第10話

「珍しいね。アンタが激励するなんて」




八千流が隣に来て、あたし達も教室へ向かう。




「そ?八千は、ああいう子好きよ?」




そう言って、唇に人差し指をあてニッコリと笑う。




「へー。初耳」



「だってあの子は真っ向から挑んできたじゃない」



「失敗したがな」



「あーね、それは仕方がない」




あのやり方はハイドの好みでは全くなかったから。




「でもね、影でその失敗を嘲笑って馬鹿にして、自分は高みの見物で何もしない子達よりよっぽど好感が持てるわ」




言いながら、ゆーっくりと切れ長の瞳で周りを見る八千流。



思い当たる……主に女子が、八千流と目が合う前に次々と視線を逸していく。




「納得」




八千流にしては物凄くマトモなことを言ったので素直に頷く。




「はぅあっ!?」



「何?」




さっきまでの凛々しさはどこへやら、奇声を上げてムンクの叫びと化す八千流。




「マズい…マズいわ、一華ちゃん……」



「何が」



「……ジャージを忘れた」



「……はぁ~~」




デッカイ溜息が出た。


この忘れ物常習犯め。




「だからいつも言ってるでしょーが、夜の内に準備しとけって」



「あっその言い方ママみたい!!」



「……」




お姉ちゃんみたいって……。


それは嬉しいな。




「ハイドーーッ!!」



「貸さない」



「嘘でしょ!?まだ八千流何も言ってないんですけど!?」



「デカい声で話してるんだから、嫌でも聞こえる」



「なるほど!!」




八千流は……馬鹿だと思う。

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