おやすみ

第12話

志乃はそれこそ天使と讃えられる微笑みを浮かべた。



男達にはそう見えた……が。



男達のあまりにも情けなくみっともない姿を嘲笑っていただけである。



まだかまだかと待ちわびる二人。



そんな二人を尻目に志乃は立ち上がると




「「??」」




ボールを蹴るように片足をあげ……見事なM字開脚をしてる股間へと振りきった。



「~~っっ!!??」




躊躇いも加減も一切ないその行為に、男はガムテープで悲鳴をかき消されながら悶絶し白目を剥いて気絶した。




「んんんっ!!んーっ!!んっっ」




天使の突然の凶行にもう一人の男は慌てて足を閉じようとしたが……時すでに遅し。




「~~~~??!」




志乃の美脚が股間にクリーンヒット!!



ガムテープの端から泡を吹き出しながら、こっちも白目を剥いて気絶した。




「今度、噂に託つけて女を犯そうなんて考えたら、容赦なくその節操がない玉と棒……潰すよ?」



笑みを消し、天使とは思えぬ程低い声で志乃が言う……も。



気絶している男達に、その言葉が届くことはなかった。




「……ふぅ」




いつの頃からだろうか。


"天使"とヤり放題なんていう噂が流れ出したのは……。



その噂のせいで何度危ない目にあったことか。



でも……。



3号棟の前に着くと、恐い仮面をつけた里哉・ナナ・ロクが郵便受けの下で壁にもたれ掛かり寝ていた。



志乃が無事でいられたのは、この子達のお陰だった。



"志乃姉ちゃんは守るよ!!"




そう言って見廻りを始めてくれたのだ。


そして怪しい奴は、今日の様にやっつけてくれるようになった。



それで出来た噂が"ウサギの仮面を被った殺人鬼が出る"ってものなのだけれど……


何故かそっちの噂は広まることがなく。




「んんー、ん……」




真ん中で寝ているナナが、里哉とロクにもたれ掛けられ呻いた。



「ふふ」




志乃は起こさないようにソッと3人の仮面を取る。



あどけなくも幼い寝顔が現れる。



ナナだけが眉間にシワを寄せているけれど……




「いつもありがとう」




そう言って3人の額にキスをする。




「「「うぇへへへへへー」」」




眠ったまま3人が同時に笑ったのだ。



それに志乃も微笑み




「おやすみ」




気持ち良く寝ているのに起こすのは可哀想だと、3人をそのまま志乃は家に入ったのだったー。

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