第17話 初登校
月曜日。
ちょっと雲多めの朝。
このあたりは天気が変わりやすいらしく。なかなか晴れの日が続くことがない。
でも太陽は顔をのぞかせている。雨の心配はなさそうだ。
そしてちょっと日差しはきつくなってきている気がする。
まだゴールデンウイーク明けのはずだがもう夏が顔を覗かせている気がする。
余談だが。薬水柚希は夏より冬が好きな人間である(そうだ。夏と言えば、飛鳥さんに水着を着せてみても良いかもしれない。いや、でも今の見た目じゃ――か。もう少し肉が付いたらビキニとか――うん?ちょっとこの絶壁で大丈夫なのか?とかとか余計なことは少しの間しか考えてない)。寒いのは我慢できるが。暑いのは無理である。
とにかく、そんな中。今日から俺は飛鳥玲奈として学園に正式に通う――彼女からすれば復帰だろう。
――そういえば飛鳥さんは何故入院となったのだったか?ぶっ倒れていた?だったか?聞いた気がするが。はっきり覚えてない。
そもそもだが。よくよく考えると、いろいろ知らないことが多すぎる気もするが。
すでに飛鳥玲奈となって数日経過しているが。毎日何とかなっている。
あと『これは――元の身体に戻る雰囲気ないわ』と、思い出したので、予定通り記憶喪失設定で自由にやらせてもらうことにしていた俺は、とりあえず今のままでいいかと考えることを止め。頭の中を切り替えた。
このあとの俺は全く知らない。わからない場所に女として、本当に訳が分からない状態でぶち込まれる。
おまけに、すでに様子見の時点でクラスメイト?だったか。名前――忘れたが。数人に絡まれかけて、明らかに雲行きが怪しかったり。
そういえば、良く焦げたハリネズミみたいなのも居た気がするが(こちらも名前忘れた。まあクラス?が違うような感じだった気もするので、今の俺にはそこまで関係はないだろう)。まあ周りに関しては特に気にしていないが。ちょっと思い出すだけで先行きが怪しく。嫌になる状況でもあるが。
でも今の俺としての気分は意外とよかった。
何故なら、今イメチェンした飛鳥さんの姿があるからだ。
飛鳥さんの姿は初めから見ると大きく変わり。少しだが俺好みに近付こうとしている。
その変化が目に見えてわかるからか。気分がよい俺だった。
そして、せっかく俺が行動(勝手に)したんだから俺好みになるまでちゃんとしないとな。などと思いつつ鏡を見ていた。
だからまるで初登校。高校デビュー?言うのかは知らないが。朝もそこそこ早く起きて、準備をちゃんとしていたりもする。
まあ男の俺が鏡とにらめっこして変じゃないと思う姿にしただけなので――周りから見るとどうかは知らないが。
でも髪もいい感じにまとまっている(さすがに美容室に行った時に様にはなっていないが。それでもマシだと思う)。
制服もちゃんと着れている。ネクタイも少し練習しておいたからか一発で結べた。
あと、下着も少ない中で『今日の気分は――』とかちょっと無駄に朝からしっかり選んだ(単に眺めたかったわけではなく。ちゃんと選んだぞ)。
結果、シンプルイズベスト。と、なった。
こんな事報告していると飛鳥さんがブチ切れるか?でも周りから見れば俺の身体――大丈夫だよな。
とまあ今鏡に映る飛鳥玲奈。
俺からしたら――初めましての時よりは、はるかに良くなったと思う。
かわいいか?とか、美人か?とか聞かれると――はっきり言ってやはりまだ全体的に肉が足りず。痩せているため微妙となってしまう。
でも目に見えて変わっているのでそのうちさらに良くなっていくだろうとか思ったりしつつ鏡で自分をチェックしていた。
「私――私――私……俺って言いそう。いや、言うだろ」
普通に学園の制服へと着替えた俺はその後鏡の前で、謎な呪文を言っていた――ではなく。
一応中身が男とバレるのは面倒な気がしたので、私という言い方を一応練習をしていた。
本当なら誰も関わって来なければ良いのだが。そんなことは多分ないだろうとすでに感じているので、出来る準備はしていた。
といってもとっさの時は『俺』と、言ってしまうだろうが。
あと、女性っぽい?仕草とかは諦めた。
気が付いた範囲で頑張るだけにした。
普通に今まで通りの俺の感じでいく。
そうせ飛鳥さんがどのような感じだったのか一切わからないので、なら記憶喪失をここでも使い。以前はわからない。ということでいく。
そもそも自分がかわいい素振りとかをしていると想像すると――飛鳥さんの姿と思っても今のところちょっと寒気がしたので外では余計なことは今はしないことにした。
「――そういや、時間割――タブレットで確認するんだったよな」
謎な呪文――と唱えていると。ふと、先週学園に行った際に、担任教師。
机の上に置いたったタブレット端末を操作して時間割を探し確認する。
「今日は――体操服とか要らないか。授業も現代文や数学。英語か。一応は大丈夫だろうが。って、まあ時期的にまだ始まったばかりだろうし。大丈夫か。最悪記憶喪失を自由に使っておけばいいだろう。っか、各授業の荷物はここにないから――あー、教室のあのロッカーの中か。結局場所わかってないから教室に行ったら聞かないとな。誰か聞いて教えてくれる奴いれば――だが」
時間割をタブレット端末で確認した後俺は再度自分の姿の確認をしてから。筆記用具などの入ったカバンを持ってまず食堂へと向かった。
平日の朝の食堂はさすがに制服姿の学生が多く居た。
そして相も変わらず俺が食堂内に入ると。入口近くに居た生徒からの視線や。「あんな奴いたか?」「あれ1組の奴らしぞ」「誰かわからなくなったな」「何があったんだ?」今日はいろいろ小声も聞こえて来たが。俺は特に気にすることなくトーストセットを購入し空いていた席に座った。
ちなみにおっちゃんは今日も不愛想だったが。美味しい朝食を作ってくれていた。
そうそう、あと、俺のまわりには誰もその後来ることはなかった。知っていたが。
朝御飯後。
食堂を後にした俺はそのまま学園へと歩いて行った。
地味に坂道がきつかったが。ゆっくりと進んでいった。
なお、早くから学園に向かったが。特に早く行って何かをすることはない。
でも、先週の下駄箱ゴミ箱化とかもあったので、時間ギリギリで掃除するのもバタバタするので、どうせすることもないなら学園へと行くことにした。
ちなみに学園に到着後。下駄箱の中は今日は何もなっていなかったが。
「――上履き洗うの忘れたな」
汚れたままの上履きの存在を忘れていた俺。
そのまま使うのでもまあ気にしなければ――だが。
今の俺経験者である。
特に悩んだり。汚れた上履きで生活することなく。靴を下駄箱に入れた後。上履きはそのまま下駄箱に放置し。近くのトイレでちょっと手を洗って――って、『水は大切』にか。まあ島だし真水は大切なのかもしれない。とトイレの洗面所でそんな張り紙を見てつぶやきつつ。職員室の方へと向かった。
何故職員室の方に向かったか。
それは先生に相談――ではなく。先週も拝借したスリッパを借りるためだ。
来客用を手に取り。そのまま職員室へ向かう。
職員室のドアには『ノックをする事』と、書かれていたのでトントン。と、ノックをすると室内から返事があったので、返事を聞いてからドアを開けた。
「――おはようございます。1年の飛鳥ですが。上履きが汚れてまして、今日だけスリッパ借りても大丈夫ですか?」
ドアを開けると入り口近くに座っていた男性教師と目があったので(少し男性教師が不思議そうな顔をしたのは置いておき)、その男性教師にスリッパを掲げながら確認した。
もしかすると許可が出ないかと思ったが。意外にもすんなりとスリッパは借りれたのでスリッパを履くと職員室を後にした。
ちなみに飛鳥さんの担任。武庫川先生の姿はなかった。
まだ来ていないのか。他のところに居るのかも知れない。
来客用のスリッパを履いて職員室から教室まで移動する。
その際何人もの生徒とすれ違ったが特に誰かに話しかけられることも。こちらから挨拶する人もいないので、そのまますたすたと階段を上がり教室へと向かった。
階へと上がると歩いている際。すれ違う生徒にコソコソ何か言われていたり。驚き?みたいな声が聞こえた気がするが。もちろん無視した。
挨拶をして来たら返事をする準備を一応していたが。今のところ飛鳥さんの友人とは出くわしていないらしい。
そして飛鳥さんのクラス。1の1と、書かれた教室へと入ると、今日は数人の生徒がすでに居たが――。
俺が教室内に入った瞬間だけ視線が。そしてここでも驚きの声が一瞬――と、思ったらすぐに全員が視線を逸らせた。
驚きの声が上がりかけていたが。それすら消えた。
――普通クラスメイトが長かった髪がバッサリ切られたら反応する生徒が居てもいい気がするが。
まるで慌てて無視したような様子。
驚いたが。無視しなければいけなく。無視したようにも見えたが。
「――」
気になったが誰かに聞くことも出来ないのでそのことに関しては関わることなく。
また、こちらも教室に入るなり『おはよう』などと言いながら入るキャラに飛鳥さんをする予定はなかったので、特に何も挨拶がないなら俺も特に声をかけることなく。そのまま自分の席へと向かった。
ちなみに普通に飛鳥さんの席だ。
おかしなところはない。
もしかしたら先週の下駄箱(実際絡まれた後のあいつらの行動は知らないし。多分帰ってなかっただろうから。何かしてくるかとも思ったが。今のところは静かだ。静かすぎるのも怖い気がするが――)みたいになっているかと思ったが。何もない。
まあ何もないのは良いことだが。
俺は今から飛鳥玲奈という人生を歩くという普通に考えれば意味の分からないことをするんだから余計なことは絡んで欲しくない。
だって、やること増えるの面倒じゃん。
できれば飛鳥玲奈という育成のみしたい。
それだけでも難易度が高いかもしれないからな。
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