第12話 あとがき……。

 私は精神障害と内部障害を抱えており、なかなか就労に踏み切れずにいる。令和7年で、満56歳になるが、本当はもっと早く社会に出たかった。そのために、勉強をしてきた。


 しかし、当時の私の周囲には、噂話や悪口、理屈の通らない暴力的な言動があふれていた。それに動じない心が必要だった。遊びに使えるお金はなかったが、時間はあった。  

 実家暮らしだった事もあり、本を買う余裕はあったので、さまざまな本を買い、勉強した。理解できることは少なかったが、それでも時間を潰すことはできた。


 ノートに箇条書きでまとめ、後にパソコンを購入して理解を深めようと考えた。しかし、箇条書きでは物足りなかった。設定された状況と今の現実が、あまりに違いすぎたからだ。


 友人とつるんで現実を見ないように過ごしていたが、彼と縁を切ったとき、私は、影響されない心と技を備えていることに気づいた。それでも、支援員には、なれなかった。


 心の病の種類はさまざまで、話を聞くことで罪のないように思える人々とも出会った。しかし、私は彼らを救う事ができるとは思えなかった。社会の一番底辺層にいるからだ。

 

 死ぬことも考えたが、不思議と生きていた。そこで、今までの経験と学習を生かし、この位置から彼らを教育することを考えるようになった。それを心の支えにしようと決めた。

 

 最初は小さな変化しか起こせなかったが、やがてその影響は私の手に負えないほどの力を持つようになった。暴走の恐れがある力を使うのは危険だった。

 そこで、まず頼ったのは礼儀だった。闘争心を礼儀で抑えようと試みた。しかし、それだけでは荒れ狂う心を抑えきれなかった。

 

 その時、越後の里のことを思い出し、私は神様に運命を委ねる事にした。そして、自分ができることを精一杯やり、それによって得られた成果を他人に要求しないことに決めた。


 それは苦しい道だった。精神的に負担が大きく、壮年期には挫折した。だからこそ、少しだけ相手に要求してみようと思った。それは決して依存することではない。


 夢を叶えるためには、大きな力の助けを得る必要があった。そのためには、相手に奉仕しなければならない……。


 しかし、私は支援員の仕事を手伝うことができなかった。作業場では「手伝いましょうか?」と簡単に貢献できるが、職員にどう奉仕すればよいのか分からなかった。


 私は気の利いたことも言えず、面白みのない人間だった。そして、荒れ狂う「心の火」を、消すことは容易ではなかった。「心の火」は燃え上がるほどに煙を生み、欲が次々と湧き出る。世の中に出たい、世の中で、認められたい……と思う。しかし、内部障害がその足を引っ張った。


 私は空想の中でしか生きられなかった。過去のトラウマにより、自分は馬鹿で無能であるという思いに打ち負かされていた。


 唯一の楽しみは、空想を輝かせるために日記を書き、それを再構成して小説を生み出すことだった。

 こうして生まれたのが、この小説である。


 日記をもとにしているが、明らかに空想した部分もある。事業所での作業の内容や登場人物の詳細、地名などは意図的に曖昧にしている。これはノンフィクションではない。


 この小説のテーマは、精神障害者の姿と、アドバイス・スキルの種類、指導法であるが、内容は決して深いものではなかった。けれど、書いていて楽しかった。

 これが私の精一杯の作品だ。好き嫌いが分かれる小説だろうが、一度読んでいただければ幸いである。

 

 今日は寒く、ここ越後では雪が舞っている。あなたの周りはどうだろうか。

 私の思いは、貴方に届くのだろうか?

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