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第1話

鎖骨に熱を感じた。



その瞬間、数秒気を失っていたことに気付く。

はっとして視線を下げると、無造作にワックスで立ててある短い黒髪が見えた。




頭が痛い。


額の裏側に鈍い痛みを感じながら、その黒髪に指を通した。





「おまえ、いま一瞬寝てただろ」




低い声が、密やかな笑いを含んで落とされる。


鎖骨付近に顔を埋めて、肌を甘噛みしていた男が顔を上げて、上から私を見下ろした。




「……うん、」


「寝んなって」




連日の労働による疲れと、快楽の狭間でまた意識が飛びそうになる。それを察したのか、一瞬首を噛まれた。そしてその瞬間腰を両手で掴まれて、さんざん愛撫されてぐずぐずになっていた私の身体のなかに性急な動作で入ってきた熱に、自然と声が吐息と一緒に漏れていく。

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