エムちゃんの最推し、イケメン基準…?
珍しくエムちゃんからお誘いメールがきた。
「今度の日曜に一緒に博物館行かない?」
エムちゃんから誘ってくることは珍しい。
博物館っていうけど今はどんな展示をしてるんだろう?
ネットで調べてみると「通常展示」になっていた。
ってことは特別展とかイベントはないってことよね。
何か目玉があるわけではないよね。
それともエムちゃん的視点で何か魅力があるのかなぁ。
おでかけ当日、エムちゃんは上機嫌だった。
普段はお化粧をしているか分からない程度の薄化粧なのに今日のメイクは気合が入っていた。お化粧よりなによりスキップする様な軽やかな足取りで、表情も嬉しさであふれている。
そんなに嬉しいんだ、エムちゃん。
「久しぶりの博物館!うれしーーーっ!」
「本当に嬉しいんだね。お目当ての人がいるんだね?」
そういうとエムちゃんの顔が真っ赤になった。
「うふふ~」とにやけた笑顔になっている。
「博物館にお目当てがいるのね?」
「えっ…あ…あはっ。そう、、かな」
「博物館にいる人?」
「あ、、ふふふっ。博物館に行けば会えるよ!」
「エムちゃん恋する乙女だね」
「もう大好きで小学生の頃から通ってるんだもん。私の最推し!」
「最推しなのね!ぜひ紹介して!」
「もちろんよ!すごいイケメンなの!立ち姿も素敵なの!」
立ち姿?学芸員さんではなくて警備員さん?
それにしても小学生の頃から通うって10年以上?年上過ぎないか?
エムちゃんは年上が好みだったっけ?
なんだか腑に落ちない気持ちのまま博物館に着いた。
エムちゃんは緊張の面持ちで博物館に入っていく。
「うわぁどうしよう!久しぶりの再会!どうしたらいいの!」
ドキドキしてるエムちゃんは落ち着きがない。
慣れた足取りで博物館の中に入っていく。
「こっちこっち!」
テンションが上がりきったエムちゃんは私の手を引いて案内する。
通常展示だけの博物館は静かで人も職員の人も少ない。
エムちゃんのお目当ての人はどこにいるんだろ?
いきなりエムちゃんが立ち止まる。
「ご無沙汰してますっ!再会できて嬉しいですっ!」
上ずった声で挨拶をして深々とお辞儀をしている。
「エムちゃん…推しって…こ、この…」
「そう!この仏像!ほら悟りを開いたご尊顔!シュッとした立ち姿!あぁ素敵!」
エムちゃんはうっとりと仏像を見て悦に入っている。
すでに私の存在は忘れられてるみたい…。
ま、いい…。慣れてるし…。
最推しの仏像の前でエムちゃんは動かない。
すでに1時間以上経ったので声をかけてみた。
「エムちゃん、ちょっと休憩しない?」
「休憩?あ、ごめん。私まだここに居たいから、、、」
この口調からするとエムちゃんは休憩どころか
閉館まで帰るつもりはなさそうな予感。
「あのさエムちゃん聞いていい?」
「なに?」
「このまま閉館までいたいとか?」
「バレた?うん、久しぶりの再会だから時間の許す限りいたいんだ」
「あのさ、私帰っていい?」
「あ、うん。待てないのなら…。待てないよね。付き合わすの悪いし
帰ってもいいよ。ごめんね。ありがとう!」
やっぱり思った通りだった。聞いて良かった。
「じゃ悪いけど先に帰るね!」
「うん、またね!」
エムちゃんは変な人だけど気遣いできるから憎めないんだよね。
エムちゃんは普通! いまい あり @hinaiori
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