氷上で暮らす猫と攻略対象
藍無
第1話 氷上の猫!?
え?何?
ここどこ?
そう思い、私はあたりを見回す。
あたり一面は厚い氷で覆われていた。
そして、視界の端の方にやっと陸がある。
私は、陸の方へとりあえず向かってみることにした。
ぺたぺたと歩き出す。
四本の足で。
――ん?
なんかやけに視界が低くないか?
それに、四本も足がある?
どういうことだ?
私は訳が分からなくなり、走り出した。
すると、視界の端の方にある陸に人が居るのが見えた。
とりあえず私はその人の方へ向かってみる。
助けて!視界が低いし、四本も足があるの!
私はそうその人に言おうと、声を出した。
すると、
「にゃー!!」
――え?
なんか、猫の声が近くから聞こえたんだけど?
そう思い、私はあたりを見回す。
どこに猫がいるのだろうか?
あたりには、厚い氷におおわれた湖のようなところと陸にいる人しか存在しない。
あれぇ?
「ん?なんだ、猫か。」
そう言って、その男の人は私の頭を撫でた。
え?
いま、この日と私の事猫って言った?
嘘でしょ?
私今、猫なの_?
でも、そうなんだとしたら全て納得がいく。
――っていうか、この人どこかで見たことがある気がする。
次の瞬間、頭が痛んだ。
痛みに思わず頭をかかえそうになる。(もちろん猫だから無理だけど)
「ん?猫、どうした?」
その人は不思議そうな顔でこちらを見ている。
――乙女ゲーム、高校、前世。
トラック、死亡、転生。
あ、そうだ。
私、トラックにひかれたんだっけ?
それで、気が付いたらこの世界にいた、みたいな?
というか、目の前にいるのは乙女ゲームの負けヒーローのカイン、だよね?
「にゃ、にゃあ!?」
ってことはわたし、乙女ゲームの世界に転生してる!?
「にゃ、にゃああ。」
しかも、その世界の猫(?)に。
いや、まだ猫だと決めつけるのは早い。
猫に見えるのかもしれないけど、この世界には魔法とかあるし、猫じゃない可能性だって少しはあるはずだ。少しは。
「なんだ?変な鳴き声を出して。もしかして、腹減ってんのか?」
そう言って、カインはポケットの中から小魚をほしたものらしきものを取り出し、私の方へ投げた。どうやら、おなかがすいていると勘違いされたらしい。
違うんだけど、ここは何もないみたいだし野垂れ死にしないように食べておくべきだよね。ゲームで見てた限りだと結構いいキャラで猫に毒入りのものを分け与えるほど悪い奴じゃないだろう。そう思い、私は警戒せずにその小魚を食べた。
「にゃ!?」
なんだこれは?
何でこんなにもおいしい?
「お前、変な鳴き声だなあ。普通の猫となんか違う。」
もしかして転生者なのではないか、と怪しまれている?
「にゃ、ニャーン。」
猫みたいな鳴き声って、こんな感じだろうか?
「――何か不自然。まあ、いいか。」
そう言って、ポケットをあさり、他にも持っていたクッキーや飲み物などを分け与えてくれた。いい奴だ。負けヒーローなのが可哀想なくらい。
本当に助けてあげたいなあ。
いや、でも私はあの乙女ゲームの中でトゥルーエンドで一緒になるルファス王子が推しだからなあ。このくらいでなびくわけにはいかない。
その代わりと言ってはなんだけど、こいつがふられたら励ましてあげよう。
「なあ、猫。好きなやつとはどう話せばいい_?」
うわああ。
猫に聞いてどうすんのよ、その質問。
っていうか普通に話せばいいじゃん。私今、猫だよ?話せないんだよ?
「にゃ、にゃん。」
そう言って私はとりあえずカインの手のひらに頭をこすりつけた。
「――まあ、猫だから答えられないか。」
そう言って、カインは優しく私を撫でる。
手があったかい。
ほかほかする。
次の瞬間急に眠気が襲ってくる。
私の肉球とか自分で見た感じ、子猫なみたいだから食後に眠くなってしまうのは無理はないのかもしれない。
私の意識はそこで途絶えた。
――――
「にゃんころ、また来るからな。」
俺はその場にころん、と横たわって眠っている猫にそう言ってその場を去ろうとした。しかし、目の前の湖の氷の先の方に、氷の小屋のようなものがあるのが見えた。
「あれは、一体なんだ_?」
少し気になり、俺はその方向に歩こうとする。
「カインー!」
背後から、好きな人_ミオの声がする。
俺は振り返り、
「今行くー!」
と言った。
あの氷の小屋についてはまた明日見に行くか。
そう思い、走ってミオの方へ向かった。
氷上で暮らす猫と攻略対象 藍無 @270
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