第2話 処刑機関

経営者から渡された資料を簡単に読み終えた凡人は生徒会室に置かれているソファに横になりながらゲームをしていた

「で?その仕事になんで俺が必要なんだ?」

「資料をちゃんと読んだか?今回の仕事は色々とずれている」

資料には今回の仕事の対象となる場所に時間と人物について書かれていた、その中に一つ気になる物が出ている

「護符ってなんだ?元々機関にある物か?」

「ふむ・・・私もあまり知らないが、自由人案件らしいな」

「・・・・アバズレバカ野郎の?」

「自由人に対して酷く・・・ないな、まともな反応だ」

経営者は凡人が持つ自由人の印象に対して何も言えないに等しかった

「処刑機関13人の役の一人、自由人・・・凡人と同じく、秀でた才能が無いと言われてるが、私達からしたら凡人とは別の意味で危険な存在だ、しかもその実態を誰もつかんでいない」

「ま、俺から言わせれば自由人の野郎はこっちの常識で図るべき存在じゃないって所だな、しかも能力を非常に高いと来た」

凡人はゲームを中断して経営者に向き直る、経営者も飲み物のお代わりを彼に注いでその話に耳を傾ける

「お前らの才能をレベルで表現するなら、最高で100として一番下でも80くらいはある」

「君の才能がか?」

「俺はランク外だよ」

紅茶を飲みながらも吐き捨てる、実際の所凡人はある所を除いてほとんど一般人と変わりはないので、自分が高レベルと同じに扱う事は無い、そこは経営者もわかってはいるが、それでも凡人は目の付け所は天才たちとほとんど同じであった。

「俺みたいな雑魚が頑張って八時間で終わらせる仕事をお前たちは二時間で終わらせる」

「単純計算で四倍か」

「ああ、大体の差はそのくらいだが、自由人はその計算が当てはまらない。直線に進んでくれと言われても曲線に進んだ挙句に地上絵を作る勢いだぞ?」

「流石にそこまでいかないだろう」

と口では言っている経営者であるが、自由人の過去の行いを思い出してみれば現実に起こりそうで悪寒が出てきた、過去に自由人は凡人を使って太平洋にピラミッドを立てたり、宇宙でたこ焼きパーティーをしたり、豪華客船をロケットに改造したりとやりたい放題であった、しかもその犠牲が凡人であるため彼は自由人に本当に悪い印象しかなかった、その事を知っている経営者も自由人に対して悪い印象でしか語る事ができないような感じになっている

「自由人は何をしたいんだろうな」

「読んで字のごとくだ」

「自由か、処刑機関には本当に意味が不明な人物が多いな」

「お前が言うか?」

凡人はどこからか取り出したチョコバーを食べながらも資料に書かれている事を頭に入れてはいるが

「護符については王の野郎に聞いといた方がいいだろう、万が一被害が大きい兵器の場合は俺達が全員で挑まないといけなくなる。まぁ俺は真っ先に死ぬがな!それと同時に今回のメンバーを選定し直せ」

「なぜだ?私こと経営者に教育者と凡人だぞ?」

「だからだよ!今回の任務は単純に言えば「護符」の破壊に組織の壊滅、この二つだ!戦闘能力も他の能力も最底辺の俺を連れてくな!俺は何もできないぞ?それこそあいつらの思うつぼだ」

凡人はそこまで言うと生徒会室を出ていく、時計を見れば既にホームルームが始まる時間であった、経営者は彼が使ったカップを片付けて、それを洗おうとするが

「ん?どう使うんだっけ?」

彼女は食器の洗浄方法が分からなかった、普段なら凡人がやってくれるので気にしてないが彼がいないときは基本的にそのままである。経営者は食器洗いを諦めて一人生徒会室のソファに倒れこむ、その眼は年相応の目をしていた

「凡人・・・君は本当に私達を過信しすぎだ」

処刑機関はその性質上、年齢層が高く見られているがその中で経営者と凡人は日本の高校生であった、その為彼女も機関内では年齢が上の人物が多いため委縮している。しかし凡人は相手が年上であろうと先ほどのようにストレートに悪口を言える

「私は君のように誰かにいう事も出来ないよ、今回の仕事も本当は断りたかった」

経営者は王の考えが分からないだけでなく何かを断る事ができない性格なので凡人にしか強く出ることが無い、しかも生徒会会長という役割も押し付けられたので望んでいる役職ではなかった、その為一人でしか愚痴をこぼせなかった

「教育者様は気づいてくれているが、与えられた役割だからか」

自分の弱さを嘆いている一方で凡人は誰にも直球で伝える、経営者は憧れを持っていた

「天才と言われてもできない事もある、凡人…君は私たちの憧れでもあるんだ」


ーー

「ふむ、どうやら彼女は君に随分と憧れを抱いているね」

「しらねぇよ」

生徒会室の前には二人の人物がいた一人は凡人であり、もう一人は橋で出会った教育者と呼ばれる女性であった。

「まだ入らない方がいいかな?」

「別にいいだろ、そのまま入っても」

「君は女性の事をもう少し考えたらどうだい?機関の基地でも君はあんまり人の事を考えないだろう?」

「そこは何とかしたいと思ったりするが、基本的に暗殺者と開発者が俺で遊ぶんだよ!そんなことをされていたら人間も嫌いになるわ」

「人間嫌いは元々だろう?でもそろそろ入らないとね」

教育者は何回かノックをした後に生徒会室に入る、経営者は驚いていたが直ぐに三人分のお茶を入れようとするが、それを凡人が止める

「なんで食器を洗わないんだよ!暗殺者程には言わないがせめて水にはつけてくれ」

凡人に怒られていた、今更だがこの生徒会室には小さなキッチンのような物があるのでちょっとした物が作れるのである、その為生徒会室にはいくつかの食器や食料が常備されているので凡人と経営者はそこで食事をしながら作業をしている、凡人が三人分の紅茶を用意してソファの真ん中を陣取る

「そういえば、凡人は大丈夫なのか?」

「教師から今日から赴任してきた教師の案内を頼まれたんだよ、しかも教育者と成れば俺かお前だろ?けれど経営者は生徒会室で作業をしているから俺になったんだよ」

白羽の矢だと凡人はこぼしているが、教育者は彼がどこにも行かずに生徒会室の前でサボっていたのを知っていたが敢えて言わずに彼が淹れた紅茶を飲んだが

「君の淹れる紅茶は普通に美味しいな、暗殺者のおかげか?」

「さてね、暗殺者の腕は俺じゃ超えられないよ、てか教育者?何を持っているんだ」

「ああこれか」

教育者は経営者と凡人の前に赤い封筒に入っている書類を取り出した、それは一見何が書いているか分からないが、処刑機関のメンバーだけにわかる暗号が書かれていた。

 「任務の変更?」

経営者が顔をゆがませながらも内容を見ていくとかなりの内容が変更になっていた

「これはまずいな、凡人?大丈夫か?」

内容を見た凡人は怒りと不満を混ぜた表情をしながら生徒会室にあるお菓子を食べながら紅茶を飲んでいた、それを見た教育者は元々の内容も随分と凡人に理不尽な内容であったと理解した

「あえて説明をするがいいか?」

「はい、教育者さん」

「(不満と怒りを合わせて)どうぞ」

教育者はその内容を淡々と述べていく、教育者が話を進めていくにつれて経営者の表情は蒼白していき、凡人は怒りが減って困惑していった

「そして最後に・・この任務には暗殺者も担当させる」

「は?」

「ふざけてんのか!なんであの女も出てくるんだ?それに内容もおかしくなってるだろ!」

凡人の叫びはおかしくないと教育者は理解していた、勿論教育者も元の内容を知っているからこそ納得であった、元々の内容としては「日本の埼玉県に違法の護符製造と所有者が発見される、この対象をSとして教育者・経営者・凡人の三名で処刑せよ」という内容になっていたのだが

「確かに変だな、私と凡人が確認した内容はそこまでの物ではなかったです」

「それが今回は嫌にシンプルだな」

「そこは私も王に確認したのだが、どうやら製造場所自体は既にないらしい」

「・・・なるほど」

凡人はそれだけで任務の変更を察してしまった

「凡人?」

「護符の製造は無いと言ったな?」

「ああ」

「じゃあここからは俺の予想を含めて言うぞ?まず製造場所を壊したのは所有者で間違いないだろう、そして所有者の正体は高校生くらいの奴だな」

凡人の言葉に経営者は疑問を浮かべていたが、教育者は理解した、教育者が言った内容は「護符の所有者を処刑せよ、場所はK越の駅近く」という物であり、他にも注釈としていくつかを話した、その中で犠牲になった物達も出てきた

「犠牲になった者は男子高校生が二名と女子高生が三名・・・この五名の共通点は知ってるね?経営者」

「はい、確か同じ中学で同じ部活であると・・・まさか」

「ああ、処刑対象も同じ中学で同じ部活のメンバーであると思われる」

「しかも犠牲になっているのは女子生徒が多いのも今回のみそだな」

凡人はどこからか取り出したホワイトボードで詳細に書きながら説明をしていった、曰く高校生が犠牲になる理由としてはいくつか考えられるが、中でも彼は「いじめ」を理由として復讐の為に事を犯したと考えた

「でもそれだけでは理由としては弱いのでは?」

「いや十分な理由になるよ、小学生や中学生とは違って高校生のいじめは完全に一線を超える」

「まさにそれが復讐の理由になる、良くも悪くも高校生は大人と子供の境目にいるんだ、暴力・恐喝・監禁・強姦・脅迫思いつくだけでも五個は出てくる。それに命を軽視している事だけでなく教師もいじめを見て観ぬふりをするからな」

そこまで言うと凡人は教育者にバトンを渡す、教育者はパソコンを取り出していくつかのグラフや表を出してくる、そこには年代別のいじめの発生件数と自殺者の数であった中学生ではいじめによる不登校が多くなっているが、高校生からは

「自殺が増えている、不登校もかなりの数だな」

「まぁでも、いじめの内容も気になるな」

「気になるのか?」

「お前ら天才と凡才を一緒にするな、たいがいの奴らは耐え切れずに命を絶つか不登校になる・・教育者!被害者が出た学校は調べてるのか?」

「勿論!都会とは言えないが、それなりに発展している所だ」

教育者は地図を広げるとその学校をマークして被害者が出た場所もマークした、それによると被害者はいずれも公園であった

「子供の遊び場に殺人か?」

「らしいな、教育者さん犯行に使われた道具は?」

「ふむ、ここにある資料だとそれが護符ではないかと」

凡人と経営者は同時に疑問を持ちだした、二人が想像してたのはお守りのような物であるが、教育者の話を聞いているとまるで道具のような物を想像できる

「これについては支配人が調べたのだから正しいと思うが」

「どう見る経営者?俺は間違いはないと思うぜ」

「(支配人様の情報なら間違いはなさそうだが」

経営者は情報分野においては支配人を信用していた、経営者の役として支配人との合同の仕事は多くその手腕も見事な物であった、何より支配人の前職は「外交官」である。そのため情報や交渉はお手の物であり、しかも多くの国でその手腕を認められていた

「(それほどの人だ情報に間違いはないが、なぜ暗殺者様も?)

経営者はそのまま数分の思考を重ねた後に二人に向き直り、指示を出した

「今回の任務はこのまま続行とはいかなくなった、その為暗殺者様の到着までの間に我々はできる事をしよう、教育者!暗殺者様の到着は?」

「早くて三日後だ、遅くとも四日後には着くだろう」

「よし!凡人は暗殺者様が日本に到着後に直ぐに迎えに行くようにそれまでは今回の事件があった高校を調べ上げろ、教育者は現場に向かい犯行に使われた凶器と時刻を割り出せ、私は警察との会談を行う、今回は警察も見逃さないだろうな」

「経営者質問だ、高校を調べ上げて犯人と思わしき人物を見つけたら?殺っていいのか?」

「いや、容疑者は最低でも三人にしといてくれ、相手が攻撃したときは殺さないようにな」

「(明後日の方を向いて)了解」

この男のやる気はどこに行くのだろうか


ーー

「さてと、どうするか」

生徒会室を出た凡人は直ぐに図書室に来ていた、勿論制服から学校を割り出すためであるが、いくら一つの県に絞れると言っても学校はかなりの数があるので凡人はまず埼玉県の学校で高校だけに絞って調べていた、ネットを使えば簡単だが

「もし情報系の奴がいればそこからハッカーにとかか、そんなことあるのか?」

凡人は事件があった学校の制服の写真をもらったので調べる事自体は問題ないのだが、いかんせん膨大な量なので凡人はやる気が起きなかった

「にしても機関で調べる事をしてくれないのかよ、まぁ凡人である俺にはピッタリだろうけどな」

凡人はいくつかの本を読んだ後に候補となる学校を三つに絞ることができたが、それ以上は困難であった

「これ以上は難しいな、そもそも送られた写真が白黒だし」

何より、被害にあった高校生は制服であっても原型をとどめていない物が多かった

「(可能性があるとすれば公園周辺の高校になるけど、例え高校があったとしてもそれが該当するとは思えない)」

処刑機関では底辺と言われてるが凡人は機関のメンバーから手ほどきを受けているため実はそこそこ優秀なのである(しかし定期テストは下から三番目)なのでそれなりの知識と考えはあるので今回のように「周辺高校が犯人では」という事でも違う可能性が高いと気づいている、その為に現状を打破するため凡人はある場所に連絡を取る事にした

「・・・出てくれるかな」

凡人は図書管理の教師にばれないように隅の所で電話をかける、すると数分しない内に電話がつながった

「なんだ?凡人」

「久しぶりだな、攻略者」

凡人は攻略者と呼ばれる人物に電話をかけていた、攻略者と言うのは処刑機関の13人の役の一人である支配人の部下に当たる人であった

「調べて欲しい事があってな」

「支配人様に確認してきますか?」

「いや、支配人には言わなくていいよ、で内容だけど」

「はい、メモの準備はできています」

「処刑機関の戦型資料の検索、今回俺が担当している任務に対しての該当高校を頼む」

「戦型資料ですか?なぜ」

「素直に教えろって言っても教えてくれないだろ?だったら資料から調べる方が早い」

攻略者は承諾して直ぐに行動を開始した、凡人は通話を切り直ぐにその場から離れた、

「頼むぜ攻略者」

凡人は一人学校の屋上に向かい、これからの事を考えながら昼寝をした





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