第25話 もしかしたら――素を見せれる――何?

 現状学園最上階にて息切れしている俺。

 この身体の最大の欠点。

 スタミナがない。

 このままではダメな気がする。

 しばらく歩き続け。ちょっと早歩きして階段上ってこのざまだ。

 今襲われたら何の反撃も出来ないだろう。

 って、なんでこんなことになったのか。


「――おい。良く焦げたハリネズミ」


 俺。もう飛鳥さんらしくとか。なんとなく大人しめの雰囲気。というのはこの時点で捨てた。

「――は、ハリネズミ?」

 息を整えたところで俺は良く焦げたハリネズミの前に立った。

 と言っても――見上げないといけないのだが――なんか敗北感……いや、圧だ圧。

 急に俺の態度が変わったからだろう。

 良く焦げたハリネズミが少しひいている。これはチャンスだ。

 一歩前へと足を踏み込む。

「こっちはな。平和に帰りたいんだ」

「――はぁ?」

 間抜けな返事をする良く焦げたハリネズミ――には触れず続ける。

「大丈夫言ってるだろ?頼むから変なことしないでくれるかな?」

「えっと――飛鳥さん?人変わった?いやこの前からなんとなく雰囲気が違ったというか――前はもっと静か――」

「知るか」

「あー、はい。記憶喪失――だっけ?」

「そうだよ。いろいろ大変なんだよ。で、もう平和に過ごしたいわけ。それなのに変なイレギュラーいらないわけ。わかった?はい。ハウス」

「はうす?」

「家に戻れって言ってるの」

「いや、ちょっと待て。飛鳥さんが記憶を失くしていろいろ大変なのはわかっているつもり――」

「わかってない」

「……ま、そうだと思う――でも。昨日掃除のあと飛鳥さんがずぶ濡れって――あれはどう見ても」

「関係ない。問題ない。おかえりください」

「飛鳥さん――頭打った?」

「誰かが付きまとって来るから何かの限界が壊れた気がする」

「――誰だそんな事したの。もしかしてそれが昨日飛鳥さんをずぶ濡れ――」

「今のお前だよ!」

 なんでそこで自分は関係ないと思った。

 どう考えても今お前に俺はしばらく追いかけられたよな?そして無駄に視線集めたよな?また何か起こったら面倒だろ?平和に過ごさせろよ。そしたら俺は飛鳥さんを自由にするから。って、何言ってるんだか俺。

 この良く焦げたハリネズミスタミナ切れさせられたおかしくなったみたいだ。

 まあそれに関しては仕方ない。

「俺!?」

「しかいないでしょ」

「いや、俺は心配――って、あー、もう飛鳥さん忘れているから言うか悩んだんだけどさ。前から飛鳥さんが仲間外れっていうのは俺知ってたの。っか、嫌がらせ受けてるの知ってたんだよ」

「だから?」

 そんな気はしていた。

 先週初めてこの良く焦げたハリネズミが前に立った時から何かあるとは思ってた。

 まあ予想通りっちゃ予想通り。

 そして飛鳥さんがもともとというのは下駄箱とかその他のことでわかってた。

 驚くことはなし。ということで――。

「だからじゃなくて、こういうのはちゃんと相談して――」

「必要ない。どうせ何も変わらない」

「飛鳥さん――記憶戻ってる?」

「戻ってない。でもこういうのは問題ない。経験してるから問題ない。こんな幼稚なレベル」

「――経験してるから――って、飛鳥さんなんかおかしなこと――」

「良く焦げたハリネズミのせいだよ」

「誰だよ俺」

「お前だ!」

 学園の最上階。

 人のいない食堂前で言い合う男女。

 幸いなのかこの時は本当に2人しかいなかったため。この2人のやり取りを他に知る者はいなかった。

「俺?って、とにかくまず機能の事」

「話戻さなくていいから。過去のことはほっておけば」

「いや、そんなんじゃ――」

「――また?そういえばなんかまだ知ってる事あるような言い方たまにあるよね?」

 この良く焦げたハリネズミ。多分だが飛鳥さんとの接点はあまりなかった――でも何かを見ていた。そして――まだ何か知ってる雰囲気がある――と、俺は思いもう一歩近付いてみる。

「いや――大したことは――」

「あるならとっとと話す。そして関わるな」

「なんでそうなる。って、このままだとまたあの時みたいな思い詰めた飛鳥さんになるって」

「思い詰めた?」

「そうだよ。あの日――飛鳥さんが倒れていたって騒ぎになる前。俺は見た。何も考えていないような目をした飛鳥さんを。あれは――何の光もなかった」

「――」

 あー、ちょっとわかったかもしれない。

 もしかすると、この良く焦げたハリネズミは、飛鳥さん。俺がこの身体に入る前。直前の様子を見ていたのか。って、なんか完全にこの良く焦げたハリネズミの話を信じると。飛鳥さんの心が折れて――ああなった。ように思えるのだが。そしたら俺がいたって?まあほんと――ってでもよ。ぶっちゃけ言うと。多分だけど。飛鳥さん。自殺――とかの行動はしていないと思うんだよな。

 いや、ホントそれは勘というか、俺の勝手な想像だが。

 俺なら――まあ即行動するだろうけど。飛鳥さんとして目を覚ました時。特に俺は大けがとかいうのもなかったし。あの寮母さんだ。

 何か行動を起こした生徒に対してあのように接する――事が出来る人もいるかもしれないが。それにしては自然と接してきたし今でも接してくれているので――何かしたというより。たまたまその時この飛鳥さんの身体に何かあって――今の俺がいる気がするんだが――違うのか?本当にたまたま無傷で死にぞこない――というのもあるかもだが。

 まあ変に考えるのはやめておくか。

「――飛鳥さん?」

 良く焦げたハリネズミが顔を覗き込んできた。

 近い。

 数歩下がる俺。

「いろいろわからないけど。とにかく今はそっとしておいてくれ。あんなの何の問題も――」

「ある言ってるだろうが!」

「……」

 怒られた。

 良く焦げたハリネズミがキレた――いや、そこまでキレたではないが――。

「飛鳥さんはもっと自分を大事にするべきだ!前から飛鳥さんのことは見ていたが。飛鳥さんに落ち度は一切ない。俺が証明する。多分あいつらが良いおもちゃと思ってるだけだ――証拠さえあれば突き出すんだが――」

 なんかちょっと強めの口調で言われた。

 というか、この良く焦げたハリネズミ。今サラッと飛鳥さんのことを見ていた。つまりストーカー行為あったのでは?

「とりあえず。監視やめてください。お巡りさん呼びます」

「いやいやなんでそうなる」

「だって、見てたんでしょ?」

「――あ」

「今気が付くんかい」

「いや、いやらしい目とかそういうのは――」

「男子による。女子生徒に対するストーカー行為。十分でしょ」

「いやいやなんか話がおかしな方に――とにかく俺は飛鳥さんを助けたい」

「なんでそこまで?」

「――今の飛鳥さんは知らないことだろうけど――俺は飛鳥さんに助けられたんだ」

「……」

 おっと、そんな事実が――飛鳥さん。めっちゃこの良く焦げたハリネズミと接点あったのか。

 いや、待てよ。こいつが勝手に思い込んでいる説もあるよな。

「一応確認するけど、どのようなことがおありで?」

「えっ?あーあれは入学式か。ちなみにだけど、俺県外から来たんだよ。だから知り合いとか0。そんな中でまあ初めはいろいろ俺も緊張していたわけよ」

「――そんな雰囲気はないけど」

 ちなみにまだ始まって数週間でしょ?それで今の地位いうか居場所が作れていれば十分では?などと俺が思っていると――。

「そんな時だよ。1人だけ大人な雰囲気の飛鳥さんを見たんだよ」

「……」

「周りの生徒が子供に見えるような落ち着き。オーラ。それを見せられた俺もああならないと――って思って、飛鳥さんが居たから今の俺がある」

「ちょっと待て」

「うん?」

「今何月だ?」

「――5月だな」

「入学式はいつある?」

「まあ4月だわな」

「まだ1か月だよな」

「だな」

「まあ他所は姿見て何か思うことはあったのかもだけどよ。ほとんど実力じゃね?というかやっぱり見ただけじゃん。話したことあるのかよ」

「先週くらいから?」

「――」

 それ俺じゃねえか。

 なんだろう。この良く焦げたハリネズミの中では超大人な女性?のように飛鳥さんが見えていたらしいが――なんだろうな。単にこいつの好みが元の飛鳥さんだったというか――まあ部屋の雰囲気とか見て荒れてることはないとは思ったが。

 どうなんだろうな。大人な雰囲気――ね。

 俺にはわからんが。ってか何を話してるんだ?俺たち。

「とにかく、ほぼ接点はないと」

「いや、だから俺は飛鳥さんを見て」

「一方通行じゃねえか!」

「――今話しているのは――」

「ノーカウント。ってかハリネズミと話しているとこっちもおかしくなりそう。なんだ。そうだ。部活。野球行かなくていいのか?」

「あれ?俺野球部って――言った?」

「知らん。見たから」

「まあ今日休み」

「だから追いかけまわされたか――じゃあ休みなら帰って休め」

「いや寮だからすぐ帰れるし――」

「えっ?」

 と、ここで俺は寮の仕組みを良く焦げたハリネズミに聞き知ったのだった。

 この良く焦げたハリネズミも同じ寮生。そして何故会わなかったか。こいつ単に朝から晩まで部活していたから。

 そして今日が久しぶりの完全休みだったらしい。

 って、部屋には来れないらしいが――接点が増えそうなんだが……と、俺が心配していると。

「ところで――なんで俺はさっきからハリネズミとか言われてるんだ?」

「――名前知らないから」

「――マジ?」

「マジ」

千鳥橋ちどりばしって言わなかった?」

「さあ?」

 良く焦げたハリネズミは。飛鳥さんをストーカーしていた千鳥橋。ということを知った俺だった。

「おい。今変な解釈したような顔したぞ」

「うわっ、キモっ、顔見ただけでわかるとか」

「思ってたのか!」

 なんで俺は良く焦げた千鳥橋――混ざったがいいが。

 放課後に千鳥橋と話しているのだろうか。

 そういえば俺今女子だったよな。つまり――女子生徒と男子生徒が話し込んでいる。それも人気のないところで――うん。誰かに見られると面倒な気がするな。

  

 なお、その後も千鳥橋がしつこかったためしばらく俺は捕まり――その後何とか千鳥橋と別れ部屋に戻った頃には疲れてぶっ倒れたのだった。

 あと、ほぼ無理矢理。連絡先交換させられた――なんなんだあの良く焦げた千鳥橋。

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