第15話 勇者保全システムのシスたん。


 一行は、織物職人の店に戻ってきた。

 エンプレスは、龍俊に気づくと顔を上げた。


 「おう。どうだった?」


 龍俊はピースサインをした。


 「バッチ・グーっすよ。少し土壌改良が必要っすね。木炭と棉の種は手に入るっすか?」


 「あぁ。種は行商人から手に入るぞ。木炭は、鍛冶屋にいけばいくらでも都合してくれる」


 「わかったっす!! じゃあ、お願いするっす。費用については、侯爵さんに請求してくれっす!!」


 「棉は収穫までどれくらいかかるんだ?」


 「早くて4ヶ月ほどっす。それまで、野宿っすかね」


 メルファスが会話に割って入った。


 「野宿なんて絶対イヤっ!! 麗しき女神のわたしが野盗に乱暴されたらどうするのよ」


 龍俊はジト目になった。


 「夜の1人遊びができないのがイヤなんすよね?」


 「……そ、そうだけど、何か文句でも?」


 女神は嘘がつけなかった。


 エンプレスはため息をついた。


 「はぁ……。だーかーらー、じゃれるなって。安い宿屋紹介してやるから、そこに泊まっとけ。宿代は、……冒険者ギルドにでも行って稼ぐといい」


 「ありがとうっす!!」


 龍俊は、さっそく教えてもらった宿屋に向かった。メルファスに話しかけた。


 「ところで、冒険者ギルドって、冒険者が行くところっすよね。もしかして、メルたんは冒険者でござるか?」


 メルファスは両手をあげて肩をすくめた。


 「はぁ……? 行くのは、あんたに決まってるじゃない」


 龍俊は、わざとらしく眉をあげた。


 「はぁ……? 拙者、戦えないっすよ……」


 「いやいや、あんた勇者候補でしょ?」


 龍俊は肩をすくめた。


 「メルたんに初めて会ったとき、勇者なんて言葉はカケラも出てこなかったっすよね? 今更いわれても、知らんっす〜」


 「じゃあ、どうすんのよ!! 私たち、無一文なのよ。宿屋代どころか、明日のご飯だって食べられないじゃない」


 龍俊はひっくり返って尻を掻いた。


 「しょーがないっすね。おーい、シスたんー。ちょっと、拙者の代わりに戦ってくれっすー」


 「はぁ? あんた何言ってるの? システムにそんなこと言ったって意味ないわよ」


 「そんなことないっす。拙者とシスたんは、いつも脳内ポーカーして遊んでるマブっす。出でよ。シスたんっ!!」



 すると、龍俊達の目の前に光の柱が落ちてきた。霧が散ると、1人の少女があらわれた。


 キラキラとした粒子が弾けている。

 

 身長はメルファスより少し小さい黒髪の美少女。その瞳は赤く、目の際には紫のシャドーが入っている。肌は透き通るように白い。黒と赤の巫女のような装束を身に纏っている。


 「……呼ばれたから来た。マスター……」



【おまけイラスト】

https://kakuyomu.jp/users/omochi1111/news/16818093093691279174

 

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