私の右目
鍛冶屋 優雨
第1話
痛い!途轍もない痛みが私を襲っている。
「美咲!頑張ってくれ!ほら呼吸だ!」
付き添い出産のため、夫の雄二が、さっきから何か言っているけど、痛みで頭に入らない。
良いよね。
男は気持ち良いだけで出産の痛みなんて分かんないんだから!
どうせ、周りに医師や看護師がいるから私の事を気遣っているだけなんでしょ!
SNSで他の妊婦の事を調べていたけど。
皆、痛みなんてなかった。
するりと出産できたってUPされていたのに、嘘つきだー!
なんて思ってはいたけど、
医師から、
「もうすぐです。頭が見えていますからね。」
その言葉を信じて、私が最後の力を振り絞っていきんでみると、何かが(赤ちゃんなのだろうけど)私の中からするんと出てきて、
「無事に産まれましたよ!女の子です!今から産後の処置をしますね。」
看護師のその言葉が私に聞こえてきたと同時に、赤ちゃんの産声なのである泣き声が聞こえ、私は安心したのだった。
夫が何か言っていたけど、私は疲れてしまって何も頭に入らなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私は産後、別室に移されて、夫や義父母、そしての両親に囲まれている。赤ちゃんは今、新生児室にいて、もう少ししたら、こちらに母乳を飲むために看護師がこちらに赤ちゃんを連れてきてくれるとのことだ。
今回が私がはっきりと意識ある時に赤ちゃんとの初対面となる時だ。
出産時には夫に不満だらけだったけど、産後、落ち着いてみると、甲斐甲斐しく身の周りの世話をしてくれるし、ちゃんと褒めてくれたし、良い夫だなと思う。
なんて考えていると、看護師が私の赤ちゃんを連れてきてくれた。
赤ちゃんは寝ているらしく、とても可愛らしい。
私が抱くと赤ちゃんは少しムズがったけど、大人しく抱かれてくれた。
うん。とても可愛らしい。
抱かれたのに気付いたのか赤ちゃんが、目を開くと私は愕然とした。
赤ちゃんの左目は私や夫と一緒の黒というか茶色の色なのだけど、右目は青色なのだ。
夫は呑気に、
「あれ!この子、右目だけ青いね。確か、お互い外国の血が入っていたよね。隔世遺伝ってやつかな。」
なんて言っていて、夫の両親や私の両親もうんうんと頷いていた。
確かに、私の祖母は米国人だったけど、なぜ、この子の右目だけなんだろう。
赤ちゃんの右目が私を見つめているような感じになる。
いや、見つめているのは私の罪なのかな。
そう・・・、私が夫以外の男に抱かれていた罪を・・・。
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