追われゆく夏

忍び寄る

第1話

嵐神を潰せ、とどこからともなく声があがっていた。


害をなくものは片っ端から返り討ちにしてきた嵐神は、その力と位置を確立させてきていた。


それがまた今、崩れかけている。



「なあ、こないだ嵐神潰そうとしたやつらが女に返り討ちにされたんだと」


「はあ?そんな弱ぇやつがいたのかよ」


「嵐神の姫って強いとかって噂だったろ?」


「それが、姫じゃないらしい。嵐神もわからねぇって話だ」


「なんだよ、それ。それじゃまるであれみてぇだな」


「ああ。やっぱり思うよな」



霞。そして揺らめく姫。


今の霞ともまた違う動き。


真実に行き着くものはいないが、想像は誰にも止めることなどできるわけもない。



「でもな、黒髪でも、臙脂色の髪でもなかったらしい」


「嵐神なんかを守るのは誰なんだろーな?」







***





カシャリというシャッター音。


光るフラッシュ。


煌びやかな世界がそこには広がっていた。



「いいよいいよー、シュウ君。もうちょっと目線ずらせるかなー」


何度か視線を変え、ポーズを変え、1人の青年が様々な表情を見せる。


「はーい、オッケーでーす!じゃあ次女役を頼むよー」


「任せてください」


「紫紺君もスタンバイよろしくねぇー」


「はい」




数分後には見目の美しい整い過ぎた美丈夫の青年と、艶やかな女の色気を漂わせる美女が並んでいた。


「さすがだねぇ、シュウ君女の人にしか見えないよ」


楽しそうに笑うカメラマンに、青年だった美女はゆるりと口角をあげてみせる。


「ふふっ。相変わらず褒めるのが上手いのね。早く撮っちゃいましょ?」


しなやかに紫紺の腕に自分の腕を絡ませる。



その後の撮影もほとんどミスなく終了した。


「お疲れ様でしたー」




共同の控え室の扉を潜れば、シュウは美女の姿をした青年に戻る。


「お前の変わり身は相変わらずすげぇな」


「あったりまえ。天才子役と呼ばれてたのは過去じゃないんだから」


はっと、笑ってみせながら身にまとっていたものを脱ぎ捨てる。



「ま、期待してるさ。こっちもあっちでも、な」

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