明日への姿

ジャイロ

第1話

「あぁーかったるい」


毎日毎日、仕事仕事。

仕事の休憩中に公園のベンチで

空見て小言を言ってる俺。

「仕事辞めたいなぁ、、、」

午後からまた謝りに行くなんて憂鬱しかない。

ぼんやりしながらコンビニ弁当を食べていると


「ん、、、?なんだあれ、、、⁉︎」

ふと顔を目の前のベンチに向けると

何やら小さい人形?みたいな物が動いている。

目を擦りもう一度良く見てみるが

間違いなく人の形。

「やばい、だいぶ疲れが溜まって幻覚まで見えてきたかも。。。」そんなを独り言まで出てしまった。


ウソかと思うかもしれない。

でも、間違いない。人だ!

さらには

「、、、ん⁉︎おじさん⁉︎、、、だよな?

まさか小さいおじさん⁉︎」

よく噂に聞く小さいおじさん。

実物なんてもちろん見た事がない。

でも、確実にそれはおじさんだった。


おじさんは

その男性と向かいあいでちっちゃく座って

同じようにお弁当を食べている。

男性と違うのはコンビニ弁当ではなく

愛妻弁当。

「嘘だろ、結婚してんのかよ!」

男性は心の中で悔しがった。

こっちは彼女さえもいないわと

おじさんに嫉妬してしまった。


すると、おじさんはお弁当を途中で止め

電話をかけ初めた。

頭をペコペコ下げながら電話をしている。

声は聞こえないが

なんだか相手先に謝っているような。

そんな雰囲気だった。

電話が終わると小さな小さなパソコンを広げ

また電話をしている。


「なんだか忙しいな、小さいおじさん。。。」

噂に聞いていた小さいおじさんは

見たらラッキーみたいな存在だと思っていた。

でも、今目の前にいるおじさんは

自分を見てるかのように忙しい日々を送っているようにも思えた。


パソコンを閉じてすぐに立ち上がるおじさん。

すると、どうやらこちらに気付いたようで

目があった。

男性はヤバいと思ったが

小さいおじさんは男性に向かって軽く会釈をした。

男性も慌てた様子で頭を下げる。


「いや、俺はおじさんに何やってんだ。」


最初はそう思った。

しかし、

なんだかすごい親近感を感じた。

そして、やる気も出てきた。


同じ毎日働くサラリーマンとして!


いや、

働いている人だけじゃない、

生きている限り楽しい事だけじゃない。

苦しい時もある。

みんな頑張ってるんだ。

それは小さいおじさんもそうだった。


ベンチを立った男性の背中は

さっきとは違う。

背筋が伸びた誇らしい姿だった。

その姿を小さいおじさんも見ていたことだろう。




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明日への姿 ジャイロ @GYRO95

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