第52話
出会った時から気に食わなかった。
家で唯一頼れる姉貴が嫁いでから、親父に虐げられ続けてきた怒りの矛先は、早瀬さんと蛍の兄妹に向けられて。あれから数か月経って、梅雨が夏になった。今では絆されている。それでもふつふつとした怒りはふとした瞬間に湧き上がる。
「あ、眞夏さ」
「あ?」
「あれどうすんの、三者面談」
友人がふと言った言葉に、先週担任が教室に掲示していたプリントを思い出した。中二の夏。これから後期に入るに当たって担任と保護者との三者面談が控えていた。家庭用のプリントも貰っていたが親父に渡すことのないままま、蛍の家に居候をしている
今、あのプリントの行き場はもはやなかった。
「夏休み入る前に面談するべ? 親父さん来る?」
「ない」
言い切ると、友人はため息をついた。
「……春名さん?」
「姉貴はむり。妊婦だから」
「あそっか。じゃあ、まさかの」
そこまでいってにやついた友人の頭を殴った。
「大学生にこんなとこ来させらんねえに決まってんだろ」
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