第23話 この男。俺(飛鳥さん)に興味あり?

 ちょっと雲があるが。それでもほぼ晴天。

 そして海の近くだからだろう。今日は潮風を感じながら今日こそ静かにパンを食べようとしたら。良く焦げたハリネズミがやって来た。

 なかなか完璧なランチムードが出来ていたのに……。

 もちろんだが俺は呼んだ覚えもない。というか未だにハリネズミとしか言えない。名前――知らぬ。覚えてない。 

 何故来たのか。そもそもどうしてこことわかったのか――やはりこいつストーカー。または黒幕説――って、多分単純に俺(飛鳥さん)の心配――というのか。まあ何か考えての行動ではなく。普通に見つけた。だからダッシュでやって来たと思われる。

 というか昨日も邪魔されたので昨日の記憶がフラッシュバックする。


(あー、関わりたくない――)


 頭の中では瞬時にそんな言葉がはっきりと浮かんだが。ぐっと我慢して声には出さず心の中だけでとどめておく。

 俺頑張った。

 それにここで下手に敵を増やしても良いことはないだろうから。

 俺よくやった。

「えっと――何か御用で?」

 とりあえず猪突猛進のようにやって来た良く焦げたハリネズミに落ち着いて返事をする。

 ちなみにぶっ飛んできたハリネズミはスタミナがあるのかほとんど息切れしていない。そういえばこいつ野球部?だったか。

「めっちゃあるよ!昨日飛鳥さんがずぶ濡れだったって」

 ちょっと唾飛ばさないでもらえます?こちらランチの準備中――と言っても聞きそうにもなかったので何も言わない。

 というかそこまで気にするような人間では俺はないが。

「あー。ちょっと掃除でヘマして濡れただけだから」

 ここはとっととおかえり願いたいので必要以上のことは話さない――と、したのだが……。

「いや絶対違うでしょ」

(まあ違います)

 良く焦げたハリネズミしっかり食いついてきた。

「――大丈夫です」

「大丈夫じゃないでしょ。体調とかさ。そもそも汚れた水とかおかしいでしょ」

(わかってる。おかしいのはわかっている。自分で言っていても感じてる。汚水かぶるのはおかしいとでもね。今はランチ――あと、体調に関してはすぐにお風呂で温まったからか普通に良いので)

「いや本当に大丈夫――」

「こういうのは学園に相談した方が良いって。飛鳥さん」

 どうやら良く焦げたハリネズミは先週のことから知っているからか。はっきりと昨日の俺にあったことを誰かがやった――と、思っているらしい。まあ正解なのだが。

 なお俺は学園には何か言うつもりはない。

 多分今のところ言ったところで何も変わらないと思うし。

 そもそも下駄箱の事とかそれこそ昨日の事でも何かしらの情報はいっている――いや、ないかな。でもまあ多分今は何もないだろうと思うのでスルーしておく。

 それに俺にとっては問題ないレベルだ。

「あのー」

「なんだ?俺に何かできることあるか?」

 にしても――この良く焦げたハリネズミなんでこんなに俺のこと心配しているのだろうか――クラスにすら心配してくるような奴いないのに――今日なんてクラスで誰とも話してないし。声もかけられてないぞ?

 まあ視線はあったと思うが――。

「お昼食べたいので」

「いやいや、それどころじゃないでしょ」

(それどころです。さすがに一口も食べずにお昼終了は飛鳥さんの身体でも無理だと思う)

「大丈夫です」

「いや、飛鳥さん――記憶がないからかもだけど――」

「――また?」

 良く焦げたハリネズミの言葉に引っかかるものがあり聞き返す。

「あ、その――前みたいな。ってあまり言うべきじゃないか」

(いやいや気になるな。ってか、やっぱり飛鳥さんとこの良く焦げたハリネズミ接点があったのか?でも――どう考えても重なることのないような2人なんだよな。このハリネズミ明らかに陽キャラ。一方で飛鳥さんの今のところで言えば――陰キャラだと思うし。部屋の雰囲気からもこのハリネズミが興味持ちそうなもの。同じ趣味とか――って、そもそも何もなかったからな。まあ隠しているとか。証拠が残らないというとなんか変な感じになるかもだが。でも何かの話で接点が――とかだと証拠は残らないか。でも――やっぱり居場所が違う2人に見えるんだよな。俺から見ると)

「――」

「あー悪い。その飛鳥さんの記憶を無理に思い出させようとかそういうのじゃなくてだな。そのなんというか。無理はしないでほしいというか――あんな事しないでほしいというか」

 すると、良く焦げたハリネズミ。俺が返事をしなかった。考え事をしていたからだが。無理に何かを思い出そうとしていると思ったらしく。慌ててそんなことを言ってきたのだが――こいつ話せば話すほどボロを出すらしい。

「――あんなこと?」

「あー、いや、忘れてくれ。今はそのことは良いというか――」

 さらに気になる事が増えたが。まあこの様子だと聞いたところで話そうとはしないだろう。

 でも――何らかの接点があったのはわかる。

 そのうち落ち着いたら飛鳥さんの過去についてはこの良く焦げたハリネズミ聞くのもありかもしれない。

 今のところは詳しく知ろうとは思わないが。というか、普通の生活させてくれ。せっかく自由にできる身体を得たんだから学生生活を。やり直させてくれよ。

「とりあえずご飯――」

 キンコーンカーンコーン。キンコン……。

 ――――まさかの昼休み終わったんだが?

 そんなに長く話している感じはなかったのに。実は時間が経っていたらしい。

 昼食ってないぞ!このハリネズミどうしてくれる!呪うぞ。呪うからな。食べ物の恨みは怖いぞ。

「あ、もうチャイムが――と、とにかく飛鳥さん何かあったら相談してくれ。隣のクラスなんだし。声かけてくれたらいいから」

「……」

 良く焦げたハリネズミはそれを言うと立ち去っていく。

 おい、なんだったんだよ。マジでの呪うぞ。昼食えなかったこと。

 にしても心配して――様子見に来ただけ?の割には何か言いたいこともありそうで――って、やっぱりこれ嫌がらせか?あいつ黒幕じゃね?お昼御飯食べさせないための妨害活動だったのか?

 内容的にはお昼御飯を邪魔して空腹にしてやる作戦?とかいう感じのすごくどうでもいい内容だった気がするが――まさかほんとにじゃないよな?今俺が適当に思っただけだぞ?

 ちなみにそのあとの俺は慌ただしく。小さかった方のパンを即食べた。食べないというのは辛そうだからな。

 にしても本当にあのハリネズミ――マジでなんだったのか。

 もしかすると飛鳥さんの事が気になっている――まあその可能性が高そうだが。今は中身が俺だからな。まあ良くて友人くらいまでにしておこう。

 というか今のところ毎日昼休みに現れて俺のお昼御飯を邪魔してくるだけなので友人枠に上がることはそう簡単にはないがな。


 そのあとのことを言うと俺は普通に午後の授業をまた静かに受けた。

 特に絡んでくる奴もいないので静かに受けた。

 そして昨日ずぶ濡れになった時間。

 今日も掃除の時間は変わることなくあるため俺は昨日と同じ場所へとちゃんと向かった。

 そもそもこの場所であっているのか不明だが。でも昨日も他のクラス。学年の人が掃除をしに来る気配はなかったので、多分場所はあっているのだろう。

 突然誰かが来るような場所では昨日みたいなことはやりにくくて困るだろうからな。

 まあ掃除場所は正しい――と、思い掃除場所に行ってみると――今日も誰もいなかった。

 もしかするとそもそも俺1人ですることがあたり前なのかもしれないが――とか思いつつトイレ内を一応今日はちゃんと確認する。

「――マジで普段使わないのか?」

 女子トイレ内を確認すると昨日俺がずぶ濡れになった場所はもうすでに乾いていたが。トイレットペーパーが濡れて変な状態で固まった?みたいなことになっていたり。個室のドアが不自然になっていたり張り紙が残ったままだったりした。まあ張り紙は本当に貼ってあったのかもしれないが。

「――さすがに今日は誰も潜んでないと。なんで昨日俺気が付かなかったかな。まあ物音しなかったし。確認するとかの選択肢もなかったからな。とりあえずチャイム鳴るまで頑張るか」

 掃除をサボってやろう。めんどくさいということはない俺は気になるところの掃除をまず始めた。

 ゴミを集めたりしているとあっという間に掃除の時間は終わっていった。

 今日は無事に濡れることもなく。掃除の時間は終わった。

 後はホームルーム。そして帰るだけ。

 掃除のあと教室に戻ると今日はちゃんとホームルームに俺は参加し(連絡事項のみですぐに終わった)。無事放課後となった。


 もしかすると、昨日あんなことがあったのに1日普通に過ごしていた俺を見て、向こうが諦めた。

 ――まあないと思うが……。

 でもそんな可能性もあるのかと思いつつ。ホームルームのあとはロッカーから荷物を取り出し。今日こそパンがつぶれないように確認して、さあ帰ろうと荷物を持とうとすると――。

「あ、飛鳥さん。いたいた」

「――」

 またである。

 また来やがった。

 ストーカー認定してやろう。

 マジでしてもいいと思う。

 誰とは言わない(名前知らないから言えないし)

 とにかくあいつが。教室にまでやって来たので、ホームルーム後に残っていた生徒からの視線を集めることになってしまった。

 せっかく今日1日ほとんど無視されていて、それはそれでこちらとしては平和に過ごしていたのに、どうしてまた最後にこんな事してくれるー。

 この良く焦げたハリネズミ!

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