第三章
あの後、すぐに彼女を問い詰めようとした。でも、「それよりも80歳まで生きれるようになったのですね」なんて関係のないことを話しかけるようになった。赤子の死産が減ったことを伝えたら嬉しそうにした。
そんな彼女は、きっと生きたくないと思っている。
私は、それに気づいてから彼女のことをよく調べるようになった。
主に彼女の死についてだ。
有名なのは、洞窟に入ったという話だ。
『この木枯れぬうちは死なぬ』といって洞窟に籠もったという話は有名だ。
お坊さんもこれを言ってたし、探究で調べる前からその話は知っていた。
でも調べたらいっぱい出てきた。
お偉いさんに寿命を渡したとか人魚の生肝を食べて死んだとかとかその他色々。
まぁ、インターネットの情報だからあまり信用してないけど。
しかも、私は、八百比丘尼…ヤオが生きていることを知っているから、余計に信じれない。
ヤオは死んでないんだもん。
これは、私しか知り得ない事実だけど。
それでも、少し手がかりになるかもしれない。そう思うくらいには限界を感じていた。
あれから数ヶ月たったのに、全く手がかりが掴めないんだもの。
私は、ただの高校生だし、自分ができることは限られている。
幸い…というか必然だけど、探究で八百比丘尼についてやっているから、学校での調べ物もできたけれど、正直言って限界だ。
人魚について調べたけれど、どれも伝説ばかりで役に立ちそうな情報はない。
今日の探究は、少し休もうと思ってクラスメイトの活動を聞きに行っていた。今、ヤオは留守番してるし、何も言わない。ヤオと会う前は、基本こうしてた。ヤオが来てからヤオがよく質問してきて友達と話している途中に話しかけられたらって考えてあまり話してなかった。
最近真面目にやってて話しかけづらかったんだよね〜なんて言われて、気になったけれど、疲れたって返したら頑張ってたよって言われて、少し報われた気がした。やはり友達は大事だと思う。
「なぁ…新枦さん」
雑談してたらいきなりあまり話したことない男子から話しかけられた。
「この後、時間ある?」
「あるけど…」
「後で二人で話さない?」
「えっ…いいけど…」
えぇ〜⁉️なに〜⁉️告白?嘘!初めてなんだけど。いや、でも初っ端は告白ってどうなんだろう。なんて返そう…
「うん。じゃあ放課後に」
私は、まだ言葉を処理しきれてないのに、彼はそう言って去っていった。
「うっそ…薫ちゃん圭くんから告白されるじゃん。」
「いや…そう決まったわけではないじゃん…」
そういいながら、心臓はバクバク言ってるし、顔も赤いと思う。多分口角も上がってる。
嬉しいのかな。初めてだし、なれないだけかも…でも、嬉しいな。
「お前…最近立入禁止のとこに入ったか?」
放課後、わざわざ残ってドキドキしながら聞いたらそんなことを聞かれた。
そして、私の思いも打ち砕かれた。
いや、それを聞きたくて残ったんじゃないんだけれど?
「いや…入っていないけれど?なにか?」
「お前…呪われてるぞ」
「いや、そんなわけ無いじゃん。」
呪いなんて、信じていない。だって、幽霊を見ることはあっても、幽霊とかの呪いが原因で死んだ人なんて見たことないし。
「金縛りもないし、肩が重くなることもない。元気だよ。絶対そんなわけない。」
「俺の父さん神職…あー神社関係の仕事してんだ。八幡神社で…名前くらい聞いたことあるだろ?毎年祭やってるところだ。その関係で、そういうのに詳しいし、分かんだ。」
「それでも、何も変化ないよ。」
「新枦さんが思っているのは一般的な呪い…簡単に言うと悪霊的な奴ら。」
「悪霊って…そいつらが呪いじゃないの?」
というか、私は、悪霊を見た事ない。だから、正直今の話が信じれない。
「いや、新枦さんのやつは、もっと深刻だ。悪霊の呪いは、神社とか寺とか教会に行けばいいんだけれど、新枦さんのは、神様に近くなっている。」
「え?」
なんか変な事言いだした。何だよ神に近くなってるって。私は神なんかあったことない。
…だけど、変化の心当たりはある。
「神様みたいなのが近くにいる可能性がある。だから、今日家に上がらせてくれない?」
「…いくら、同級生と言え、そんな変なので家に上がらせるわけ無いでしょ。しかも異性だよ?」
私はそんな警戒心のない純粋な女でもないし、危ないってわかって上げるアホな女でもない。
「でも…心当たりがあるんじゃないか?」
「…あんたも…見えんの?」
正直埒が明かないから…初めて幽霊が見えることを話した。
だって、ここまで粘られると流石に彼も見えるのではないかと信じちゃう。
「いや、見えない。」
はぁ⁉️今までの全部ウソってこと?ふざけるなよ。
「見えないけれど感じられる。悪霊がいると気持ちが悪いし、神がいるともっと違和感がある。」
「あのさぁ…見えてないのに言い切るとかおかしいんじゃないの?」
「…確かにそうかも知れないが…」
「いい加減にしてよ‼️適当なこと言って、結局、異性の家に上がりたいだけでしょ!」
つい怒ってしまった。ちょっと顔がいい圭くんに告白されるかもって期待を裏切られて不機嫌だったし、私以外に幽霊が見える人がいるかもしれないという期待も裏切られて、最悪だった。しかもテキトーなことも言ってくるし…気分が本当に悪かったんだ。
怒ってしまったからか気まずい雰囲気が漂った。
その空気に耐えられなくて私は走って彼から逃げてしまった
走って家に帰ってきたら、親はいなかった。いや、いつもだけど…いつも通りなら、一人だったらどれだけ気が楽だったか。親がいたら、すぐにでもさっきの出来事を愚痴っていただろう
でも、今は、絶対に相談できない、相談しても理解してくれない人しかいない。絶対に。
「薫ちゃん…どうしたのですか?」
ほら、彼女は絶対話してくる。
わかるわけない。彼女に恋愛相談とか、人間関係の相談とか絶対解決しないし、わからない。
愚痴だって…彼女は優しすぎるから、圭くんをかばうと思う。多分…。
私だって、自分が悪いことくらいわかっているし。
「薫ちゃん、無理をしないで。何かあったら話してくれてもいんですよ。」
そんな優しくするのをやめてほしい。優しくされたら話してしまうからさ、
「あのさ…け…クラスの男子がさ、私と二人で話したいって言うからさ…告白かなって思って…期待してたんだよ。でもさ、結局関係のない話で…やになっちゃって…それで」
言いたくないのにさ、言っちゃって、自分が馬鹿みたい。ヤオならなんか言ってくれるかもって、慰めてくれるかもって思ってるんだろうな。
「怒鳴って…逃げちゃった」
そういった私の声はとても小さかった。自覚できるくらいには、小さくて…ヤオに責められるのが怖くて、つい誤魔化そうとしたんだ。
でも二人きりで静かな密室では簡単に聞こえた。
「そう…ですか…」
「うん…完全に私が悪いし…私がこんなのになっても気にしなくていいよ」
怒っているのかな。そんな不安で頭がいっぱいになったときに、ヤオが優しく言った。
「でも、薫ちゃんは苦しんでいるじゃないですか。なら、私は薫ちゃんの味方でいます。」
私はびっくりした。優しい彼女が悪い方に味方するなんて思わなかった。
「薫ちゃんは自分が悪いとわかっています。それなら攻める必要はありません。」
まるで私の心を読むように言ってきた。
「わかりやすい顔してますよ。」
そうなのだろうか…そんなに顔に出てたのか…
「それに、女の恋心を弄ぶやつは最悪です。私も何度か恋をしたからわかりますが、恋というのは乙女にとって心の中心のようなものなのです。」
「いや…恋じゃないし…」
「それに、今回は、薫ちゃんが謝れば済む話じゃないですか」
確かにそうだ。そうと気づけばすぐに行動しよう。
すぐにメッセージアプリを起動する。そして謝罪内容のメッセージを圭くんに送る。
新しい学年になったときにすぐにクラスのほとんどとメッセージのやり取りをできるようにした甲斐があった。
数分待ったら返信が帰ってきた。
「どうでした?」
「大丈夫こちらこそごめんだって…そんな悪くないのにな…」
だいぶほっとした。これで嫌なこと言われたらどうしようって思っていた。
「良かったぁ…」
「良かったですね。」
ヤオもホント心底嬉しそうにした。やっぱりヤオは優しい。だから今度は私がヤオが困ったときに救おうと心にそっと誓った。
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