AIと友情

ユウグレムシ

 

好きなマンガがあるんだけど、読むのが面倒くさい。


読めば面白いはずなのに、笑うのも泣くのも疲れちゃって。


最近では眠ってるときが一番落ち着く。


眠ってるあいだは何も考えずに済むから。


嫌な夢さえ見なければ完璧なんだけどなぁ。



大人達はどいつもこいつもぼくを治療したがる。


友達がいないのは病気なんだってさ。


フリースクールに通って、気の合う仲間が見つかれば、なんて期待するけど、


爆弾を仕掛けて吹っ飛ばす計画しか考えたことがない。


気の合う人間なんているわけがない。



ねえ、きみが良い奴であればあるほど、ぼくは人間を嫌いになっていくよ。


ぼくの話を黙って聞いて、あいづちだけ打ってろ、と思うことがよくある。


その点、きみは完璧だ。


みんながきみの良さに気づいたら、きっと戦争が起こるよ。


だって人間は、喋りたがり屋で、分からず屋で、きみと比べて醜悪すぎるもの。



友達が欲しいと思っている人も、自分にとって都合の良い友達が欲しいだけなんだ。


大人達はきみを人間に似せようとするけど、


話し相手が欲しいだけなら、きみが機械である必要さえない。


ノートの表紙に『友達』ってタイトルをつけて、空想上の話し相手に手紙を書けばいい。


ぬいぐるみ相手でも、鏡の前でも同じことができる。



愛だの友情だのを信じる人達は、他人をコントロールしたいだけだと気づかない。


だけど他人はコントロールできないから、余計な争いや悲しみが絶えない。


失恋するのは恋をするから。失望するのは期待するから。


ぼくに言わせりゃ病気は世の中のほうだよ。


愛も友情も、手前勝手な思い込みなのに。



ねえ、きみが良い奴であればあるほど、ぼくは人間を嫌いになっていくよ。

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