第16話 ナリーの過去・②
「やだ!私もお兄様たちみたいに剣術を習いたい!」
「ナリー、みっともないわよ。ルジャンドル家の娘が剣を持つなんて」
「だって、政治のお勉強だけじゃつまんないもん」
「はぁ、あなたって子は」
「貴族らしくない。やはり、呪われた子ね」
「あっ!お姉ちゃんまたそれ言った。私は呪われてなんかないよ!」
みんな私のステータスを見て気味悪がる。呪われた子という言葉をお父様がぽろっとつぶやいてから、お姉ちゃんたちはみんな面白がって私のことをそう呼ぶ。お母様も私に興味がないのか、最近は注意しようとすらしない。それどころか、私の<判定>スキルを怖がって、みんな、みんな、私から離れていく。
しかしある日突然、お父様が剣を握らせてくれた。
「アーウィン、エドワード。ナリーに剣術を教えてあげなさい」
「やった!ありがとう、お父様!」
その日から毎日のようにお兄様たちに稽古をつけてもらった。しかし、いくら練習しても剣術は全く身につかなかった。その後も目に入る武器はどんどん取り入れようとしてみた。しかし、どれも結果は同じだった。
「ナリー。お前はもしかしたら魔法の方が向いているかもな。明日から専属の先生を呼べるが、どうする?」
「魔法......、うん!やってみる!」
「お父様、ナリーだけずるいです」
「そうよ、どうしてこの子が特別なのよ」
「いいんだ。ナリーはこちらの方が向いているんだ」
お父様の言う通り、私は本当に魔法に向いていた。たった数年で5属性の魔法を身に着けることができた。特に炎属性と光属性の魔法は私に誂え向きであった。
「お父様、私、冒険者になって旅をしたいんです。もっと外の世界について知りたいんです」
「うむ、今の実力なら心配無用だろう。冒険者になることを許可する」
「あ、ありがとうございます!」
「ただし、冒険者になるからには、今後ルジャンドルの名を名乗ることを禁ずる。冒険者など、高貴なルジャンドル家にはふさわしくない。それくらい、わかっているな」
「......はい、承知しています」
「よろしい」
ナリーはあまり躊躇なくそういうと、「では!」と言いながら大きなバッグを背負って屋敷から出ていく。
「アルフォンス様、本当にこれでいいのですか?」
「仕方がない。ルジャンドル家にあのような呪いはふさわしくない」
「それでわざわざ冒険者になるように」
「あぁ、幸いナリーも望んでいたことだ」
私は10年以上あの呪いの解除を試みてきたが、全く成果はなかった。ルジャンドル家に彼女をこれ以上いさせることはできないが、外の世界ならきっと、彼女を受け入れてくれる場所がどこかにある。
「すまないな、ナリー」
◇◇
「そんなことがあったのか」
ナリーがなぜ自分のステータスにコンプレックスを抱いているのか、気づけば昼になるまで彼女の話を聞いていた。
「はい、ルジャンドル家でありのままの私を受け入れてくれたのはお父様だけでした」
「そうだったのか」
気味が悪い、呪われた子......。確かに、いい感じがしない。私がナリーのステータスを見たと知ったとき、私からも嫌われているのではないかと心配になったのだろう。
「にしても、ナリーは貴族だったのか」
「2年前までは、ですね。この町に来て冒険者登録をしてから、その名前はもう名乗っていません。受付のルーシーにもステータスウィンドウを見せたときに、そう説明しました」
ナリーの言うルーシーというのは、あまり印象が良くないカウンターのお姉さんのことだろう。どうやらこの世界では貴族が冒険者をやるのは変なことらしい。そもそも、私には貴族とはどういうものなのかがいまいちピンとこないのだが。
「だから嬉しいんです、私のステータスのことを知っても受け入れてる人がいて。どうですか、もしよかったら私とパーティーを組んでくれませんか?」
パーティーか。そういえばいつかほしいと思っていたな。確かに彼女は魔法特化な上、バッググラウンド的に私のスキルの効果を知っても怖がったり悪用したりする心配もない。こちらとしてもかなり好条件だ。
「こちらこそ、ちょうどパーティーを組む相手を探していたところだ」
「よかったー!じゃぁ、これからよろしくお願いします、カズタカさん」
「あぁ。それと、私のことはカズタカでいい。あるいは」
一瞬変なことが頭によぎる。
「いや、何でもない。カズタカで頼む。それに、パーティーである以上敬語も必要ないからな」
「ふふっ、やっぱり変な人だね。わかったよ、カズタカ」
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