第19話 これもラノベで読んだとおりだ!
無事冒険者登録が完了した私たち。パーティー名は『コメット』。
続いて、受付嬢のキャンちゃんさんから説明を受けることに。
他に二つの椅子も用意され、リーシャーとセルティーア嬢もそれぞれ腰を下ろす。
これから大切な話をするのだし、立ち聞きというわけにもいかないのだろう。
「それでは、こちらから冒険者としての説明を改めてさせていただきますね。
冒険者にはそれぞれランクがあります。下からDランク、Cランク、Bランク、Aランク。そして一番上がSランクとなっています」
おぉ、これもラノベで読んだとおりだ!
冒険者にはランクがあって、アルファベットで表されている。でも一番上はなぜかSっていう。
実際にこの世界の本でも読んだことはある。けれど、実際に説明を受けるのとではまた違った印象があるのだ。
「冒険者登録をされたばかりの方は、皆揃ってDランクから始めていただくことになります。
ランクを上げる方法は、主に多くの依頼を受けることでギルドに貢献することです。受けることのできる依頼はランクによって違いがあり、自分のランクよりも下のランクの依頼を受けることはできますが、逆に上のランクの依頼を受けることはできません」
先ほど見せた、めちゃくちゃ強い女の子といった印象は消え。まるで大人の女性のように落ち着いている。
見た目が子供のようだから、ギャップがすごいっていうか。
そんな子がこうして冒険者の説明をしてくれるのだから、きちんと聞かないとな。
冒険者とは危険と隣り合わせの職業なのだから。話半分に聞いていたらとんでもないことになってしまうってもんだよ。
「ランクを上げ、より高難度の依頼を受け成功すれば、もらえる報酬も増えます、ただし、高難度になればそれだけ危険も増えますのでご注意ください。
低難度の依頼ですと……主に薬草採取、武具を作るための素材集め、街のゴミ掃除など、多岐に渡ります」
ペラペラ、と手元の資料を巡りながら、キャンちゃんさんは慣れたように話していく。
こういった説明をするのは、当然初めてではないのだろう。
それにしても、私たちは初めて受ける説明だけど、受付の人たちはこの説明をもう何十何百と行ってきているのだろう。すごいよなぁ。
「難度が上がれば、モンスター討伐の依頼が増えていきます。モンスターを倒すには、その難易度に適した武具や身体能力が必要になってきますので、そういった自身の強化もうまく行ってください。
また、ギルド受付では冒険者のサポートも行っていますので、なにかご不明な点があれば、遠慮なくお聞きください」
「はい」
「それと、ギルド内の争いは禁止です。本当は冒険者同士でも争いは禁止したいところなんですが、冒険者同士で競い合い結果として成果が上がっている例があるので……」
そこで、キャンちゃんさんは顔をしかめる。
多分、さっきのウゼーノのことを思いだしているのだろう。
「とはいえ、必要以上に他の冒険者に突っかかることはやめていただきたいのが本音です。まして一般の方になんて論外。冒険者というそのものを誤解されてしまいかねないので」
……確かに。ウゼーノは新人冒険者に突っかかっていたようだったけど、あれが相手が一般の人だったらと思うと。
ウゼーノのせいで、冒険者そのものが「冒険者ってこんなんなのか」と誤解されかねない。
「では、先ほどの方はなぜ冒険者のままなのですか?」
そこでリーシャーが、口を開いた。ウゼーノの素行の悪さを目にし、実際に怒りをあらわにしていたからだ。
キャンちゃんさんは一呼吸置いて答える。
「……ウゼーノさんはあれでも高ランクの冒険者で、人手が足りない現状だと切り捨てにくいのが一つ。それと、絡むとはいっても新人冒険者くらいなので他に被害が報告されていないのが一つ……」
とはいえ、それに思うところはあるのだろう。キャンちゃんさんは軽くため息を漏らしながら、「ちゃんと考えないといけませんね」と頭を抱えていた。
「高ランク冒険者になるには、依頼をこなすことの他に人柄も優先されます。ウゼーノさんは、以前はあのような方ではなかったのですが……」
と、困ったようにつぶやくのだった。
あれでも高ランク冒険者なのか。これも、冒険者あるあるだ。
彼に突っかかれ、そして防いだことでリーシャーや一緒にいた私たちも、注目を浴びることになっただろう。
「それと、先ほど危険が増えると言っていましたが……」
続けてリーシャーは、手を上げ質問をする。
先ほど依頼の難度が上がれば、危険も増えると言っていたあれだ。
それを受け、キャンちゃんさんはこくりとうなずいた。
「はい、モンスター討伐……場合によっては、指名手配犯の確保など、危険に及ぶ依頼もあります。冒険者として名を挙げたい方、報酬を多く貰いたい方はそれらを受けることが多いのですが……冒険者には、命の保証がありません。冒険者の方へのサポートはできても、命の保証まではこちらではどうとも。
ですので……はっきり言わせてもらうと、自己責任といった形になります」
キャンちゃんさんは、しっかりと話す。言いにくいことだろうに、しっかりと。
それを受けて、リーシャーがめちゃくちゃ私を見てきているのを……視線を感じる。
そんな危険なことはしない。冒険者になることは認めても、危ないことなどさせられない……
そう言っているかのようだった。
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