第43話
その言葉を聞いて安心する。
もう眞夏を彼の父親のもとに帰らせたくなかった。
本棚の上にあったアクセサリーケースを取って、ふたを開ける。
「眞夏」
中から出てきた銀色の鍵を、眞夏の手のひらに乗せた。
「これ、もってて」
「……………なに、これ」
「ここのスペアキー」
「は」
暗い色を宿していた瞳が、見開かれた。
「ここにいてほしい」
子どもは大人から愛護されるべき存在のはずなのに、彼の周りにその大人はいない。
放っておくことだってたぶん出来た。
でもそれが出来ないのは、この義弟が自分の家族だからだ。
「毎日ここに帰ってきて、毎食食べて、布団で寝てほしい。安心して帰ってきてほしい。私がいないときもここにいていいから。でも強制はしないから、この鍵だけ持ってて」
殺したくなると言われてこんなことを言うなんて本当に意味が分からないと思う。
でも、信用して欲しいなんて思ってなかった。
「っ、なんなのあんた!ほんとうぜえよ!!」
鍵をじっと見つめていた眞夏は、不意にそう怒鳴った。
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