ホウレンソウ。
猫の尻尾
第1話:ホウレンソウしゃぶしゃぶ。
男女が入れ替わる物語は実は平安時代から日本にあり現在までさまざまな形で
描かれてきましたのです。
海外なら幻想文学、SF小説に分類されますが日本では意外と小説でも素直に受け
入れられてきたようです。
ですが今回は男と女が入れ替わるパターンじゃありません。
男が女になってしまったことで身の回りの状況が変わって行く、そんな悲喜こもごも
な話です。
高校二年生の「
母親と父親は秋が幼い時に離婚していて渡良瀬家の家計は母親がひとりで支えて
いた。
秋も夏休みや冬休みにはバイトをして母親を助けていた。
少しだけ貧乏だけど、秋は母親とふたり幸せで平凡な暮らしに満足していた。
その夜は寒かったこともあって晩御飯は珍しくしゃぶしゃぶだった。
しゃぶしゃぶと言っても牛や豚じゃなく、ホウレンソウじゃぶしゃぶ。
「たくさん食べてね・・・お肉じゃないけどね」
「俺、ホウレンソウしゃぶしゃぶ大好きだから・・・」
秋は腹一杯ホウレンソウしゃぶしゃぶを食べた。
だけど晩御飯を食べて一時間くらいして急にお腹が痛くなって、脂汗が
ダラダラ出はじめて死にそうなくらい苦しんだ。
夜だし病院は開いてない・・・母親は救急車を呼ぶって言ったが、秋は拒否
した。
腹痛くらいで大袈裟にしたくなかったからだ。
だから胃薬を飲んで痛みをこらえて悶々としながら布団に入った。
だけど不思議なことに秋だけが食中毒みたいになったけど母親にはないも
怒らなかった。
母親は強し・・・一家を支えなくちゃいけない母親は食中毒になんかならないのだ。
たとえO157でも春を倒すのは無理だろう。
腹の痛みは少し楽になったが眠れない・・・なんだか体に悪寒が走る。
ゾクゾクする・・・体がミシミシ言って細胞が分裂してるみたいだった。
繰り返す嘔吐、下痢・・・秋人はこのまま死ぬんじゃないかと思った。
母親も眠れないのか時々、秋の様子を見に来てくれたが氷枕で頭を冷やす
くらい、もう薬は飲んでいたから他に手の施しようがなかった。
秋は救急車を断ったことをちょとだけ後悔した。
眠れないまま明け方になってようやく腹の痛みが薄れてきた。
いまさら目を閉じても眠れるわけがない・・・そう思って起き上がって
トイレと洗面所へ行った。
先にトイレでおしっこをしようと思って自分のモノを摘んだら?
「あれ???・・・こんなにちっこかったっけ?・・・」
秋は、なんとなく自分のチンチンが小さくなってる気がした。
「あ〜絶対腹痛で苦しんだから体も萎縮してるんだ・・・それだな」
「日にちが経ったら元にもどるだろ?」
トイレで用を済ませて洗面所へ・・・顔を洗って歯を磨いて鏡に映った自分の
若干やつれた顔を見た・・・なんかおかしい。
ヒゲが?・・・ヒゲがない?。
高校生だけどヒゲくらいはもう生えかけている・・・だけどつるつるお肌。
で、パジャマの胸のあたりが膨らんで見える。
だから秋人は自分の胸を触ってみた。
そしたらば・・・胸に若干の膨らみを感じた・・・確実に胸が膨らんでる。
「お、おっぱいじゃん」
揉んでみた・・・ちょっと膨らんだ自分のおっぱいを揉んで、ちょっと嬉しい
気持ちになった・・・ただのスケベ心で・・・。
そんな悠長なことしてる場合か。
いろんな意味でめっちゃ違和感感じたけど食あたりのせいだと秋は深く考えず
スルーした。
そのまま朝ご飯食べて、母親に見送られて学校へでかけた。
秋の家から高校までは距離があるから通学はもっぱらバス。
そのバスに近所に住んでる同級生の女子がひとり乗る。
その子と会えることが秋は楽しみだった。
そう思うってことは、まだ秋は男なんだ・・・恋愛対象はあくまで女。
男を好きなるって感覚はない。
体は女になりつつあるのに、中身は男。
普通トランスジェンダーの人って男子として生まれたのに心は女性ってパターン。
だけど秋の場合は心は男なのに体は女なのだ。
どう転んでも男であることは変わりない、変わらないけど体は女だって認めながら
生きていくしかないのだ。
それってめっちゃ複雑。
つづく。
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