Chapter ②:ラジオアーカイブ
【The東京レディオFM】仁希新庄の気ままに(2024年12月24日OA)
同番組のコーナーの中に、リスナーから葉書で寄せられた実話の怪談話を喋るというものがある。この2024年12月24日にオンエアされた回では倉間さんの一人娘・林子ちゃんが通っていると思しき保育園のことを話していた。
YouTube上にはその回の生配信動画がアーカイブとして公開されており、倉間さんは偶然にもそれを見つけることができた。
サムネイルをタップして視聴してみる。
再生時間は45分10秒と長めで、実話怪談を話すコーナーは動画開始から20分32秒が経過した頃だった。
*
さて、本日も「ゾクッと冷涼タイム」のコーナーが始まりました。早速お便りが届いておりますので読み上げます。
えー、東京都葛飾区にお住まいの小関さんからですね。私は7年前から同区のとある保育園に勤めていたのですが、一週間前に退職しました。
退職に至った理由としては、女性しかいない職場ならではの人間関係のいざこざに耐えかねたというのもありますが、もう一つにわかには信じがたい理由があります。
保育園内にいるとどこからか。
壁に何か固いものを打ちつけるような、
ドンッ ドンッ
という音と気持ちの悪い呻き声が聞こえてくるんです。男の人の低い声色で「ぅぅあぁぁぁぁぁ」という感じで、次第に声の音量も上がっていくんです。
勤務中にその音と声が不定期的に聞こえてくるのでとても怖かったのですが、子供達を不安にさせないためにも怯えている様子は一度たりとも見せませんでした。
でも、やっぱり精神的に限界が来てしまい。
園長先生に相談したんですが、
「そんなことある訳ないでしょ。」
「若いんだからしっかりしてよね。」
と激しく叱咤されて、真面目に私の訴えを聞いてくださりませんでした。
次第に他の保育士の先生方も私を「何おかしなことを言ってるの?」と言わんばかりに冷ややかな目で見るようになってしまいました。人間関係が悪化したことによるストレスと、謎の怪奇現象への恐怖により、私は園を辞めることを決意しました。
退職する一週間前辺りに園の子供達に、
「保育園で、おばけとか見たことない?」
と尋ねてみた所、非常に興味深い答えが返ってきました。
「くろいおにいさんとおはなしした。」
「くろいおにいさんがほんよんでくれた。」
って子供達は言うんです。
黒い男の人ってだけで子供達にとっては怖い存在だと思うんですけど、不思議と「くろいおにいさん」が見えると言っていた子供達は“それ”を怖がっていませんでしたね。それと子供達には、私に聞こえていた呻き声は聞こえていなかったみたいです。
やはり、あの保育園には得体の知れない何かがいるのでしょうか。私が呻き声のことを訴えると、焦るように否定した園長先生や他の保育士さんの態度も少し気になりました。明らかに何かを隠している気がします。
今となっては過去のことですが、何度考えても謎しか生まれません。
いやぁ大変、不気味な話でしたね。
保育園の園名についてはプライバシー保護の観点から控えさせておきますね。
さて、ここで。この小関さんから番組宛に、この保育園に通っている息子さんが描いたという「くろいおにいさん」の似顔絵のコピーが届いております。こんなことを申し上げるのは憚られますが、灰色と黒のクレヨンで塗られていてね、ちょっぴり怖いんですがね。とても優しそうな印象を感じます。
この「くろきおにいさん」というのは子供にとっては心優しい存在に見えて、大人にとっては「不定期的に聞こえる呻き声」という「きみが悪い怪異」に変化しているのかもしれません。
この保育園を退職して以降、小関さんの身の回りでは特に怪奇現象は起きていないようです。
とても喜ばしいことですね。
それでは、次のお便りに参り……
*
男性のラジオパーソナリティが葉書に綴られた投稿内容を淡々と読み上げ、投稿者の小関さん(恐らく仮名)に向けて怪奇現象から解放されたことを祝福するコメントをして締め括った。
しかし謎は全く解決されていない。
加えてこの保育園では「壁に何かを打ちつける音と男性の呻き声」という、もう一つの怪奇現象が発生していることが判明した。
オンエア後。Xでは狭い範囲であるが、葛飾区にあるというこの保育園はどこかという推測が行われていた。そんな数ある関連ポストの中で、とあるニュース記事のリンクを添付したポストを見つけた。
そこには保育園の名前も書かれていた。
りっきー @Ricky_mouth
もしかして、4年前にプールで園児の溺死事件が起こったというこの「きくの保育園」では?
【※該当ニュース記事のURL】
#保育園事故 #怪談
#仁希新庄の気ままに
19:43・2024/12/26・1056回表示
文面の下に貼られた、ニュース記事のリンクをタップしてみる。
《 Chapter③へ続く 》
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