第36話
「……親父が酒飲んでたから、あんたんとこ泊まって明日そのまんまガッコ行こうと思って」
「ああ……別にいいよ。じゃあ朝ごはんもいるよね」
パン派?と聞くと「どっちでもいいけど」とぶっきらぼうに答えられた。
お父さんがお酒を飲んでいるのを見て、それだけで警戒してうちに来たということは、やっぱりお兄ちゃんが言ってたように、相当酒癖が悪いのだろうか。でもなんとなくそこに突っ込むことはできずに話を逸らした。
「そう? あ、夕ご飯お刺身と冷奴なんだけどまぐろ食べられる?ごはん余ると思うから、明日の朝もごはんでいいかな」
「別に食える……作ってくれるんならなんでもいい」
視線を取り出したプリントに落としたまま興味なさそうに答えた眞夏は、言葉通りあまり好き嫌いがない。
出されたものは、まるで久しぶりに食べ物にありつけるとでもいうように何でもよく食べる。言葉上はそっけないけど、美味かったとごちそうさまは欠かさずに言った。根はやさしい子なんだと思う。
眞夏は何も言わずテーブルの上で、宿題らしきプリントに向き合い始めたので、それ以上話しかけることはせず席を立って台所に向かった。
(眞夏来るなら、肉とか揚げ物にすればよかったな……)
暑かったのであっさりしたものが食べたくなってお刺身にしたけど、それに冷奴だとさすがに物足りないだろうか。うーん。だけどここでまた買い物に行くと遅くなるしな……。
仕方なく丼に大目にご飯をよそって、まぐろ丼にすることでなんとなく見た目ではボリューム満点な感じになった。
汁物に火をかけている間、暇になったので眞夏の方に振り返れば、静かにシャーペンをプリントに走らせていた。時折迷うようにその手が止まるものの、教科書を見れば分かるのか、ちらっと目を通すと再び淀みなくペンが動く。
傍目に見ても解くのが早い。
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