第2話 とある魔導博士の相乗効果
重厚感のある扉の開く音がボス部屋に響く。
そこに佇む全身が炎に包まれた一匹のドラゴン。
イビルドラゴンだ。
ランクはSに該当されている。
「ほほぉー、久しぶりに見たけどやっぱり迫力あるよなぁー!」
「そうだな。」
相変わらず二人は呑気だ。
ここは九十八階層。
ダンジョンの中でも深層と呼ばれる強い魔物が生息する場所だ。
「少し準備がしたいから二人は時間を稼いでくれるかい?」
「任せとけ!」
「おう。」
魔法陣の展開をし、魔術文の詠唱を始める。
「流るる大地の恵み
遥かなる自然をもたらす始祖よ
今我に力を宿さんと欲す
『
私の展開した魔法陣から矢の形をした水が現れ、次々にイビルドラゴンの身体を撃ち抜いていく。
「ナイスイージス!俺たちもいくぞ!」
「おう。大いなる力を与えん、『
これは先程説明した強化魔法だ。
その名の通り身体能力を1.2〜1.5倍にする魔法だ。
詠唱も短く済むし、使い勝手が良いことから愛用する人も多いようだ。
「行くぜぇぇ!『
ガルガンドの持つ剣が輝き出す。
これは彼の十八番の技だ。
自分と周囲の魔力を吸収して最上級光属性魔法を付与した剣で敵を斬る。
大体の魔物には効果抜群だ。
これには相乗効果が関係している。
さて、ここでは皆に相乗効果について話そうと思う。
安心してくれたまえ。
イビルドラゴンはガルガンドの閃天ですでに絶命しているからね。
◻︎
炎は水で消され、水は植物に吸われる、そして植物は炎で燃える。
光は闇を退け、闇は光を侵食する。
当たり前のことのように思うかもしれないが、これは戦闘を行う上でとても重要になってくる。
そう。
ここに相乗効果が関係しているのだ。
木属性の魔物には炎属性の攻撃を、水属性の魔物には木属性の攻撃を、炎属性の魔物には水属性の攻撃をすると総じてそれぞれ1.2倍のダメージが入る。
まぁもっと細かいことを言うなら、そこに『防御力』やら『ダメージ倍率』やら『ジャストヒット』
やら『魔力障害』などめんどくさいことが絡まってくるのだが今一気に説明するつもりはない。
ちなみに光属性と闇属性はお互いに1.5倍のダメージが入り、プラスしてその他(炎、水、木属性)にも1.1倍のダメージが入る。
結論から言うならば、イビルドラゴンは闇属性と炎属性を持っているから、光属性または水属性の攻撃をすることで多くのダメージを与えることができる。
これが相乗効果だ。
今回はこれの研究に来ていたのだ。
だがなぜか違和感が残る。
「む…。」
モヤモヤは晴れないまま、私はダンジョンを後にするのだった。
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