第1話

噂、というのはいつだって広まるのが早い。

虚偽だけでなく、真実だけでもない。


居場所の無い者たちが寄り添いあって作られたその居場所。

名前のない暴走族が存在した。

正確には暴走族、なんてものではなかったが。


 始めはただの集まりだった。

いつしか規模が大きくなり、暴走族という存在に近づいた。それだけのこと。

自分たちで名を名乗ることもなく、定期的に集まったり暴走を繰り返したりするわけでもなく、名声を求めて他の族と争うでも無い。


 彼らに団結などというものはなく、ただそれぞれが個々に好き放題していただけ。

一応、形式的に総長や幹部はいたものの、規則等は相当緩いものだった。


ただ、彼らは最強だった。

とにかく、強い、と彼らを知る人間たちは語る。

けた外れの強さを持った彼らは自然と名を広めた。


しかし、その情報はあまりに曖昧。

羨望と畏怖の目で見られていた彼ら。

いつしか誰かが″霞″と呼び始め、名前の無い彼らは霞という存在になった。


霞について数ある噂の一つ。

最強の猛獣揃いの霞に姫がいるという。統率力なんて全くなく、誰も操ることなど出来ない正に飼い慣らすことのできない猛獣。

そんな彼らを唯一手懐けた姫。


その頃の総長は鮮血の狼と呼ばれる男だった。

歴代の霞の中でも最強を誇る総長。

真っ赤な髪に返り血が通り名の由来らしい。


その総長さえもを操る姫。


その噂が広まるのも一瞬だった。

臙脂色の髪の姫。はっきりしているのはそれだけ。


彼女が霞から姿を消したという噂が回り始めたのはつい最近。

詳細と真意は不明のまま。

真実だけ言うならば、姫によってまとまりを見せていた霞がまた荒れている。

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