家ごとダンジョンになったので兄妹でラスボスを務めます

冰鴉/ヒョウカ

通信が隔絶された世界

第1話 ダンジョンコア

「なぁ、兄者よ……これを見てどう思う?」

「ふむ、わが妹よ……確認の必要があると思うか?」

「だよねぇ。すごく、凄く──」


「「ダンジョンコアだ、これ」」


 俺達兄妹の前には青白い光を放っていて幻想的にすら見える球体が台座の上で浮いていた。そんな現実離れした物体は幻想でもなんでもなくそこに存在しており、触る事も出来る球体の名前は——


 ——【ダンジョンコア】


 確か数十年前ほどに突如現れたダンジョンと言う物の核で、これを壊せばダンジョンを破壊出来る為に稀に『○○ダンジョン破壊!』とかがニュースで流れていて、このダンジョンコアが映っていた。


 ダンジョンなんて放置すればダンジョン内の生物──魔物が溢れ出てしまうからこのダンジョンも破壊した方が良いんだろうけど……どうやら無理っぽい。


「ねぇ、おにぃ。これさぁ──」

「言うな妹よ……俺は今現実逃避をしたいんだ」

「いやでもさ、これは確実に──」

「分かってるっ! これがダンジョンの管理画面って事くらい……!」


 俺達兄妹それぞれの目の前には半透明のウィンドウらしきものが浮かんでいた。

 自身のステータスとかもこうやって表示されるけども、明らかにこれは自分のステータスじゃないのは見て分かる。


「どうしてこうなった……」

「……運が悪かったから。かなぁ?」

「悪すぎるにも程があるでしょうが……っ!」


 本当にどうしてこうなった……そう思うながらもこうなる前の事を思い出すのだった。


 ▲▽▲


「あれ? おにぃって今日友達の所に行くんじゃなかったの?」

「その予定だったんだけど用事が入ったらしいんだよね」

「あちゃー……ならこのゲーム手伝ってくれない? こいつ強すぎて私じゃ倒せないんだよね」

「んー、まぁ良いけど。どいつが倒せないんだ——うわっ、クッソだるい奴じゃん」


 俺達、日向兄妹はかなり仲が良い。と言うよりも仲良くないと生きていけなかったとも言える。


 ある程度幼かった頃に俺達の両親は他界しており、親戚の家に引き取られたのだが、色々あって今は妹の陽毬と二人暮らしをしている。


 ある程度自由に使える程度の生活費等は送られてくるけれども、親戚とは現在関わりを経っているから家の事とかはほぼほぼ俺たち二人でやるしかなく、不仲になんてなる暇が無かったのだ。


 家は今は亡き両親と住んでた一軒家だから中々広く、掃除の手もが行き届いてない場所もある。

 とは言え、まだまだ将来に色々ありそうな不安があるとは言っても今は平和。今日も今日とて陽毬と一緒にゲームでもしよう……そう思った時に事件は起こった。


『ドゴオオォォォォォン!!!』


「うおっ! なんの音だ⁉︎ 爆発?」

「はぁ、なんなの? せっかくおにぃが手伝ってくれるっての、に——えっ、地震⁉︎ ちょっ、おにぃ! 早く机の下に来て!」


 唐突に近所かは分からないが、かなり近い場所で爆発音が鳴り響き、続けて地震が起こってしまった。

 俺と陽毬は二人で身体を寄せ合って机の下に籠り、地震が終わるまで待っているのだが……中々に長い。


 震度的には大体4かそこら辺くらいの筈なのに、かれこれ1分近くは揺れている。かなり異常だと分かるし、こうも揺れ続けると恐怖心が湧き上がってくる。


 陽毬もこうも長く揺れるのは怖かったのか、俺も強く抱きついてくるし、俺自身も恐怖を紛らわす為に陽毬を強く抱きしめている。


 そうやってお互いを守り合う様に抱きしめあってから大体30秒程経って、ようやく地震がおさまった。


「陽毬、大丈夫か?」

「う、うん……なんとか。おにぃは?」

「俺は大丈夫。それよりも一体何が……とりあえずニュース見ないと」

「えっと、私はネットを……」

「無理しなくて良いんだぞ? 一旦落ち着こう」


 机の下から這い出てテレビをつけてみる……が、全く映らない。……なんだこれ、さっきの地震でアンテナかなにかが故障でもしたのか?


「お、おにぃ。ネット繋がんない……それどころか電話も。

 おにぃのスマホにも繋がんない……」

「は、はぁ⁉︎ こんな近くに居るのに繋がらないって——」


『おかけになった電話番号は——』


「……ね?」

「マジ、だな……とりあえず外に出てみるか?」

「そうだね、あれだけの地震なら近所の人も気づいてるだろうし……」


 俺と陽毬は手を繋いで外に出てみるが……外は特に何も起きてなかった。

 正に平穏そのもの。散歩してるおばちゃんが手を繋いでいる俺達を見て「あら、仲が良いわね〜」って言ってる程に平和だった。


「……どう言うことなの」

「わ、分からん。分からんが一旦家の中に戻るか?」

「そうしたい……んだけど、外だとネットが繋がってる。ほら」

「ほんとだ。でもネット上でもさっきの地震で騒がれてないな」

「うん。本当に意味がわからな——あっ、ネットが繋がらなくなった」


 家の中に戻ろうと陽毬が玄関に入った瞬間、ネットが切れたらしい。

 これには相当不思議に思ったらしく、一旦外に出てみると「あっ、繋がった」と言って頭の上に「?」を浮かべた。


「これ……俺達の家の中だと何も繋がらなくなってるのか?」

「そうっぽい、かも? こんな現象聞いた事ないんだけど」

「霊障……とか?」

「ちょっとおにぃ、怖い事言わないでよ。多分別で原因がある筈だって」

「んじゃその原因を探さないとな。流石にネットも電波も使えないのはやばいし」

「手分けして探したいけど……おにぃ、ちょっと無理かも」


 やはりあの地震は相当怖かったらしい。陽毬の手は少し震えてるし、俺の手を握る力もまぁ強い。


「別に時間が無いわけじゃないんだしゆっくり探せば良いんだよ。ほら、行こう」

「ありがと、おにぃ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る