妹の中に僕は住む②
私は苛められている。理由は明白だ。整った容姿、八方美人だと言われている性格。虐められるには十分すぎるほどの条件だ。そんな事は分かっている。でも、それが私なのだから仕方がない。
毎日のように上履きを隠され、机に落書きをされ、バケツ一杯の水を浴びる。そのたび私は助けてくれと叫ぶのだが、誰も聞いてくれた試しがない。皆怖いのだ。次の標的に自分がなってしまうことが。
そんな私も最初は心を強く持って耐えていた。でも、過激になっていく苛めに、助けてくれない両親を見ていたら、もうどうでもよくなってしまった。
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今、私は屋上の縁に立っている。ここから飛び降りれば間違いなく死ねる。私を苛めてくる奴らともおさらばできる。
でも、それでいいのか。逃げじゃないのか。そんなことを思う。怖くはない。でも、このまま死ぬのは何か違う気がする。そう思うけど、結局思うだけ。
私を止めてくれる人はいない。私も止められたいとは思わない。でも、奴らをどうにかすることも出来ない。手首を切った時も、運動会用の綱引きで首を括った時も、誰も止めてくれなかった。
だから、もういい。止めてくれなんて言わない。むしろ止めないで。終わらせたいの。
だって、救いのないまま生きるくらいなら飛び降りるしかないでしょう。
なのに、そんな時に限って誰かが助ける。本当に助けて欲しい時は助けてくれないくせに。自分たちの地位が危うくなったら手のひらを返すように助けて。でも、また次の日からは普通に傍観者を気取って私が苛められるのを見ているだけなんだ。
なんで、私は生まれてきたんだろう。どうして。
神様は不公平だ。
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ある日、私が自室でいつものように目覚めると体が動かせなくなっていた。いや、動かせないというか
私の意思で動かない私は、いつもよりも丁寧に顔を洗った後、苛めで切り刻まれ不揃いな髪をなるべく丁寧に結い、擦り切れた制服に着替える。一連の動作はとても丁寧で優しかった。
最初、私を苛めている奴らの誰かが呪いか何かを使って乗っ取ってきたのかと思った。ついに体まで自由にされてしまうのかと。でも、この行動を見る限り悪意は感じない。じゃあ、私を動かしているのは一体誰なのか。何がしたいのか分からない。
結局、学校に向かっている今も私の体は乗っ取られたままだ。でも、不思議だ。心が楽なのだ。
だったら、このままでいい。ありがとう、誰かも分からない乗っ取り犯さん。
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