第4話
びしょびしょのままでいさせるのもどうかと思い、自分のカバンを床に置いてから、取りあえず、クロゼットから取り出したタオルを渡す。
乱暴な動作でそれを受け取ると、髪の毛からがしがしと拭い始めた。
……本当に、なにしに来たんだろう。
突然すぎる訪問にその場で立ち尽くす。
「てか、物少ないくない?」
落とされた言葉に「この子話す気ないな」と思った。
テーブルとベッドと本棚しかない部屋。テレビさえない。本棚に入っているのは教科書類のみだ。ほかの荷物は全部備え付けのクロゼットに収まる程度で、殺風景に思われても仕方ない。その殺風景さの中で、義弟は来た理由は特に話さず、整った横顔で部屋を眺めていた。
この分だと当分話してくれそうにもない。話しかければ睨まれるし、嫌われているのに間違いなさそうだった。
「どんぐらい待ってたの?」
「知らねえ。一時間くらいじゃね?」
梅雨入りしたばかりとは言え、長時間濡れたままで外にいれば風邪引いてもおかしくないのに。連絡くれればよかったのにと言いそうになったが、そもそも連絡先も知らないことを思いだして口を噤んだ。
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