【2,000PV記念】従者の本音 ※微ネタバレあり

 2025年1月28日、2,000PV、達成しました!


 ありがとうございます!


 2,000PV達成を記念して、今回は従者五人の本音に迫ります!

 ……五人は、互いにどう思っているのか。

 あまり馴れ合うことのない彼らのぶっちゃけショートストーリー!

 ぜひとも、お楽しみくださいませ!


※この物語は、七章で登場するキャラクターが出るという、若干のネタバレを含みます。物語の展開に触れてはいませんから、どのタイミングで読んでいただいても差し支えありません。が、新キャラの情報が明かされるため、それが苦手な方はご注意ください。


─────────────────────


 __天界にて


 反射的に、サッと戦闘態勢を取る。先程まで普通に生活していたところを、突然、天界へと転送されたのだから、襲撃を疑うのは当たり前である。が、互いに相手の姿を見ると、五人は警戒を緩める。


「……何が起きている?」


辺りを見渡しながら霧玄は言う。


「天界……蓬莱か?」

「流石。勘が鋭いな」


悠麒がその名を口にすれば、その、蓬莱が姿を現す。と、途端、五人は蓬莱の前に跪いた。


「……御用件は」


誰もが口を閉ざす中、波青が代表して問う。


「そうだな。お前ら次第でサッと終わる話だ。まぁ、一旦、中に入れ」


蓬莱は指をパチンと鳴らすと、自分の屋敷の中へと五人を入れる。

 強制的に移動させられた五人は驚いたような表情を見せる。特に、大鳳と古白はフリーズをしたまま動かなくなった。


「お前たちを呼んだのは、他でもない、従者としての意識を高めて欲しかったからだ」


蓬莱の一言に「はぁ」と息を漏らす悠麒。興味がないからか、もうすでに飽きた様子。表情は「帰りたい」と書いてあるようなものである。


「神守の従者として、結束力は必須。しかし、お前らには全く結束力がない。そこで、だな。人間は語り合うことで仲を深めると聞く。この私が、協調性の欠片もない手のかかるお前らのために、腹を割って話す機会をくれてやろうと、そう思ったのだ」


「感謝しろ」と蓬莱は言う。が、しかし五人は嫌そうな顔をしていた。


「……帰ります」


悠麒は一番に帰ろうとする。が、どれだけ術を発動させようとしても発動しない。現世への扉を開くこともできない。


「無駄だ。お前如きが天界の最高神である私に勝てるとでも? それに、残念ながら、ここは私のテリトリーだ。悪いが目的を果たすまでは帰さないぞ」


不機嫌を隠すことなく悠麒は蓬莱の前で大きく舌打ちをする。一応、上司の前なのだが……。流石は悠麒である。


「安心しろ。放っておくとすぐに喧嘩をする、前代未聞の問題児たちのために、この私が司会進行を引き受けてやる。ありがたく思え」


それを聞いて、五人は同じことを思った。


(やりづらいな……)


しかし、そんなこともお構いなしに蓬莱は話を進めていく。


「さて、早速だが本題に入ろうか。私も忙しいからな。パパッと交流し、パパッと仲を深め、パパッと結束力を高めて、パパッと帰れ」


実に無茶苦茶な話である。おわかりいただけただろうか。これが、『神』である。


「さてと。まず、お互いの第一印象は? 麒麟、青龍、朱雀、白虎、玄武の順に、テンポ良く、パパッと答えろ」


強引に発言を促され、嫌そうな顔をしながらも五人は従う。いや、従う他にない。


「……全員、興味ありませんでしたよ。あぁ、次はこいつか。その程度です」

「そう、ですね……私は悠麒殿のことを始めは恐れていました。霊力が桁違いすぎて。朱雀はたくましい子だなと。虎雄は先代と比べると弱そうだなと。霧玄殿は気難しい人だろうなと。そう思っていましたね。今は全然違いますけど」

「えっと、悠麒さんは怖かったです。波青さんはかっこいい人だなって。古白はなんとなく私と似ている気がしました。霧玄さんは頼りになるお父さんみたいな雰囲気でしたね」

「う〜ん……まぁ、悠麒は気味が悪いと思っていましたね。どちらかと言うと、オレは波青の方が怖かったです。大鳳は男だと思っていましたから、対抗意識ありましたね。霧玄はすぐ死にそうな奴だと思っていました、当時は」

「悠麒は気持ち悪い奴だと思っていましたよ。波青は見込みのある奴が来たなと。大鳳は本当に戦えるのかと心配でした。古白は気の毒な子だと思っていました」


一通り五人が答えると、蓬莱はニヤニヤ笑う。


「見事に、麒麟の第一印象が悪くて面白いな。しかし、玄武の印象が人によって全然違うのは何故なのだろうな?」


少し考え込む蓬莱に、波青は言う。


「人間は神とは違い、時の流れと共に、変わりゆく生き物です。主と同じように、彼にも、いろいろあったんですよ」

「そういうものなのか?」

「そういうものです」


優司のことを引き合いに出せば、どうやら納得したようで、ふと霧玄の頭を撫でる。


「お前も苦労したんだな」


四十二歳が子ども扱いされる世界。ここが天界である。霧玄は恥ずかしそうに撫でられた頭を手で押さえると


「……次にいきましょう。ほら、パパッと」


なるべく蓬莱から顔を逸らし、進行を促した。これを、微笑ましそうに四人に見守られていたことは、本人は知る由もない。


「では、互いの好きなところを先程と同じ順で言っていけ」


「げ」と、どこからか声がちらほら上がった。心底、嫌そうである。が、やるしかないのだ。でなければ帰れない。


「……あー……そう、だなぁ……えぇっとぉ、青龍が真面目で? 朱雀が努力家で? 白虎が柔軟な思考の持ち主で? 玄武がセンスある、とか……?」

「……この後に悠麒殿を褒めるのは癪ですが、強さはピカイチですよね。技の美しさだけは、尊敬しています。朱雀は料理が上手いですよね。流石は朱音さんの娘です。虎雄は発想力が非常に素晴らしい。芸術家に向いていますよ。霧玄殿は一番信頼できる相手です。人として素晴らしいと思いますよ。人としては」

「悠麒さんの強さは、私も尊敬しています。波青さんは本当に真面目で努力家ですよね。あと、字が綺麗です。古白は、運動神経は凄いと思っています。霧玄さんは優しいところが好きです」

「悠麒は強さ、波青は好奇心、大鳳は器用さ、霧玄は優しさですかね」

「悠麒は、意外と教えるのが上手いんですよ。波青はしっかりしているので、頼りになります。大鳳は本当に努力家で負けず嫌いな子ですね。古白は明るくて面白いムードメーカーです」


霧玄の言葉に、蓬莱は目を丸くする。


「麒麟の取り柄は強さだけかと思っていたが、意外な強みもあるんだな」

「酷くないですか?」

「いえ、強さしか取り柄はありませんよ。教え方が上手いなんて、優しい優しい霧玄殿によるただの慈悲です」

「殺すぞ、青龍」


蓬莱と波青からのひどい言われように、悠麒は静かに殺気立つ。


「日頃の行いだよなぁ……」

「日頃の行いね……」


古白と大鳳までそんなことを言うものだから、霧玄は苦笑する他にない。これには流石に同情してしまう。


「次で最後だ。本題。互いに思っていることを自由に話せ。本音をぶつけろ」


途端、霧玄を除く四人の目つきが変わる。


「弱い癖に主の隣に立とうとするの、本当に、目障りなんだよね。僕のポジションを奪おうだなんて百年早いんだよ。雑魚が」

「へぇ? なるほど? 言うじゃないですか。あなたの後始末、一体、誰がやってあげていると思っているのです? 暴れるだけ暴れて……主を困らせている自覚はないのですか? これだから、主を任せられないと言っているんです。ガキが」

「ガキと言えば、古白もガキよねぇ? キャンキャン騒いで、本当にうるさい。ちょっと年上だからって、私を下に見てくるのもウザいわ」

「はぁ? テメェには言われたくねぇんだよ。スカしやがって。お前は人を煽れる立場か? 身の程を弁えろ、カス」


完全に悪口大会と化している。ニコニコと笑みを浮かべながらこれを言っているのだから実に異様な光景である。恐ろしい。


「あのなぁ、本来の目的は親睦を深めるということであって、こんな……」

「黙れメンタル貧弱野郎」

「打たれ弱いですよね。『盾』を使うクセに」

「判断が遅いのよね。なかなか『取捨選択』ができないというか」

「なよなよしやがってよォ」

「えぇ……」


口喧嘩を止めようとしただけでこの言われようである。あまりにも酷い集中砲火。これに対し


「俺もお前らのそういうところは嫌いだな」


止めに入ったかと思えば、霧玄まで乗っかってしまうものだから、収拾がつかない。

 終いには、五人は本格的な殺し合いを始めてしまった。

 蓬莱はそんな五人に頭を抱え、しばらくは「どうしたものか」と考えていたが、ドタバタと暴れ狂う五人に嫌気がさし、大声で一言


「……うん、帰れッ!!」


強制的に、五人を現世へと戻した。



 __現世・神守家訓練場にて


 こうして、現世へと無事に戻ってきた五人。だが、一度始まってしまった喧嘩は、なかなか終わらない。現世に戻された後もなお、それは続いていた。

 と、ここに何も知らない優司が学校から帰宅する。


「ただいま戻りました」


スッ、と。あたかも何事もなかったかのように武器をしまい、五人は優司を迎えるべく、玄関に急ぐ。


「おかえりなさい、主」

「おかえりなさい、優司くん。すみません、少々お邪魔していました」

「驚かせてごめんねっ! すぐ帰るから!」

「あぁ、用は済んだしな」

「悪かったな、突然。それじゃあ、お疲れ」


ゾロゾロと出てきては、サッサと帰っていく、波青・大鳳・古白・霧玄に、優司は疑問符を頭に浮かべる。


「……何かあったんです?」


事情を知っているであろう悠麒に問うが、彼はただニコニコ笑って「なんでもないよ」と言うばかりであった。



 __天界にて


 蓬莱でさえ投げ出してしまったあの騒動が、一瞬にして終わる。蓬莱は五人と優司の様子を覗くと、微かに笑い、ふと小さく呟いた。


「恐るべし、神守優司……五人の上司である、この私を超えてくるとは……怖っ……」


優司がいる限り、案外、五人は大丈夫なのかもしれない。そうも思った。


─────────────────────


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 もしも、次回の祝福が実現した場合、やって欲しいことがありましたら、教えていただけると嬉しいです。

 また、質問等ありましたら、コメントにて。喜んでお答えします。お気軽にどうぞ。


 それではまた、いつか必ず、祝福の際にお会いしましょう。


 今後とも、『慰霊の神楽』と『葉月陸公』をよろしくお願いします。




【慰霊の神楽】

https://kakuyomu.jp/works/16817330668094316837

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る