第25話

自分の話は終わったと、八千流はまたラーメンを食べ始める。




「うまうまっ」



「ハイド」



「ん?」



「胸くそ悪い物を見たって言ったよね。何を見たの?」




ハイドに聞く。


答えはほぼわかってるけれど。


ハイドの口から聞きたかった。



ハイドの眉間に深いシワが寄る。



さっきの八千流と全く同じ顔。




「ハイド?どした?」




姉が心配して弟の顔を覗き込む。




「……ブハッ。お前、どこにコーンつけてんだ」



「??」



「…本当だ。奇跡?」



「ぬ?」



「俺が見たのは……」




八千流の鼻の頭の上に乗ったコーンを取って食べたハイドがあたしを見る。



心配するかのように。


あたしは大丈夫だよ。


そう伝えるために微笑むと、ハイドは頷いた。



そしてーー



















「“Addict”に入ってすぐだ」



「「……」」



「壁に“黒豹”のマークが描かれた旗が飾られていた」



















やっぱりか。




「え?え?“黒豹”って……」




八千流が猫瞳を大きく見開いて、あたしとハイドを交互に見る。



そして




「“黒豹”??」




ピンッと自分の耳についてるピアスを弾いた。




「ああ」



「あたしも見たよ。それ」



「えっ!?」



「電話の時か」



「うん」



「どういうこと?」




1人、それを見ていない八千流。




「誰かが模倣してる」



「だよね、でも」



「でも?」



「そのままではなかった」



「だな」




ハイドが頷く。


そっちもか。




「??」



「色だけが変えられていた」



「色?」




パパが作った“黒豹”は銀に黒色。


今日見たのは……




「旗は黒地に赤」



「あたしが見たのは壁に直で描かれていた。“黒豹”の部分がやっぱり赤だった」



「赤ー」




八千流が呟く。



あたしはグッと手を握りしめた。



愛しい思い出が、真っ赤に塗り潰されたようで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る