない!!……ならば

「奇跡に賭けるッ!!」

「おー、頑張れ頑張れ」

と、猛ダッシュで学校に行くぞ!と言う所で

「はッ!?おいっ!!」

「え」

上から辞書のような物が落ちてきたのだった。

         

「そろそろ起きてください、優斗さん」

 気がつくと俺は見渡す限り真っ白な空間に居た。

 「……!?」

 「あ、起きた」

 目の前にいる「それ」は、10代くらいの少女だった。漆黒の髪と翡翠の様な緑色の瞳の。ただ、瞳の瞳孔が開いている。

「おめでとうございますぅ!優斗さんは見事、異世界に転生する権利を得られました!!」

「!?」

 は?異世界?

「は…な、なんで?」

「あ〜……、いやーちょっと神の手違いでですね?死んだん…ですよ」

「俺死んじまったのかよ!?」

「ごめん、ごめんなさい〜」

 俺は、突然の事に動揺し、狼狽えた。  

 確か旭と喋って、ダッシュで学校に行こうとした所に……?

「…おい、神の手違いって言ったよな?」

「あ、それはですねー……」

 ラノベとかの知識から考えるとこの場所はおそらくあの世みたいな場所だろう。ならコイツは神様?俺コイツの失敗で死んだの?

「ちょっと勉強しながら下界を見てたら辞書落っことしちゃいました!」

え、俺の死因辞書?ラノベとかだと交通事故とかだろ……普通。マイナー過ぎんだろ。てか神が勉強すんの?何を?

「では、もういいですかね?」

「はっ!?ちょっとまだ聞きたい事が」

「では、いってらっしゃいませー!!」

取り付く島も無い様子に、俺は目を見開いた。

「ッうぉあああああああああああああっ!!?」

そしていきなり下に暗い大穴が開き、突如として落とされた。

「おおおおおいっ!?」

「ちゃんと***、つけてあげますからー」

「な、なんて!?」

途中、風の音のせいで聞き取れなかった言葉があったが、構わずどんどん落ちていってしまった。

「すみません。ではまた何処かで会いましょう」

「ちょっと待てぇぇ!!!」

そして、無慈悲に穴が閉じてしまった。





『あれ……?ここ…どこ?』

声を出そうとしても出ない。というか手足もろくに動かせない。

『な、なんで!?』

水の中を漂っている様な、不思議な感覚だ。何も見えない。

『!?』

突然、頭がひしゃげるかと思う様な激痛が襲った。

『痛っ!?』

激痛のあまり叫ぶかと思ったが、水中なのでそもそも息ができなかった。

『せ、せっかく転生したのに…死ぬ!?』

と思った刹那、体が外気に触れた。

『こ、今度は寒い……っ』

そして叫び声の様な大きな泣き声が聞こえてきた。おそらく俺が泣いているのだろうか。ちょっと高校生として恥ずかしい。

よくよく耳をすませば、人の声らしきものが聞こえてくる。が、言葉が分からない。

「***、▼●。」

だが、繰り返し聞こえてくる言葉が少しだけ聞き取れてきた。

「***、 ̄イブ」

イブ?もしかしなくても俺の名前か?由来は何だろう。クリスマスイブとかか?だとしたらちょっと安直で嫌だな……。文句は言わないけども…。

考えに浸る間に突如として眠気が襲ってきた。まあ俺、今赤ちゃんだしなぁ……。

どんどん思考に霞がかかっていき、程なくして意識が沈んだ。








               ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎






「……ふぅ、これでよし、と」

を異世界に送り届けた後、ソファーに座る。

「あ〜、疲れたぁーっ!」

本当、面倒!何で僕がこんな事しなくちゃいけないんだ!?

「僕勉強嫌いだから、辞書なんて読まないっつーの!」

ちょうど狙った位置に辞書を落とすなんて無茶振りすぎる!まあ出来るけども!!

「……さぁーて、彼は真実に気づくことはできるかな」

僕が付けてあげると言った言葉も聞き取れてなかったっぽいし、なんか鈍そうだよな〜。

「…優斗を救う事、できるのかな」

あの子の心の壁は厚いし、此方としてはとっとと失敗するかしてお帰り願いたいところである。どうせ無理だろうし。時間の無駄。

「う〜、もどかしぃなぁ…ただ見てるだけなんて。本当は僕が直接あの子に会ってあげたいのに…」

−−今僕が居る空間に人間を来させるには、異世界から事故として招くかだけだから。掟は絶対なのだ。

「もう少しで彼も目覚めるだろうし、そろそろ様子を見るとしますかぁ〜」

一つ大きく伸びをして、僕は彼の様子を見る為下界に繋がっている鏡へと顔を向けるのだった。



















           

















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盲目少年の異世界ライフ〜用無しだと追い出されたのでまずは魔法を極める事にした〜 白月兎 @iria50

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