第12話 バッサリ

「またのお越しをお待ちしております」

 現在、美容院でカットをしてもらった三宮さんのみやさんに見送られている俺。

 素敵な笑顔にこちらも自然と笑みがこぼれる。

「ありがとうございました。また来ます」

 お店を出たところで再度三宮さんの方を見て軽く頭を下げる。

 その際もう髪が邪魔になることはない。

 ちょっとだけ。ちらりと視線に入るだけ。

 以前なら頭を下げればバサーっとオバケになっていただろうが。

 今はそんなことはない。

 少し髪がなびくだけ。

 そして何より軽い。

 めっちゃ軽い。

 確実に軽くなった。

 身体全体も動きやすくなったような感じだった。

 もしかすると歩くだけで自然とスキップしているのではないかというくらいの軽い足取りで、俺は美容室を後にするとそのまままず駅へと向かった。

 ちなみに美容院の滞在時間は1時間ほどだったかと思う。

 はじめこそ初美容院(俺的には)により緊張していたが。希望を言い終えたあたりからは、三宮さんとも普通に会話出来ており。すごくリラックスしていた気がする。

 お店の雰囲気があたたかく心落ち着く感じだったのも大きいだろう。

 勘だったがお店選び正解である。

 あと、俺は今日とある快楽を知った。知ってしまった。

 これは俺。薬水柚希の時にも知りたかった。マジで知りたかった。

 それは美容院でのシャンプーである。

 カットの前と途中に2回シャンプーがあったのだがそれがとにかく最高だった。

 はじめはこの長い髪洗えるのか?とか思っていたのだが。そこはプロ。問題なく洗われた。そしてそれがまた気持ちいいのなんの。

 個人的には髪を切った後の短くなった時のシャンプー。あれは流しただけ?かもしれないが。でもお湯の当たり方が変わったと表現すればいいのか。とにかく気持ちよかったのだ。

 決して、髪を洗ってくれたアシスタント?の女性と急接近で良い香りがしたから。とかではない。

 俺は変態ではないので、匂いなど嗅いでいない。

 たまたま花の良い香りはしていたのでよく覚えているが――。

 とにかく。誰かに髪を洗ってもらう。

 その快楽を知ってしまった俺。

 自分で洗うではあのような気持ちよさはできないだろう。

 あれもプロの技なのだろう。

 髪の根元まで綺麗に洗われた感じ。

 洗い終わった時。少しだけスーッとした感覚があった。

 本当に気持ちよかった。

 また、髪を切ってもらっている時は三宮さんとの距離急接近によりドキドキ――とかいうことには意外とならず。

 普通に会話をしていた。

 俺もなんであんなに普通に話せたのかわからない。

 三宮さんが話し上手?聞き上手?なのか。

 とにかく終始穏やかな時間だった。

 余談だが碧鸞鳳学園の生徒は初めてだったらしく。学園の生徒としては利用1番目をゲットした。

 また支払い時。ちゃんと学園のタブレットで出来たので支払いは問題なく終わった。

 お金がない!とかにはならなかった。

 なっていたら今まだ帰れていないだろう。

 もちろんだが 。シャンプーしてもらう前にちゃんと確認はしていたのでつっかかることはないのだが。

 でも機械なのでもしあの場面でエラーでも出たら――と、思うこともあったので、実は支払いの時が再度入店時並みのドキドキだったかもしれない。

 そういえば三宮さんも学園の生徒が初めてだったからタブレット端末を初めて見たとか言っていて、カットが終わってから。支払いの時も少し雑談していた。

 俺――意外と人と話せる人間だったらしい。

 とにかく美容院。良い場所だった。

 そうそう。今の俺は長かった髪からセミロング――よりは短いかな?ボブカットのふんわりした髪型になっている。

 首の後ろが涼しい。

 というか風があたり気持ちいい。

 髪を切るまでは確かに風が吹けば全体で受けていた気がするが。今は全く風を受けた時の感じが違う。

 でも髪を切っただけでは、俺好みの女子にはまだ飛鳥さんはならない。

 なんまだ痩せこけているし。

 これは、髪を切ってもらっている時もだったが。

 髪は完璧だが――どうも表情と言うのか。印象?が痩せすぎているというか。不健康そうにどうしても印象が見えてしまうので、もっと食わないとダメだろう。

 とにかくそんな感じでまだまだ完璧には程遠い。

 でも出来ることから1つ1つクリアしていけばいいだろう。

 まず髪型で、これだけガラッと変わると週明けの学園が大変そうだ。

 すでに何かある雰囲気だが――(その確認。どの程度なのかがいまいちまだわかっていないので、自分でハードモードの人生にしてしまったかもしれないが)。でも何とかしてやろう。

 髪を切ってご機嫌になった俺がいろいろ思っている間に、美容院の最寄り駅へと到着した。

 本当に行きより早く駅に着いた気がする。

 ――ガチで俺スキップしていた?

 それは誰にも分らない。いや、見ていた人。途中ですれ違った人は居たはずなので、その人たちに聞けばわかるだろうが。

 もちろんそんな事を確認することはない。

 さすがにその行為は俺大丈夫かというか――まあ普通に恥ずかしい。


 それから数人しかいない静かな駅で、電車が来るのを待っている際。再度いろいろと考えていた俺。

 「せっかく出て来たし。ちょっと買い物していくか。さすがに何もなかったからな。飛鳥さんの物を使うが――俺が使いやすいものとかあった方がだし」

 今のところご機嫌な俺は、すぐ帰るのではなく。途中の学園。島への乗換駅になる四日市で買い物をして帰ることにした。

 特に寮には門限がなかったと思うので、島への電車がある時間内に変えれば問題ないだろう。

 あと何気にこの身体になって初めての買い物でもあり。

 ちょっと男子では入りにくいお店とかも入れるのでは?などとご機嫌な俺は考えていた(そのため自分の実家。薬水柚希の実家確認ということをやはり綺麗に忘れている俺だった。寄り道しなければまだ余裕で薬水柚希の実家にも行ける時間だったのに……)。

 ということで、髪を切ってちょっと俺好みの身体?に少しだけなったからか。ご機嫌続く俺はやって来た電車に揺られ。四日市市内へと向かったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る