番犬のお散歩
第12話
それは、いつものように真っ暗な部屋の中だった。
それは、夕暮れ時の影の下だった。
それは、何でもないような日の路地裏だった。
マンションを出れば、すぐそこに見知った顔が三人。
日陰に佇んでいた。
無駄に顔の良い三人は、気だるそうに立っているだけでも妙に絵になる。
由良は、日向との境界線に目を向けて眩しそうに目を細めながら三人に近づいた。
通りすがりの人たちの視線は必ずと言っていいほどちらちらと彼らに向けられている。
今までは気だるそうに、人を寄せ付けない雰囲気で立っていたというのに、由良を見つめた途端に破顔した。
見えない尻尾をぶんぶんと揺らすのだ。
揃いも揃って。
「お待たせ」
今日の由良はオフホワイトのワンピースを着ている。
これはこの間の誕生日に絵里子がくれたものだ。
ふわりと揺れるワンピスは涼し気で、大人びた由良を普段よりどこか少女に見せている。
「おう、由良」
「全然待ってません。今日も由良は美しいですね」
「ごしゅじ……っ!おは……っ」
駆け寄ってくる彼らの頭にはピンと立った耳。
腰のあたりにはぶんぶんと揺られる尻尾。
(大型犬……)
もちろん幻覚でしかないそれに、由良の口元が緩む。
由良の前に彼らが揃うのは久しぶりだ。
たまに顔を合わせる時間はあったが、こんな風に出かけたり由良を独占できる機会はそうそうない。
日向に出れば、一番背の高い諌那が太陽から遮るように由良の後ろに立ち、瑠璃都は由良の横で日傘を差し出した。
睦月は少し離れて歩くが、周りにいる人間に牽制を忘れない。
近寄るな。見るな。
その迫力に、目があったものは急いで視線を逸らしていく。
「由良、はぐれると大変ですし、これを持っていてください」
「………」
人が多くなってきた辺りで差し出された瑠璃都の手に、由良は無言で視線を向けた。
(紐?)
瑠璃都の手の上には紐。
少し太めなそれは先のほうが輪っかになっていて、反対側は瑠璃都のほうに伸びている。
由良は視線を紐をたどって瑠璃都のほうに向けていった。
「これはちょっと……」
由良が言うが早いか、瑠璃都の手を諌那と睦月が払い落とした。
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