8 忘却に送る詩

胸にぽっかり空いた穴を

呆然として見つめる僕ら



記憶を失うことは哀れか

不可逆の時系列は苦痛か


届かない光に手を伸ばし

記憶を手繰ろうとする夜


落ちていく星を見つけて

君に寄り添いたくなった


恐れることは何一つない



思い出は優しく埋葬され

僕らは新しい今日を知る


忘却は僕らの隣にあって

時間の形を教えてくれる


詩のひとひらを川に注ぎ

穏やかな景色の裏側へと

喪失の恐怖を包み隠そう




最後に僕の願い事を一つ


言葉が脳から掻き消えて

僕のことを忘れても残る

温かさを間違うことなく

抱きしめて歩いてほしい

君が生きる今この瞬間を

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