祝福の書斎

葉月 陸公

慰霊の神楽

公開記念

【1周年記念】創作秘話 ※微ネタバレあり

 まず初めに。


 慰霊の神楽一周年、ありがとうございます!


 投稿開始当初は、あまりの閲覧数の少なさに心が折れそうになりながらも、コツコツと書き続けて遂に完結。投稿から一年が経過し、閲覧数は拙作で初めてとなる1,000PV超えを達成。続けて、一周年目前に2,000PVにも到達。少しずつ、現在もなお数字は伸び続けています。


 「一周年なんて、どの作品にも来るだろ」と思う方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、この『慰霊の神楽』においては長編だったため、『挫折』の可能性もありました。

 __読まれないのなら、消してしまおう。

 実は、完結間近にそんなことも考えていたのです。

 私を思い止まらせたのは、他でもない、この作品を読んでくださった皆様です。1PVがつく、たったそれだけで「まだ終わらせられない」と筆を取ることができました。

 読んでくださった皆々様、本当にありがとうございました。


 そして何より、完結を支えてくださったのは全150話に渡る長編を読破してくださったあなたです。

 あなたの応援が、確かに、作品と私を支えていました。

 ここまで一緒に歩んで来てくださったこと、心よりお礼申し上げます。


 「これから読むつもり!」という皆様にも、この先、『慰霊の神楽』と『葉月陸公』は支えられていくことでしょう。

 遅い、なんてことはありません。読んでくださるだけで私は幸せです。

 どうぞ、我々をよろしくお願いします。


 『慰霊の神楽』を読んでくださった、或いはこれから読んでくださる方々に私は伝えたい。


 「この物語を知ってくれて、ありがとう」

 「優司を見守ってくれて、ありがとう」


 彼が孤独にならなかったのは、間違いなく、あなたのお陰です。この先も、彼は仲間たちと、そして皆様と共に、生きていくことでしょう。

 本当に、本当に、ありがとうございます。


─────────────────────


 さて、ここからが本題です。


 先程もチラッと言いましたが、優司が孤独になっていた世界線が二つあります。


・そもそもこの物語が読まれなかった世界線

・優司が人柱にならざるを得なくなった世界線


一つ目は単純です。私がこの物語(即ち世界)をなかったことにしていれば、彼は救われる以前に存在が消されていました。途中まで、苦しみながらも歩いてきた彼の軌跡・人生が、誰にも知られることなく、消えていたのです。ただただ無駄に苦しめられて、パッと消されていたかもしれない。そう振り返ると、ゾッとします。


今回の裏話は、二つ目、『人柱』になっていた世界線のことです。そちらを語りたいなと。


要するに、初期に考えていた没案の話ですね。



 以前、どこかでお話ししたことがあるのですが、拙作は、基本的に物語が生まれます。『慰霊の神楽』が生まれたきっかけのセリフがこちらです。


「人間の心を壊すのはいつだって人間だった。お前らが〇〇を殺したんだよ」


見覚えありませんか?


 第42話 神守優司の失踪①【side:悠麒】

https://kakuyomu.jp/works/16817330668094316837/episodes/16818093075455147993


こちらにて、登場したセリフです。悠麒のセリフですね。場面に合わせて、セリフの言い回しは少し変わっていますが、彼のセリフから、この物語は生まれました。


お察しの通り、まず初めに生まれた人物は、『悠麒麟児』でした。そして次に生まれた子がこちらです。


「もし、この人生で、何か“幸せだったこと”を挙げるとしたら。それは、きっと、“あなたと出会えたこと”でしょうね」


ちなみにこちらは作中には出てきていません。完全に没です。このセリフだけで誰かわかる方、いらっしゃいますかね? ……実は彼こそが『神守優司』でした。


 二人のキャラクターが生まれたことで、次に世界ができました。こちらは本編と何も変わりません。現代日本にて展開される、『霊力』を持つ人間が、それぞれの能力で邪神や悪霊へと立ち向かう物語。


 問題はこの物語の主人公。

 当初、主人公は幸希だったんです。


 もう、おわかりですね? 始めはモブ扱いであった優司の友人の一人・幸希が、後半で異様に活躍したのはこの初期案が影響します。

 元々は、『ドタバタホラーファンタジー』になる予定でした。神隠しに遭い、神界と関わりを持ってしまった彼が神々に翻弄されながらも迫り来る終末の日に立ち向かう。そんな物語。

 「え、優司は?」と言うと、敵でした。ラスボスです。


 ラスボスの優司には、ちゃんと、特殊能力がありました。

 その能力というのが、『吸収』です。なんか、ラスボスっぽいですよね。

 では、ラスボス優司がどんな奴だったのか、という話なのですが……こちらはあまり、設定変わりません。

 本編と違う部分がこちらになります。


 霊力が強く、慈悲深いその性格から、人々の不幸をその身に吸収することにより、この世の絶望を軽減。邪神化・悪霊化を抑えていた。

 しかし、その身に溜めた絶望が、家族の死、いじめ、養父からの虐待、裏切りにより爆発。

 心が壊れたところを神々に漬け込まれ、無理矢理に神化をさせられ、優司は暴走。

 結果、史上最凶の『絶望の化身』として世界を破壊する存在になる。


 ラストで異形になっていました。救うこともできなかったため、優司消滅エンド。

 『神守優司』の存在そのものが消え去って、優司は今も人々のためにこの世の不幸を吸収し続けているというのに、誰にも知られることはなく、生きることも死ぬこともできず、『人柱』として苦しみ続ける。

 幸希は自分の日常に「何か足りない……?」といった違和感を抱えながらも、優司のいない平和な日々を過ごす。

 なかなか、優司に感情移入するとキツくなるようなバッドエンドでした。


 ちなみに、この世界線だと優司の従者も朱雀以外は全員死にます。完全に優司が敵になったとしても?と思うでしょうが、本編より優司への愛と忠誠心が初期設定では強かったのです。例え優司が間違っていても、ついていってしまう。そんな人たちでした。

 書くと長くなるので散り際のセリフだけ公開しますね。いえ、むしろ供養として公開させてください。お願いします。


波青「仕方がないじゃないですか。たとえ彼が間違っていたとしても、最後まで側にいたい。

側にいて、あの子にとっての支えになりたい。そう思ってしまったのですから」


古白「あの人だけがオレをちゃんと見てくれていた。あの人だけがオレを認めてくれた。あの人だけだったんだ。あの人が、オレの全てで、あの人が……クソッ、みんなみんな、またオレから奪いやがってぇっ! 許さねぇ、許さねぇ許さねぇ許さねぇ! 呪ってやる、呪い殺してや……」


霧玄「……あぁ、また間違えたのか。俺は」


悠麒「優司のいない世界で、どうやって生きろと言うんだい? ……あの子を一人ぼっちにはさせられないだろう? 大丈夫。僕が、ずっと君のそばにいてあげるからね。君が、そうしてくれたように……ねぇ、優司……」


この時は、人外である悠麒を除く全員が高校生でした。ですから、歯止め役が存在しません。故に、誰も優司を止めることなく、ズルズルと共倒れになります。

気に入ってはいましたが、「こんな鬱作品誰が読むんだよ」レベルのバッドエンドを回避するために没にしました。


 朱雀は幸希の彼女、つまりメインヒロインになるため、死亡ルートは回避していました。

 朱雀のキャラクター設定はあのままです。



 さて、没案ばかりのこの物語でしたが、どのようにしてああなったのか。今度は、そちらをお話ししましょう。


 簡単に言えば、優司を弱くしたうえで、彼を絶望させすぎなければ、物語はハッピーエンドに繋がるのです。


 優司を強くすると、強くした分だけ力を人のために使い、潰れます。そのため、優司を最弱にしました。

 しかし、彼を最弱にするだけだと、優司は早々に野垂れ死にます。優司を支える『大人』が必要でした。


 では、誰を大人にしようか。そう考えた時、真っ先に先輩(高校三年生)である二人に目がいきました。波青と霧玄です。

 キャラクターをあまり変えすぎず、年齢だけを変えてみると、霧玄は、性格的に将来結婚するだろうと。霧玄が優司を養子にしてくれれば、ある程度は救われるだろうと。

 養父となる霧玄の年齢を考慮すると、波青も大人にしようと。彼を大人にすると、間違いに気がついた時点で彼は間違いを正すだろうと。愛と忠誠の形も変わるだろうと。対応も大人になるだろうと。

 こうして、ようやく優司の生存ルートが開拓されました。


 次に、古白です。初期案だと優司の後輩・高校一年生でした。彼が優司より年下だと「優司がオレの全て」のルートに突入します。それでは、敵の勢力が増えてしまい、相打ちになる懸念がある。つまり、彼は、優司よりも先に生まれている必要がありました。そこで、お兄ちゃんの友人に設定を変更。優司ではなく、古白の方をお兄ちゃんポジションにすることで、何故か、一番の常識人になりました。不思議ですね。


 よくよく思い返すと、この時から既に優司は無意識に人を狂わせていたわけですね。なんて恐ろしい子。


 キャラクターはこれで確定しました。


 こうすると、完全に『優司』が主役ですね。

 えぇ、主役を彼に変更しました。

 ……じゃないと、また、優司が死ぬので。


 あとは成り行きです。


 『慰霊の神楽』という題名も、物語ができてからつけられました。 ※葉月はストック派

 当初は悪女として描かれていた神楽舞衣が、メインヒロインとなり、優司を救う側に。その舞衣の能力が『慰霊』であり、この『慰霊』の『神楽』が優司を救う鍵となる。

 だから、『慰霊の神楽』


 実は『慰霊の神楽』でも、優司が完全に神化してしまえば、彼は『絶望の神』となるため、希望そのものである『慰霊の神楽』の力で消滅していました。そのエンドも考えていましたが「いやいや、わざわざハッピーエンドにしようと設定を大幅に変えたのに、またバッドエンドにしてどうするよ」と思い止まり、結果、あの展開に。

 あと、シンプルに悠麒麟児優司ハピエン厨がバッドエンドを許してくれませんでした……あの人怖い……。



 世界とキャラクターさえできてしまえば後はキャラクターたちが勝手に物語を進めてくれるため、私はあまり『創作方法・裏話』について語ることはできませんが、「実は、こんな初期設定があったんですよ」という方面での裏話を語ってみました。


 お楽しみいただけたでしょうか?


 初期案の面影はほとんどありません。大幅な変更に変更を重ねた結果があの物語でした。

 「筆を折っていたかも」という理由も、少し見えちゃいましたかね? ……まぁ、つまりはそういうことです。気づいた方、内緒ですよ?

 作者的には“アリ”だったんですよ。誰も知らない物語って、ちょっといいなって思って。


 なんなら今思うと、バッドエンドの世界線も捨て難い気もしますが……まぁまぁ……うん。


 他にも、いろいろと、本編で語られなかった設定はあります。

 もしかしたら、どこかで語られるかも……?

 その際は、どうぞよろしくお願いします。


 また、逆に「ここ、どうなっていたのか知りたい!」というものがあれば教えてください。喜んで、お答えいたします。


─────────────────────


 重ねてにはなりますが、『慰霊の神楽』は、皆様の応援のおかげで成り立った物語です。


 一周年、本当にありがとうございます。


 そして叶うなら、完結はしましたが、どうぞこれからも、『慰霊の神楽』をよろしくお願いします。


 彼らの生きた証を、戦いの記憶を、少しでも覚えていていただけたら幸いです。




【慰霊の神楽】

https://kakuyomu.jp/works/16817330668094316837

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