第3話 ダンジョン作成

「うおっ! ダンジョンコアが消えた……」

「おにぃ、今やったのってダンジョンコアの移動?」

「そうそう。試しにリビングに移動させてみたんだが、見てみるか?」

「あっ! じゃあこの機能も試してみない?」

「おぉ、こんなのもあるのか……便利だな。とりあえずやってみるか」


 ダンジョンマスターに備わってる能力とでも言うのだろうか。どうやら別階層に向けての転移が可能らしい。

 しかも飛ぶ場所の指定も可能であり、家の壁に埋まるって事も無さそうだ。


 ただ、流石に連発は出来ないようで、1分のクールタイムとダンジョン編集画面を操作すると言う行動が必要らしい。

 ……これ、もし戦闘中に使えたら相当強くないか? 強制離脱が出来てしまうだろうに。


 とりあえず陽毬と一緒にこの転移を使ってみる。


 ダンジョンの編成画面を操作して、ダンジョンマスターが使える便利機能を操作。

 その中にある転移機能を選んで、転移対象を選んで飛ぶ先を選択して……


 …………ちょっと操作多いな。ショートカットとかが欲しくなるけどそう言うのは無いっぽい?

 まぁ、手で操作しなくとも思念で操作出来るらしいし別に良いんだけども。


「ほら、陽毬……手。一緒に飛ぼう?」

「あっ、うん。おにぃ……はい」


 陽毬の手をしっかりと握り、転移対象を俺と陽毬に設定する。

 そしてダンジョンコアのあるリビングへと転移してみる。


 転移開始を選択した瞬間、スッと視界が端から白くなり、周りが完全に見えなくなったが、それはほんの数瞬程度……1秒と経たずして視界は元に戻り、見えた景色は見慣れたリビングだった。


 ……異質なダンジョンコアがある以外は。


「ねぇおにぃ。このダンジョンコアすっごい邪魔かも」

「だよなぁ。さっきはそこまで気にならんかったけど……思った以上にデケェ」

「どうする? さっきの場所にでも戻す?」

「いや、屋根裏にでも置いとこう」


 他人の家の屋根裏を覗こうとする変態なんてそう居ないだろう。

 さっきのダンジョンに置いといたらほんとに見つかってしまうかもしれないからな。


 ダンジョンコアを屋根裏部屋に転移し、ほっと一息。陽毬と一緒にソファに座りながらダンジョンの詳細を見てみる。


「あっ、おにぃ。これ見て?」

「ん? ほぉ、これは是非とっておきたいな……いやでも高けぇ」

「でもやっぱり情報は必要じゃない?」

「そりゃそうだけども、今は一応外に出ればネットは繋がるからな」


 陽毬が見せてきたのはダンジョン詳細の一部。マスター専用の便利機能の中にはダンジョンポイントを使って解放できるものがあるらしく、その中にはダンジョン詳細にテレビやネットの機能追加があった。


 しかもデフォルトでウイルス完全削除機能付き。そもそも元が機械じゃなくてダンジョンコアだからウイルスが入る余地が無いっぽいが。


 まぁ、ゲームとかにネットを繋げるのは無理っぽいが。そこはちゃんとダンジョン専用機材を買うしかなさそうだ。


 ちなみにお値段は1万DP。多分初期費用分で渡されている現在のDPの倍は掛かっている。

 ……これ、集めれるのか?


「ネット、動画……保存…………おにぃの寝顔……うんっ! おにぃ! 早くダンジョン改築しよっ! ポイント貯めなきゃだし!」

「おっ、おぅ……急に元気だな。分かった、じゃあまずは新しい入り口でも作らないとな」

「確かに。でもこの家に辿り着いて欲しく無い……」

「うーん、難しいな。まっ、とりあえず入り口を作る場所でも探すか」

「はいはいさ〜」


 陽毬と一緒に庭に出て、いつもお世話になるグークル先生のマップでダンジョンのある場所を表示する。


 確か、重要建築物のすぐ側にあるダンジョンは即破壊されるらしいし、大型ダンジョンで有名なダンジョンの近くにあるのも優先的に破壊されるらしいし……


 良い感じに大型ダンジョンから遠くて重要建築物が少ない所となると……千葉か。


 東京には大型ダンジョンがあるらしいし、他県も同様。唯一近場の県で大型ダンジョンが無いのは千葉で、ポツポツとちっちゃいダンジョンがあるだけらしい。


「んじゃ千葉まで通路を伸ばして——」

「あっ、待っておにぃ。普通の通路よりもこっちの方が良くない? ほら、これなら自転車とかも使えないだろうし」

「ほぅ、お主も中々悪よのぅ」

「ふっふっふ……そりゃ当然。私はおにぃの妹ですから。

 ……ってそんな事してる場合じゃないって! 明日学校なんだからね⁉︎」

「……そう言えばそうじゃん」


 ダンジョンのゴタゴタで忘れてたけど、そう言えばもう日曜日だった。明日学校で日中はダンジョンを弄れないとなると……今日中になんとか形になるまで持っていかないと……っ!


 まず、陽毬にお勧めされた方法で東京から千葉まで通路を繋げていく。

 ただ、普通の通路じゃない……繋ぐのは延々と続く階段だ。


 この階段、通路と言う簡単な造りと同じDP消費量で、値段はなんと1DP。

 確かにこんな階段を一つ二つ作ったところでダンジョンコアは守れないだろうけど、階段は重なれば重なるほど凶悪。


 階段がめんどくさくて二階を全然使わなくなった俺達だからこそ分かる……階段は怠い。

 しかもそれが数十キロは確実にある距離続くのだ。気が遠くなってしょうがないと思う。


 ……ただ、破格のDP消費量とは言え、距離が距離だ。これだけでひたすらに消費量が嵩んでしまって陽毬と共に頭を痛めるのであった。

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